愛知の味といえば「味噌」である。
味噌の本場は「八丁味噌」の岡崎だが、三河だけでなく名古屋を含めた愛知県では「みそ味」がお馴染みだ。
毎日家庭で作られる味噌汁は、その家代々の味とよく言われるが、実家でも勿論、母の作る年季の入った具沢山の味噌汁は、食卓には欠かせなかった。
味噌の本場は「八丁味噌」の岡崎だが、三河だけでなく名古屋を含めた愛知県では「みそ味」がお馴染みだ。
毎日家庭で作られる味噌汁は、その家代々の味とよく言われるが、実家でも勿論、母の作る年季の入った具沢山の味噌汁は、食卓には欠かせなかった。
中学生になるまでは毎年の夏休みと、時には春休みなどにも泊りがけの旅行に行くのが恒例だったが、旅先の旅館の大浴場でひと風呂済ませた後の夕食の膳や、見知らぬ土地特有の爽やかな朝に迎える朝食に必ず付いてくる味噌椀の蓋を開けて、白味噌や合わせ味噌を目にした時(大抵の朝食は、これらが相場だったが)には、家族皆大いにガッカリしたものである。
我が家では、トンカツや焼肉、或いはうどんといった献立にまで味噌の味付けをする事はなかったが、社会人となって名古屋へ引っ越し一人暮らしを始め否応なしに外食生活となると、トンカツなどは当たり前のように「みそカツ」となるし、焼肉屋へ行っても大抵は何種類かのタレの中に、当然のように「味噌ダレ」も付いてくる。
そして極めつけは、なんと言っても「味噌煮込みうどん」だ。
さすがに実家にいる時は、店屋物を含めても「みそ味のうどん」というものは、食べた記憶がなかった。
フリーでマスコミ関係の仕事をしていた頃、名古屋のカメラマンに引き立てられて何度も奢ってもらっていたのが、名古屋では有名な『山本屋本店』の「味噌煮込みうどん」だった。
未知の味に、やや尻込みしつつチャレンジしたその時から、たちまちにしてこの独特の味の虜になってしまい、自腹でこの店へ通いつめる事となっていく。
この頃の数年間は、毎年冬になると週に2〜3回くらいのペースで名古屋駅地下街『ユニモール』に直結した堀内ビル店や、新幹線地下街『エスカ』店、或いは『サカエチカ』と直結した中日ビル(地下)店などへ足繁く通った。
ここのうどんは高く、かしわ(鶏肉)が少しだけ使われた「味噌煮込み」が980円(希望により、卵は無料)で、ご飯のついた定食とか一半(大盛り)、或いは色々な具が入ったのは1280円くらいだったため、当時の懐の淋しい若者風情には手が出し辛く、専ら980円の「(ただの)味噌煮込み」ばかりを食べていた。
名物の「味噌煮込みうどん」もさることながら、同じくらいに楽しみだったのは熱燗と一緒に食する漬物の盛り合わせ鉢だ。
うどんを煮込むまでに時間が掛かるので、この漬け盛りで熱燗をグビグビとやりながら、のんびりと待つ。
ダイコン、ハクサイ、タクアン、ナスなどが大きめの鉢に盛ってあり、常連の誼で幸せそうな顔で舌鼓を打っていると、大の漬物好きであることを先刻承知の店(某ビル店)のオバサンが、もう一鉢を出してくる嬉しいサービスをしてくれた(通常は2鉢目からは、300円くらいが正規料金だった)
そうして暫く待っていると、2本目のお銚子とともに土鍋でグツグツと煮え返っている名物「味噌煮込みうどん」が登場し、2度目のお楽しみとなるわけである。
ワタクシは「猫舌選手権」などというものがあれば、確実にメダルを争えるくらいの大の猫舌ではあるが、蓋を開けたばかりの濛々と煙が立ち込めているようなこの店のうどんは、普通の人でもとても直接には食べられず、蓋を皿代わりにしてうどんを入れて食する。
さらに、この店のうどんはかなり固めに煮てあるために、普通のうどんのようにツルツルと飲み込んでいくような食べ方は難しく、コシを噛み砕きながら少しずつ食べるのが消化にも良い。
そうして、うどんを味わいながら2本目のお銚子をチビリチビリとやっているうちに、適度に冷めてきたネギやかしわのだしが濃厚に効いた、味噌と熱燗とを交互に飲み比べるのである。
ああ、これぞ無情の幸福!
総て食べ終わった頃には、すっかり汗ビッショリになっていて、店のオバサンが汗を拭くためのオシボリを持ってきてくれる。
こうして真冬の寒空に出る頃には、すっかり身も心も温まっているという寸法なのである。
当時、仕事の取引があった東京の雑誌社の編集長が年2~3回くらい来名していたので、この店へ連れて行き名物「味噌煮込み」を食べさせると、蓋を開けた途端に
「なんか真っ黒で辛そうだねー」
と、悲鳴をあげかけた。
(こりゃ失敗したか・・・?
やっぱ、ヨソもんの口には合わんかな?)
と思ったところ、ひと口食べるや
「うん、こりゃ旨い!
見た目は思いっきり不味そうだったけど、そんなに辛くもないし旨いねー」
とゾッコン惚れこんでくれたおかげで、このプロダクションへ贈る毎年のお歳暮は、この店の「味噌煮込みうどん詰め合わせ」が定番となった。
不思議な事に、このプロダクションではこれが殊のほか人気があるらしく
「毎年シーズンになると
『もうすぐ名古屋から味噌煮込みが届くからガンバローぜ!』
とか言ってね。
校了前で事務所泊り込みの時に、みんな夜食で自分で作って喰ってるよ」
といった話を何度か訊かされ、なんとなく嬉しくなったものです。
もっとも、いつか新幹線地下街で食べていた時
は、東京辺りからの出張族とオボシキスーツ団が
「オ~イ、オバちゃん!
なにこれ?
まだ生煮えだよ」
「いえ、当店のはそういうお味なのです」
といった遣り取りも訊かれた通り
「あのコシの強すぎる
(固すぎる)うどんが、どうにも気に喰わん」
などと、ブツクサいっていたド素人もいたが ( ´艸`)ムププ
※名古屋時代の画像がないため、東京支店の画像を使用
※名古屋時代の画像がないため、東京支店の画像を使用
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