2003/11/21

卒業(卒業シリーズpart1)

 卒業シーズンを迎え、いよいよ生徒会長の出番がやって来た。

式最大のハイライトは、なんといっても卒業生総代としての挨拶だ。これまでは、適当に誤魔化してきた生徒会長役だったが、最大のハイライトである「卒業生総代」のことをすっかり忘れていた。そもそも「オフザケ会長」に、このようなシリアスなシチュエーションは不似合いだった。

(イナカ者父兄たちが雁首揃えたところで、どうってことねーだろ・・・)

と土壇場までは鷹揚に構えていたものの、いよいよ本番が近づくにつれて生まれて初めての胸の高鳴りを感じることに ( ̄ェ ̄;) エッ?

書記で無二の親友のムラカミ君に

「ムラ〜!
この役、代わってくれんかー?」

と持ちかけると

「何いってんだ。
折角のオマエの晴れ舞台を、オレが横取りするわけにゃあいかんだろーが」  

と、あっさりかわされる。

「マサ〜!
こういうのは、やっぱ目立ちたがりのオマエの方が適役だよ」

「何言ってんだ、オマエの役目だろーが!
ようよう、にゃべ!
父兄が何百人も来て、みんなおまえの一挙手一投足に固唾を飲んで注目するんだぜ。
うわ〜、考えただけでも足が震えて小便ちびっちゃうぜ ヽ(゚∀゚)(゚∀゚)(゚∀゚)ノ アヒャヒャヒャ

ムラカミ君以上にタチの悪いマサ君は、悪質にも思いっきりプレッシャーをかけて歓んでいた。

「挨拶文は、にゃべとモロト(もろこ副会長)で、相談して作りなさい」

とのお達しがあり、香ちゃんとの楽しい共同作業を思い描いたにゃべっちだったが

「挨拶文は、にゃべ会長が作るんでしょ?
(コンクール)最優秀賞なんだし」

と頼みの香ちゃんにまで、あっさりと逃げられてしまった。もとより、答辞の挨拶文程度は朝飯前で

「ウム、さすが全国入選・・・」

と、担任のお墨付きを貰った原稿を香ちゃんに見せると

「やっぱ、さすが上手だわ。
私じゃあ、こんな風には書けないし。
じゃあ、本番でも頑張ってね」

「どう考えても、こういうのってガラじゃねーし。
なあ、もろこ代わってくれー」

「何いってんの!
にゃべなら、なんだって簡単でしょ。ちゃんと、後ろで応援してるから」

と、そっけなかった。

三流ドラマなんかだと、この「後ろで応援してるから」の香ちゃんのひと言がにゃべっちを勇気付けたてな感じになるんだろうが、現実にはこのひと言が余計なプレッシャーとなってしまった。滅多にない香ちゃんの励まし自体は、嬉しくはあったが、密かに期待した香ちゃんとの打ち合わせは、呆気なく終わってしまった。
 
卒業式最大のハイライト「卒業生答辞」の大役に、前日までは生まれて初めて「緊張」を経験した神童にゃべっちだったが、いざ当日の朝起きてからは嘘のように緊張感が奇麗サッパリと消えていた。講堂の照明も薄暗く、居並ぶ父兄らの姿は黒々とした頭しか見えず、無事に何もかもが終わった。

卒業とはいっても『B小学校』の生徒が、そっくりそのまま1kmほど離れた『B中学校』へエスカレーター式に進級するだけとあって、別れの淋しさなどは微塵もない。もっとも『B小』の生徒がそっくり『B中』に進級するのは当然とはいえ、進学先となる『B中』の方は、これまでのように『B小』生徒だけではなくなる。

同じA市内で我がB学区の隣のC学区は、この時まさに『C中学校』の建設が急ピッチで進められていた。開校は翌年度となっていただけに、この年はこれまで通りC学区にある『H小』と『Y小』という二つの小学校の生徒らは、ともに最初の1年間は『B中学』に通うことになっていた。

要するに『B小』に加え『H小』、『Y小』という3つの小学校の生徒たちが『B中』に集まってくるという長年の通学区事情は、この年が最後となるわけである。この年に限っては『B小』の生徒に加え、果たして何人いるのかわからない『H小』と『Y小』の生徒らを合わせた大所帯となることは間違いなく、加えてまったく知らない大勢の生徒と「呉越同舟」となるわけである。

それだけに

(向こうは一体どんなヤツらがいて、どんな中学生活になるんだ?)

といった好奇心と違和感の入り混じった、なんとも妙な気持ちを抱えながらの中学進級となった。

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