2003/11/16

女子マラソン・高橋尚子選手の悲劇

 マラソンランナーの高橋尚子選手は、スポーツ観戦オタクのワタクシにとっては、女子柔道のYAWARAさんとともに長らく別格的な存在です。

その高橋選手が久々に登場する、来年のアテネ五輪の出場権を賭けた「東京国際女子マラソン」が行われました。

高橋選手といえば、ご存じの通り前回のオリンピック女子マラソンで金メダルに輝き、当時は「五輪金メダリスト」と「世界最高記録保持者」の2冠を制して世界の女子マラソン界に君臨した存在でありました。

その後、世界記録はケニアのヌデレバとイギリスのラドクリフに更新されたとはいえ、当時の世界記録である2時間1946秒は「純粋女子マラソン」では、未だ世界の誰にも破られていない記録だったと記憶しております。

また、初マラソンを除く2度目のレース以降は、走る度に記録を塗り替えるような勢いで6連覇という驚異的な強さを見せ付け「女子マラソン世界歴代20」には一人で3度も4度も名を連ねるほどに、世界でも図抜けた安定感を誇る存在としても有名でした。

そんな高橋選手だから、今回も独走での優勝は誰しも疑っていなかったでしょうし、寧ろ記録が出難いので有名な東京のあの難コースでどの程度の好記録を叩き出して、来年のアテネ五輪行きのキップを悠然と掻っ攫っていくのか、という所に大きな焦点が当てられたのも当然だったでしょう。

序盤から、やや抑え気味のペースですが、レース前から

「過去最高の絶好調!」

が伝えられ、またテレビの解説者もゲストで来ていた世界記録保持者も

「素晴らしい走りです!」

と声を揃えていましたが、ワタクシ的には

「今日は、なんかおかしいぞ・・・」

と思いました。

得てして

「これまでにない絶好調」

とかの触れ込みの場合に限って、油断からかポカが出易いものでもありますが、それ以上にあのいつものような颯爽とした、風を切るような走りがやや鈍いように見えました。

加えて、本来の楽しげな笑みを薄っすらと浮かべているはずの表情とは違い、少し口を開け気味のやや苦しげに見える表情も、これまであまりお目にかかったことのないものに見えたからです。
 
 といっても勿論ワタクシとて、この段階での敗戦は夢にも予想はしていませんでしたし、中間点を過ぎた辺りで2位の選手を突き放して、スパートをかけた時も

「ようやくこの辺りから本調子になってくるのかな・・・」

と見ておりました。

しかしながら、結果は・・・まさかの惨敗。

明らかに後半に来て、身体に何かの変調を来たした事は推察出来ますが、今更素人がここで敗因をゴチャゴチャと推測しても仕方がないですし、例によって小出のオッサンが屁理屈を捏ねていましたが、総ては後知恵の類に過ぎないのだから、今更それらの御託を訊いても無意味でしょう。

高橋選手とて、稀に見る天才ではあっても生身の人間なのですから、こういうケースがあっても何ら不思議ではないと思います。

寧ろ不思議なのはテレビ中継で、高橋選手が負けたのをあたかも鬼の首でも取ったかのような、あの騒ぎ立てよう(偽善の仮面を被った大ハシャギ?)は、一体なんなのか?

結果的に、世界をアっと驚かせるようなスクープ映像を独占生中継出来たという、マスコミ人としての喜びは多少はわからなくもないが、あれだけ国民栄誉賞だなんだで散々持て囃しておきながら、一度負けたくらいで掌返したように晒し者のようにして、弄ぶ神経がわからない。

勿論、非情な勝負の世界にあっては、期待されながら結果を出せなかった者が叩かれるのは、ある程度は仕方のない事なのでしょうが、にしてもレース後にアテネ五輪でライバルとなるはずだったラドクリフ選手をわざわざ呼んできて、高橋選手とツーショットで並ばせた上に、このライバルにマイクを突きつけてインタビューをさせるという無神経さは許しがたい

思わぬレースとなり、パニックと傷心に身を焦がせていたであろう高橋選手なのだから、何故にさりげなくそっと見守ってあげられないのか。

話なんぞは、落ち着いた後でじっくり訊けば良かろうに・・・と思っても「スクープ」を出し抜かれることを極度に恐れる、醜いハイエナ集団のような卑しいマスゴミ根性の前には、鼬の耳に念仏というところでしょうが。 

 本来ならば、どん底の精神状態でとてもマトモに口も開かぬはずのシュチュエーションに関わらず、内心の絶望を押し隠して気丈にも、いつも通りの明るい笑顔でインタビューへの対応をみせる高橋選手は、図らずもさすがに超一流のアスリートであり、また立派な人格者でもある事を改めて証明して見せました。 

その心境を慮ると、とても観ていられるものではなく途中でテレビを消してしまいました。

これで、最大目標であったオリンピック2連覇の夢は消えたも同然となりましたが、これまで負け知らずの快進撃を続けてきていた高橋選手は、これにより大きなものを失ったのと引き換えに、同じくらいに大きなものを得る事が出来たのでしょう。

なにより不本意な不調にも関わらず、ともかくも最後まで諦めずに完走して見せた、あの不屈の美しいアスリート・マインドは涙を誘います。

最終選考会となる、3月の名古屋マラソンの出場が早くも取り沙汰されているようですが、3月と8月の本番という短期間で2回続けて好記録を出すのは至難の業でしょうし、今後(引退後)の長い人生を考えればあまり無理はして欲しくない、というのが一ファンとしての思いでもあります。

高橋尚子選手も、次のレースでは真価が問われる事になるでしょうが、オリンピックでなくとも舞台はどこでも良い。

今度こそベストコンディションで、髪を靡かせてのあの颯爽とした走りと、本当の尚子スマイルを見せて貰いたいものです。

にしても「宮原@厚顔無恥」同様「増田@リタイア女王」の猫なで声によるロクデモない話しかしない感情過多解説は、毎度ながらウザ過ぎて聞くに堪えん

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