2003/11/15

神童にゃべっちに私立中学の誘惑

 小学校最後の父兄相談会。

父兄相談会といえば、学校側は通常は担任教師が対応するものだが、教室に入ったにゃべっち母を待ち受けていたのは、なぜか3人。

担任教師と、名物教頭、そして頭が奇麗に禿げ上がった老教師という顔ぶれだった。

酒乱の気があることで知られた名物教頭は、昨年までPTA会長を務めていたにゃべっち父と親しかったらしく、酒を持っては家に乗り込んできて大騒ぎをしていったことが何度かあった。

その赤ら顔の教頭が、禿頭の老教師を

「校長です・・・」

と母に紹介したから、母は

(なんで、校長先生が・・・)

と首を傾げた。

普段はしかめっ面で、怒りっぽい担任教師はまだ20代半ばと若いせいか、或いは元来気が小さい性質なのか、生徒の親の前では借りてきた猫のようにおとなしいと、もっぱらの評判だ。

わけても、気の強いにゃべっち母のようなタイプは殊のほか苦手とみえ、懇談会では耳を疑ってしまうほどの「神童礼賛」の嵐が吹き荒れたらしい。

「いやー、にゃべっち君は本当に優秀なお子様で。
あんなに賢くて手のかからない子は、私は見るのも訊くのも初めてです。  
やはりご両親の教育が、素晴らしいのでしょうか(アイロニーかw)

にゃべっち君は、とにかく持って生まれた知能が図抜けて高いのですが、私らのようなIQの低いものから見て、惜しむらくは勉強嫌いなところでしょうか。  

私ら知能の低いものは、これはもう勉強するしかないのでコトは簡単なのですが、にゃべっち君のようなデキの良い子に限って、得てして努力を嫌う傾向が見られまして・・・」

などといった調子で、臆面もなく歯の浮くようなセリフを並べ立てていたらしい。

「あら、そうですか?
にゃべの場合は、要するに単なる怠け者だと、親の立場からは思っておりますが」

と口の悪い母に突っ込まれ、思わず

「アハハハ・・・」

と、お愛想の馬鹿笑いをした拍子に、後ろの窓の桟に後頭部を打ち付け

「イテテテ・・・」

と顔を顰めたとか。

「本当におとなしい先生だこと」

と、母はすっかり感心していた。

さて、この懇談の席上で、こんな話が出た。

最後に行われたテストで、算数の問題を作ったヒネクレ者の教師が「中等数学」の問題ばかりを出したため、平均点が30点を下回るという非常識な結果が出たのだった。

さらにご丁寧なことに採点後の答案用紙を返す時に、点の低い者(0点)から順に名前と点数が発表されるという念の入れよう

なにしろ平均点が20点台だから、誰もがこれまで取ったことのないような酷い点数を高らかに読み上げられ赤っ恥を掻く中で、最高点として最後に読み上げられたにゃべっちだけは、一人別天地を行くが如き「95点」を発表され、皆の注目を一身に集めた(70点以上は、学年全体でも悪友トリオ、香ちゃん、香里ちゃんの5人のみ。ただし自身としては、毎回判で捺したように「100」を続けていた得意の算数で「95点」は、過去ワーストであった)
 
 これには、問題を作った当の偏屈教師(以前は、中学教師だった)も驚き

「この問題で95点も取るヤツがいるとは・・・
このテストなら、中学生でも90点以上は取れないハズなのに。
にゃべは中3か、ヘタすると高校生くらいの学力があるな。
オレも長い教師生活で、これだけ出来るヤツはちょっと記憶にないかも・・・」  
と、珍しくべた褒めされたものだった。

こんなエピソードを交えながら

「にゃべっち君は、名古屋の私立中学に進学されては如何でしょうか?」  

というと、校長が続きを引き取った。

「どうも『B小』や『B中』でおさまるには本人も物足りないでしょうし、また学校としても折角の才能を埋もれさせておくことは、惜しい気がしましてな。  
 私立校で優秀な生徒たちに混ざって競争してこそ、にゃべっち君本来の潜在能力を伸ばすには、良いかもしれませんね」

と熱心に言うと、担任に

「私立中学のレベルは、どの程度かね?」

と聞いた。

「調べてみましたが、にゃべっち君の学力であれば有名な東海中学辺りでも充分、トップクラスでやっていけると思いますよ。
 まあ、私立となると名古屋まで通うことになるわけですから、その方が大変といえば大変でしょうが・・・」

小学1年の入学直後の家庭訪問でも、担任教師にくっついて来た学年主任教師から「教育大附属小学校へ転校されては?」と強く薦められたが、ここでまたしても私立への進学を勧められることになった。

私立中学といえば、何と言っても名古屋の『東海中学』であり、かつて名古屋の社長令嬢であった母の弟の母校でもある。

金と頭の両方を兼ね備えていなければならないだけに、現実に行く行かないは別として、誘いがあっただけでも悪い気はしなかった。

姉のミーちゃんも

「『東海』に奨められたって?
スゲーな。
そんな話、聞いたことねーし・・・」

と驚いていた。

1人で通うとなると精神的にも大変でしょうが、例えば仲の良いムラカミ君やスズキ(マサ)君たちと3人で一緒に通うとかだったら、遠距離通学もそんなに苦にならないかもしれませんねー」

結局、電車通学で片道1時間以上を要する私立中進学は気が進まず、マサ、ムラカミ両君ともども地元の公立中学へエスカレーター進学という妥当な線におさまった。

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