2004/03/14

マラソン五輪代表選考のデタラメ

 マラソン、特に女子マラソンといえば、オリンピックの陸上競技では唯一にして最大のメダル獲得が期待出来る種目だけに、毎回その代表選出の行方は国民的な関心事となっています。マラソンでは、男女ともに五輪開催年に行われる3度のレースから3人の代表選手が選出される事になりますが、これに先立って前年に行われる「世界陸上」において、メダルを獲得するなどの活躍をした選手は無条件で五輪代表に選出されるというのが、最近お馴染みのケースです。

 国内で行われる代表選考のレースは、女子ならば「1月の東京」、「2月の大阪」、「3月の名古屋」と、それぞれに季節や気候からコース、そして参加する選手の顔ぶれと何から何まで異なる条件だけに、そもそもこれらのまったく違うレースの結果を比較する事自体に無理がありますし、また半年も前に(殆んどの年が)海外で行われる世界選手権に至っては尚更、比較の対象とするには無理があるでしょう。

各国を代表する一流選手が結集する世界選手権で、金メダリストや銀メダリストになるくらいの選手ならば、実力ばかりでなく一発勝負の大舞台での勝負度胸も証明したようなものですから、優先して五輪代表に選ばれるのは異論のないところですが、問題は国内選考レースです。先にも記したように、あらゆる点でまったく条件の異なるレースの結果を比較する事自体に土台、無理があります。実力主義の徹底しているアメリカなど外国の幾つかの国では、選考レースは一本に絞り怪我や病気などで参加出来ない選手は、過去の実績には一切関係なしに容赦なく切り捨てられてしまうそうです。

といっても、別にアメリカの真似をして日本も選考レースを一本化せよ、などというつもりはありませんし、有力選手を三度のレースに分けたTV中継でTV各局や新聞社などの主催者や後援者を潤し、それに伴ってスポンサーからせしめる高額なお金が陸上連盟(以下、陸連)を支える大きな財源になっているというお国の事情を考えるならば、事の是非はともかくとして現実的にはそう無理難題ばかりも言ってはいられないでしょう。

しかしながら、現状の3本のレースで選考するというのを大前提として考えてみても、これまでの陸連の選考方法には大いに問題がありそうなのは、誰もが納得するようなしっかりとした選考の指針を示していないためで、毎回選考のたびに「なんでそうなるの?」とか「おかしいぞ・・・」などと物議を醸すのは、あたかも密室でゴチャゴチャとやっているような不透明さが、拭いきれないからでしょう。

先にも挙げたように気候や風土条件、コースなどあらゆる条件が異なるレースを無理にも比較検討するからには、少なくとも科学的に明確な比較の指標が求められます。例えば大阪のレースは例年、気候が最も安定してコースのアップダウンも少なく、好記録の出やすいコースといわれるのに対し、東京のレースはコースのアップダウンが多く、また3月中旬に行われる名古屋はマラソンの気候としてはやや暑くなったりと、どちらも大阪に比べて好記録の出難い事は、良く知られています。

こうした気候やコース条件にしても、今の発達したスポーツ科学のメスを入れ本格的に比較分析するならば、かなりの部分まではそのギャップは科学的に特定していけるような気もしますが、陸連という組織がそういう事をやっているのかいないのか、少なくともそういった話は寡聞にして訊いた事はなく、現実に毎回聞こえて来るのは

「大阪と比べれば “だいたいx分くらい” の差があるだろうから・・・」

「今日の向かい風では、恐らくx分くらい違ってくるでしょう・・・」

といった、甚だアバウトな「感覚」だけに頼ったものでしかないのが現状と言え、アスリート生命を賭けて身を削る思いで闘っている選手達にしてみれば、こんな骨董品どもの寄り集まりの挙句、思いつきのような曖昧な選考基準で篩いに掛けられるのでは、とても納得のいくものではないでしょう。

タイムの比較はコースや気候条件、またレース全体のペースなどから考えて困難だというのであれば、いっその事 《各レースで、優勝した選手(または日本人トップ)を一人づつ、というようにした方が余程スッキリして、わかりやすいと思うのですがね。

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