10月に入ると、オロチからおよそ1ヶ月ほど遅れ、今度は大阪から転校生がやって来た。それなりに美少年といってもよさそうなオロチとは対照的に、見るからに「関西人」という感じのヒョウキンな風貌に加え、(当然のことながら)コテコテの関西弁でよく喋るユーモラスなパーソナリティ。生まれも育ちも大阪というこのヒムロ、人見知りなどといった感情とは一切無縁の性格と見え、転校早々から何の臆するところもなくジョークを連発し、たちまち初日のうちに人気者となった。このように、すっかり『B中』の水に溶け込んでしまったところは、にゃべっち属する6組に転入してきたオロチ同様であった。
大阪の学校ともなると、当然A市のような中都市と比較するまでもなく、そのレベルの高さは容易に想像が出来た。が、このヒムロの場合、そのお笑い芸人のようなヒョウキンな風貌も相俟って、幸か不幸か
「アイツは、オロチと違って優等生じゃねーな・・・」
という評価が定着してしまった。
にゃべが学年トップを奪回した、2学期の中間テストは10月初めに行われたため、転校して来たばかりだったヒムロはオロチ同様、試験を免除された。が、オロチとともに12月の期末テストにおいて、いよいよ転校生2人の真価がベールを脱ぐ時(?)がやって来た。
「秀才」の呼び声高いオロチの参入により、テスト前は野次馬らによってかつてなかったような、ヘンテコな盛り上がりをみせた。Y学区の学生らは
「トップはナカムラだろう。人気は、にゃべやゴトーとは比較にならんし、なんの面白みもないヤツだけど、やっぱ実力はヤツが1番だて。なんたって1回目がトップで、2回目も2位だからな」
一方、H学区の男子生徒は
「いやいや、ナカムラなんぞよりは、ゴトーが上だって。安定感から見ても、やっぱゴトーがアタマひとつ抜けてるだろー」
またH学区の女生徒らは
「ゴトーは口だけは達者だけど、実力は真紀の方が上でしょ」
そして、B学区の生徒らは
「今度は、ムラ辺りが来るんじゃないか?
にゃべの次っていやあ、やっぱムラしかいないよな~」
「ムラカミよりも、もろこでしょ。H学区のオーミヤさんには悪いけど、女子最初のトップはやっぱもろこよ!」
といった声も訊かれたが、なんといってもB学区最大のスター・にゃべっちへ寄せる期待の声が、最も多かったのは言うまでもない。
「やっぱ、その気になればにゃべは、格が全然違うだろ。これまでの例から見ても、今後はにゃべがトップを独占するんじゃねーか?」
といった調子で、学生らの間では無責任な予想で盛り上がっていた。
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