2004/03/08

急展開(T社極秘プロジェクトpart12)

 そうして、約束の日に何週間ぶりで懐かしいJRの名古屋駅へ行くと、およそ3ヶ月ぶりくらいで顔を合わせる、T氏の小太りな姿があった。

「やあやあ。相変わらず元気そうだね」

とまずは挨拶を済ませたところで、マリネットにある喫茶室へ入りコーヒーを飲んでいると、早速相手が現れた。xxx社系某IT部門で現場リーダーを務めるH氏で、そこで簡単なヒアリングが行われる。今回の案件は、内容的にはそれほど難しいものではなく、これまでにこなしてきた延長線上で充分、務まりそうに思えた。

相手のH氏からも

「にゃべっちさんの経歴を拝見しても、こうしてお話を聞いていても私の後任としては充分問題ないと思われます・・・が、私には決定権はないので一応帰ってから上司と相談の上、改めて客先(xxx社)での最終面接という運びとなるかと・・・」

という回答を貰い、待つ事になった。

一方、先行して話の来ていたコンサルタントT氏によるJR某の案件の方も面接の運びとなり、休日のセッティングで名古屋にある元請けの某大手製造業を訪問したが、こちらの方は相当に高いスキルが要求された。残る一つで、金融関係官庁の案件を持ち込んできたH社は、あれだけ煩くアプローチしてきていたわりには、何故かここへ来てパッタリと音沙汰がなくなっていた。

ここまでの感触として、相当に要求の高いJR某は恐らく上手くいかないだろうと見当は付いた。xxx社系の方は、先日の面接の感触はかなり手応えがあったものの、なにしろ間に入っているのが前科数犯のST社のTだから、契約が成立するまではどう転ぶかわからないところがあっただけに

(まだまだ良い話があれば、並行して進めていかねば・・・)

と考えている矢先に、ようやく現場プロジェクトリーダーのM氏から

7月以降の仕事は、決りましたか?
もし決ってなくて、にゃべさんにもその意思があるのなら、しばらくここで続けてやって貰いたいんですが・・・」

という持ちかけがあったのは、6月半ばになろうという時期の事であった。

 ともかくこのプロジェクトリーダーとは、その件に関しては一度も腹を割って話す機会がなかったので

(何を今更・・・)

とは思いながらも、日中勤務の終業後に休憩所で話をする事になり、そこで意外な事実も含めて事の真相を初めて知らされたのであった。

「なにしろ、T社の要求するレベルが異常なまでに高くて・・・本当の事を言いますと『現有メンバーを全部代えろ!』とまで言われているんですよ。

これまで何度も、障害対応でもたついて来たSさんは仕方ないにせよ、にゃべさんは最初の深夜のトラブルの時点でもうNG出されましたし、他の2人も偶々大きいトラブルに遭遇してない点で運が良いだけで『あれじゃあ、心許ない』とか言われてますしね・・・ボクだって、いつそう言われるかわかったもんじゃないですわ・・・」

「しかし・・・現実問題として、4人全員を入れ替えるって事はないでしょう?」

「いや・・・本気らしいです。ただ、そんな事したらボクが一番困る、というかやっていけないので、何とか説得して順次、段階的に入れ替えるという事になりました。それで最初は勿論Sさんでこれが6月一杯ですが、正直言ってSさんに関しては、ボクもダメだと思っているので異論はありません(S氏は能力の問題だけでなく、いい加減な性格から他のメンバーがかなり尻拭いをさせられてきていた)で、後の3人で入れ替えの順序を決めろと言われたので、それは出来ませんと言うと、数日後に向こうから『DとKは保留にしてもう一人、つまりにゃべさんを変えてくれ!』と言って来たのです」

「それは、つまりD氏とK氏の2人は、元請けのSC社の社員だからか。つまり大手のSC社が、T社か富士通某に働きかけたんだろう・・・」  

「それはボクの口からは、なんとも言えません・・・ただ、こういう事実はあるみたいです。なんでもSC社は、随分昔からT社とは太いパイプがあって、なんらかの場合はF社を飛ばして直接、T社の幹部クラスに掛け合うケースがあるとかは訊いてます。ちなみに、いつもにゃべさんが 『うざいオッサン』と言っていた、あの部屋の総リーダーであるRさんは、表向きは元請けからの出向となってますが、本当はT社の幹部社員らしいですよ。ボクもつい最近、初めて知りましたが・・・」

「つまりSC社の働きかけを受けたRが、私を交代させようと暗躍したと。じゃあ度々あの部屋に顔を出していたのは、要するにスパイみたいなもんですな。そうか・・・最初のあのトラブルの時に、アイツに電話した際にゴチャゴチャ鬱陶しかったので、相手にしなかったのを根に持っているのかな?」

「その辺りは、どうかわかりませんが・・・まあ、にゃべさんの今の推定はあくまで憶測としか言えませんが、私自身が訊いている情報と照らして考えるなら、あながち的外れでもないかもしれません・・・さて、それで・・・ここからが本題ですが・・・・」

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