その後、委託元から
「再度、F社さんとT社さんとの話し合いの結果、第二フェーズ終了となる9月末まで頑張っていただきたいという結論になりましたので、色々とご迷惑をお掛けしましたがよろしくお願いします」
という連絡が入った。
しかしこの時点では、すっかりやる気が失せていたから
「こちらとしては、6月末で終了したい。T社も、unix超一流の人を望んでいるということだったし」
と皮肉をかまして、少しの猶予期間を時間を貰った。
その週は日中勤務が続くシフトに当たっていたため、F某社のリーダーがずっと横に座っており、直接の働きかけを待ってから結論を出す腹積もりであった。
ところがである。このリーダーM氏からは一向に何の話もないまま、重苦しい時間が過ぎていった。
(なんだ、コイツは!
要するに、オレは必要ではないって事かい・・・)
と些か拍子抜けのする一方で、以前何度かお誘いのあったコンサルタントのT氏からJR案件、それに別のルートからも金融関係官庁案件のオファーが舞い込んできた事もあって、こんな折りだけに
(まだまだオレを必要として、声を掛けてくれるところもあるんだ・・)
とひときわ、そのありがたさが身に沁み、気持ちの方も大きく固まりつつあった。
そうして何の動きもないまま、このシフトの最終日が終わったため、遂にまったく働きかけの気配すらなかったリーダーの意思を確認する事のないままに結論を出す事になり、委託元へ連絡をした。
「やはり当初お話のあった、6月末で辞める事にします」
「・・・そうですかぁ・・・ウチとしては、いや富士通某さんとしても、どうしても9月末までは残っていただきたいという意向なんですが・・・実際、9月末までやっていただくとして、その間にまた話がどう変わっていくかもわからないところがあって、案外そのうちににゃべさんの真価が認められて、やっぱり延長していただきたいって事にもなるかもしれないと・・・」
「さあ、それはどうかな・・・第一、延長したら3ヶ月だけ、また住居を探さなければいけないし・・・言うまでもなく、その3ヶ月だけ住むために自腹を切ってまでやる意思は毛頭ないですよ」
「その点は、にゃべさんに継続する意思があれば、F某社さんに改めて掛け合って、どうにでもなるとは思いますが・・・」
(この委託元の会社もこれだけコケにされながらも、尚もたかだか3ヶ月の契約にここまで拘るからには、勿論信用問題もあるが・・・こりゃ相当な単価が出ていて、儲かる話なんだろうな・・・)
と、腹の中ではせせら笑いながらも
「いや、結論はさっき言った通りで・・・実を言えばこの間の話があってから、幾つかの方面からオファーが舞い込んで来てます。その間、日中勤務だったのでリーダーから何らか話があるだろうと思い、それも含めて結論を出そうと思っていましたが、結局リーダーからは何のリアクションもなかった。正直『ナンダコリャ』って感じで・・・つまりリーダーもT社の決定に異論なしって事で、寧ろ折角、必要と認めて声を掛けてくれているところへ行くのが技術者としての筋かなと・・・」
「う~ん・・・お気持ちはわかりますが、それはちょっと理解が違うと思うんです・・・そのリーダーのMさんも、まだF某から知らされたのは一昨日くらいなんですよ。その時に
『にゃべさんに抜けられては困る』
とF某さんに掛け合った結果が、9月末の第2フェーズ終了までに決ったと訊いてますので・・・リーダーといってもF某の子会社の人だから殆んど権限がなく、立場的ににゃべさんにどう話して良いのか、判断がつかなかったんだろうと思います・・・」
「しかし、リーダーはリーダーだからね。それなりの意思表示をして貰わん事には・・・こっちはそんな水面下の動きなんて、知ったこっちゃない。立場はわからなくはないが、仮にワタクシがその立場のリーダーならば、真っ先に本人に自分の考えは伝えるでしょうねぇ・・・」
「実は、Mさんから私に
『自分がリーダーとして、力不足で申し訳ありませんでした。F某を説得して、何とか9月末までには残っていただく方向で話を付けましたので、その後の事はこれから一緒に考えていきましょう』
というメールも来ました。
向こうの営業さんの話でも
『Mは今回の件で、かなり落ち込んでたみたいだよ。元々、彼は口下手なタイプだから、仕事上はいいんだけど、外部スタッフとのコミュニケーション能力は、これから身に付けさせていかなければならない課題だと認識している・・・』
という事でした。
立場的に非常に辛いものがあるようですが、そんな彼もにゃべさんが残ってくれるのを望んでいるのは間違いないのです・・・」
なんとなく裏事情はわかったものの、この期に及んで覆水が盆に還る事はない。
「まあ、なんにしろ他の話が上手く運ぶ運ばないには関係なく、6月末までって事でお願いします」
「そうですか・・・そこまで決めているのでしたら、わかりました・・・ところでもう求職活動をされてるようですが、例えば当社からも良いお話があればご紹介させていただいてもよろしいのでしょうか・・・?」
あくまで堅そうな意思を感じ取ったか、案外あっさりと態度を切り替えてきたので
「まあ、どっちでもいいけど・・・」
と一応は答えてはおいたが、最早この会社には殆んど期待するところはなかった。
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