2004/03/07

詐欺師に三行半(T社極秘プロジェクトpart11)


 マリオットのCaféで行った面接では、あれほどまでに好感触だっただけに、どう見てもNGの出るような感じはなかった話にもかかわらず、一週間を経過してもST社のTからは、例によってなんの音沙汰もなかった。

 所属している某社担当の営業女性からは、T社関係の別の現場のオファーがあるとの事で進めていてもらったが、その方は

「あれから社内事情が変わり人員削減の方針が出されたそうで、今回の話は流れてしまいました・・・」

というわけのわからない結末となっていただけに、続いて紹介の来たF社関係の仕事は「少し考えさせてもらいましょう」と、二つ返事で即座に断った。

そうした状況だけに、何の連絡もしてこないTに対する怒りは益々、増幅されてくるばかりである。こちらから連絡するのは癪に障るので我慢していたが、遂に痺れを切らせて一週間以上経ってから電話をすると

「ああ、あの件ね・・・どうも上手くないみたいなんだ・・・」

と、なんとも投げやりな返答であった。

「え?
この前の話では
『直ぐにも、客先面接が入ります』
ということでしたが・・・」

「いや、どうもさ・・・この間面接した人が、客先で何か余計な事を言ってしまったらしくてさ・・・流れちゃったみたいなんだ・・・言わなくてもいい事を言ったもんだから、どうやら競合相手に取られちゃったらしい」

これでは何の話だか、サッパリわからない。こういう時は嘘を吐いているのは歴然であり、口調からも真実性の欠如は明らかであった。

「はぁ・・・?
『余計な事』ってのは、なんなのでしょう?
納得いきませんね。まあ、結果としてNGになった事をゴチャゴチャ言っても仕方がないですが、それならすぐにも連絡して欲しかったなあ」

「いや、まださっき連絡が来たばかりでね・・・ちょうど、今から連絡しようと思ってたタイミングだったんだ・・・オレにとってもサッパリわけのわからない話だから、確認を取ってるうちに少し遅れたけどさ・・・」

ここに至り、まだ堪忍袋の緒が切れないような人がいたら、まったくお目に掛かりたいものだ。

「しかし・・・まあ、よくそこまでいい加減なことばかり言えるもんですね・・・」

「何が、いい加減なんだよ?」

「何がって・・・いいですか。結果がNGの時は、いつも連絡もなく知らん顔でしょう。ダメな時も必ず連絡してくれと、最初から何度言って来た事か・・・」

「いや、それはだな・・・」

「まあ、いいから話を訊きなさいよ。この前のCS社のY氏との件ではホトホト頭に来てましたが、それから今回の件にしても、そちらから持ち掛けて来た話だ。それでも、ちゃんとした話ならばいいとは思っていましたが、相変わらずこんないい加減な対応ばかりではね」

「いや、そうじゃない・・・」

「正直言って、もうこれ以上いい加減な話に付き合わされるのは懲り懲りなので、二度と電話してこないで欲しいですな」

とグーの音も出ないタヌキに、一方的に絶縁を言い渡した。

(これで二度と、電話してくる事はなかろう・・・)

と、この時点では激しい憤りの中にも、多少は溜飲の下がる思いもあったのだったが・・・

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