卒業式。
この時期、本来1年生の出番はないものだが、この年に限っては『C中』の新設に伴いH、Y両地区の生徒らが1年間を過ごした『B中』から『C中』への転校という形となり、たった1年でのお別れを迎えた。
1年間で、いつの間にか何人かの友人が出来たが、言うまでもなく最も心残りだったのは、真紀とのお別れだ。
「なんか淋しいよね・・・たった1年で、みんなとお別れなんて・・・」
2人だけの校庭。いつもは陽気な真紀が、珍しくしんみりした口調で呟いた。
「オーミヤたちは、いいじゃねーか。新しくて、綺麗な学校だしさ。おまけに上級生ももいねーし、通学も楽になるしでいいこと尽くめだろーが・・・オレたちが、代わりに行きたいくらいのモンさ・・・」
内心の淋しさを悟られまいと、心にもないセリフを並べ立てるにゃべ。
「そうかな・・・?
でも・・・にゃべとは、2年経ったら高校でまた一緒になるかもね?」
「そうだな・・・グリやタカシマのヤツはどうなるかわからんが、まぁ我々は同じになりそうだなー」
学区トップである『A高』への進学は疑ってもいなかったし、真紀が『A高』へ進学するのもまた、同じくらい疑いのない事と思われた。
「にゃべが『東海』とかに行かなければね・・・」
「行く気はねーな・・・『A高』でいいよ・・・オーミヤが『金城』(学院)ってのは、ありかな?」
「ないない・・・」
2年後の話になったが、なんとなく白々しい気持ちで、言葉が滞りがちになっていった・・・
「オ~イ、にゃべー!
おるかー?」
と突然、静寂をぶち破るようなダミ声とともに、2人の前に駆けつけて来たオグリ。
「あれっ?
オマエら・・・なに話し込んでんだ、こんな寂しいとこで?」
「いや、もうみんなとお別れだからな。
なぁ、オーミヤ?」
と慌てて水を向けると、真紀は
「あ・・・そうそう、グリも野球頑張ってよね。向こうで、ちゃんと応援してるから・・・じゃあね」
と言うと、何故か慌てたように立ち去っていった・・・
「オイオイ、オマエら~。こんなところでよろしくやってやがって、どーゆーわけだ?
怪しいぞ・・・」
「よろしくやってって、なにバカ言ってんだ!
今度新しく出来た『C中』ってのは、どんな学校なのか?
オーミヤが、来年からここに来られなくなるのが淋しいとかヌカシてやがるから、オレが代わりに新しい方へ行きてーくらいのもんだって、話してただけだってのに・・・」
「そうか・・・そういや連中は、今度から向こうの新しい中学に行くんだったな・・・オレたちも、向こうに行きてーな。いっそオーミヤの代わりに、タカシマのヤローが向こうに行ってくれりゃあ、万万歳だったのにな」
「なんじゃい、そりゃ?」
「なんせ、アイツだけは煩くてかなわんて・・・」
と、別離の感傷などとは一切無縁のオグリは、相変わらずの得意の毒舌を振るっていた (* ̄m ̄)ブッ
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