第3楽章
マーラーは、芸術家にありがちの神経質な完璧主義者であったため、常に病的なまでに完璧を追求する課程において、演奏家達とのトラブルが絶えなかった。 世界の一流オーケストラを渡り歩き、指揮者としての名声を高めていく一方では、それぞれの現場においてトラブルメーカーとして、かなりの鼻摘み者であった事もまた一面の真実だったようだ。
弱冠20代にして、世間的には世界有数の大指揮者としての名声を確立しながらも、常に現状に満足をしないストイックなマーラーは、休日を利用して作曲活動にも手を広げ始めた。28歳の時に完成した交響曲第1番『巨人』を皮切りに、いよいよ本腰を入れて作曲に取り組んでいく。マーラーの音楽は、交響曲と歌曲という二つのジャンルにほぼ収斂されるが、一般的には全11曲の交響曲(ただし遺作の『第10番』は第1楽章のみマーラー作で、第2楽章以降はD・クックの補筆)が圧倒的に有名だ。
前回も記述した通りマーラーの音楽には、その総てにおいて「死」をテーマにした底流が流れているため、他の作曲家のように一作毎にテーマが異なる作品というよりは、同じテーマを様々なアプローチからアレンジしながらじっくりと掘り下げていった、いわば全体で一つの壮大な作品と捉える事も出来る。
若い頃から人一倍「死」を意識していたとはいえ、やはり晩年に近くなるほど、その「死」の影はより色濃くなって、音楽に深刻さと深みが増していく。そのため、第8番以降に書かれた『大地の歌』や『第9番』など、後年の作品になるほど真骨頂を垣間見る事が出来るといえるが、マーラーを聴き慣れていない耳にいきなり、それらの重い作品を理解するのは至難の業であろう。
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