2004/03/09

新提案(T社極秘プロジェクトpart13)

 「では・・・本題に入ります。
実は今のドキュメント作成を始めとした、6月末までの第一フェーズへのスケジュールが、にゃべさん以外のメンバーの分がかなり遅れており、Sさんのは言うまでもないですがSC社のメンバーらの分も、検収元からチラッと見ただけでNGを出されてしまいました。

名前は伏せて出していますが、実はにゃべさんの分でOKが出て

『この線で、総て統一した方が良いのじゃないか?』

という提案が出されましたので、これからはにゃべさんに進捗管理などを含めた、ドキュメント整備の旗振り役をやっていただきたいと・・・勿論、7月以降も完成するまでは・・・」

と、思わぬ要求が出された。

その後、リーダーM氏と2度に渡って話し合った末、現状の求職活動を優先しつつも6月末までに気に入った仕事が見つからない場合は、しばらくドキュメント作成を継続しても良いという結論に至った。ただし、3ヶ月契約の今の住居(レオパレス)は、7月半ばまでで契約切れとなるため、延長しても最大で半月までと申し入れておいたが

「その辺はF社との話し合いで、何とかなると思いますよ。実際、会社からの出向組には、数ヶ月単位でホテル住まいとかも何人かいる事ですし・・・取り敢えずボクは、会社若しくは必要に応じてT社の担当と話を詰めてきますので、その間にゃべさんは検収資料の作成に全力投球していてください」

という結論が出た。勿論、新しい職が決ればその方が良いわけだが、前に話の出ていたJRや名古屋の案件などは、どれもウヤムヤのままに立ち消えとなり、その間ネットで登録しておいた求職サイトから23のオファーは来て、休日を調節しながら面接に行ったりもしたが、どれも直ぐには決りそうもなく、そうこうしている間に6月末を迎えた。

 とにもかくにも、6月末までと決められた課題の割り当てられた分は作ってしまったので、いつでもお役ご免が出来る立場ではあったが、7月から予定していた交代のスタッフが決まらない。一次面接を一任された、リーダーM氏から  

「今度は、ボクの方が(unix超バリバリの経験者という)T社の要求に沿って、絶対に中途半端なところでは妥協しませんからね。既に3人に、NGを出しましたよ・・・」

といった経過報告が齎されたのを皮切りに、次第におかしな雲行きになって来つつあった。

「あれから今週も2人面接しましたが、どうもパッとしませんわ・・・正直なところ、ボクとしてはにゃべさんに、このまま残って欲しいところですが・・・」

「何を今更・・・確かT社は

『月額100でも200でもいいから、絶対にミスをしないバリバリのキャリアを富士通本社からでも連れて来い

 って事じゃなかったっけ?

と、皮肉をかますと

「あんなの、ハッタリもえーとこですわ」

と、吐き捨てるように言い

「第一、そんな予算がどこにあるのか・・・ボクもちゃんと上の方から訊いてますが、代わりに来る人も他のメンバーの予算と同額以上には、絶対になり得ないですよ。それでもボクなんかから見れば、羨ましいような額ですが・・・実際、F本社なんかでバリバリ出来そうなヤツが、遊んでいるわけはないですしね。  実は、今度面接に来た人たちのデータを見て、T社もようやく少しは現状認識が改まってきたようですわ・・・ハハハ」

そして数日後、F某社の営業課長N氏がリーダーM氏と同席し、また所属元の女性営業担当も交えて思いもよらぬ、しかし半ばは漠然と予想してもいた提案を持ちかけて来た。

 「これまでの話では、交代メンバーが決った時点でにゃべさんが辞めるということでしたが、ご存知の通り今の最大課題はしっかりしたドキュメントの整備です。しかしながら、新しいメンバーにそれは無理ですから、それは引き続き今のメンバーでやって貰う。そこで、にゃべさんはウチ(F社)と新たに契約を結んでいただき、引き続き最低でも第一フェーズの終了まで見届けて貰いたいと・・・その場合、当社の所属ですから、名古屋の本社内で作業をしていただくという事になります。つまり、これまで話していた交代メンバー云々とは、まったく別の話となります」

「それなら今よりは環境として悪くはないですが・・・しかし、それをT社や元請けが許可するのですか」

「元々、あの資料は当社がT社から丸請けしてるものなので、当社の担当メンバーで作るのは当たり前の話で、にゃべっちさんの立場は担当部門が少し変わって単に出向先が変更するというだけで、なんら問題はない」

「確かに、現状ではいつまで経ってもT社の満足するような資料は出来そうもないしねえ・・・」

実際、リーダーを含めた各自が作った資料を完成後に皆でチェックをする「チェック表」が手元に回ってきた時は、既に全員に「チェック済」の印がうってあったが

「え?
これで、どこをチェックしたんだ・・・?」

と思わず目を疑ってしまうようなお粗末なものばかりで、T社の厳しい「検閲」を通ったのは実際のところ、夜勤の空いた時間の眠気覚ましにと、殆んど一人で修正して仕上げたものばかりなのであった。

「しかし私の方は別に求職活動も始めているから、ここまでのいきさつ上、なんらか良い話が出てきた場合は、直ぐにも代わるつもりでいますが」

「それはまあ、事情が事情だけに仕方がないでしょうね。今は、どこも仮契約から契約までは稟議書の盥回しやらで手間が掛かりますから、仮にそういう流れになったとしても、半月とか1ヶ月のオーダーは見ておく必要があるだろうと思います。その間にも、ひたすら課題を一項目でも多く進めていただけたらと・・・勿論、PLの彼(M氏)と現場リーダーのD氏と、進捗等に関してはメールで連携を取り合ってやっていただくことが条件ですが・・・」

現場リーダーのD氏はおとなしい性格の人物だから、容易に主導権が取れるだろうと計算し、ともかくやることもない当面はやっておこう、という結論に達したのである。

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