ドヴォルザークの交響曲は全部で9曲だが、飛びぬけて有名な最後の『新世界より』を含めた7番以降の3作が良く知られている。実際にどれもが名作傑作と言えるが、ともすると『新世界より』の影に隠れがちになる一作前の『第8番』も侮れない名曲だ。
元々ドヴォルザークは、ブラームスとは敵対関係にあったワーグナーのファンだったが、恩人・ブラームスに遠慮して「隠れワグネリアン」を通していた。晩年となって、ブラームス亡き後にようやく大手を振って(?)、ワグネリアンとしての正体を現して見せたのが『新世界より』である。あのド派手なインパクトに比べると、遥かに地味な感じのする『第8番』とはいえ、ボヘミアの土臭い素朴な郷愁が漂うような、懐かしい感じの曲調が魅力だ。そしてお得意のメロディも、評論家某氏が「まるで美味しいケーキを幾つも並べたような・・・」と絶妙の形容をした、美しいメロディがこれでもかと連なって出て来る『新世界より』ほどではないにせよ、メロディの王様の醍醐味を堪能できる事は間違いない。
第7番以前の交響曲にはブラームスの影響が強く見られ、また第9番「新世界より」ではアメリカ滞在のあいだに聞いた音楽から大きく影響を受けているため、この交響曲第8番は「チェコの作曲家」としてのドヴォルザークの最も重要な作品として位置づけることができる。ボヘミア的な、のどかで明るい田園的な印象が特徴的で、知名度の点では第9番には及ばないものの、第7番などと同様に人気のある交響曲である。
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