2004/05/30

豹変 ~ docomoの『A』(2)

 「わかりました・・・しかし話を訊くのはいいけど、この前の経緯があるから訊いたからといって、必ずしも向こうの期待通りに動くとは限らないが。それを承知の上なら、訊かないという事もないけど・・・」

「ありがとうございます。では、ともかくC社のBさんがにゃべさんに伝えて欲しい、と言っていた内容をお話します。それをお聞きになった上で、判断していただければ・・・」

と前置きした上で

「先日の面接の後、弊社とは別の会社から紹介された技術者を面接して、Bさんがその人を採用したらしいのですが・・・ぶっちゃけ、その人が一週間足らずにして、docomo側からNGを出されたそうなんですね」

「なぜ?」

「スキル不足だそうです・・・ここだけの話でお願いしたいですが、docomo側から見てまったく話にならなかったそうです」

「なるほど・・・」

その経緯を説明して来たBさんが

「自分の人選ミスだった」

事を率直に認められた上で

『前回は、申し訳なかった』

と謝られました。

こうした経緯を説明した上で、なおかつにゃべさんに受けて頂くという前向きな意思があれば、是非もう一度面接の機会を設けさせて欲しい、と言っておりました。

で、今度はにゃべさんに対しても勿論ですが、クライアントに対しても同じようなミスを繰り返さないため、にゃべさんには実際の現場をご案内してどんな業務かを見て貰い、現場の(C社の)リーダーから説明をしたり、逆ににゃべさんから質問があれば、ドンドンしていただきたいと・・・その上で、にゃべさんに出来るか出来ないか・・・にゃべさんの場合は、スキルやキャリアでは問題ない事は明らかなので、後はやりたいかやりたくないかの判断していただきたいという、通常ではちょっと考えられないような、前回の反省を踏まえた破格の申し出なのです」

 真面目で誠実そうな若いR社営業のK君は、彼らしく電話越しにも一区切り毎に確認するように、熱心に話している。

「勿論、前回の経緯を含めて、にゃべさんの気持ちは僕もある程度察するところがありますので、今更なんだというところもあるでしょうが・・・とにもかくにも、Bさんからはそうした事を伝えて欲しいと頼まれたのが、ひとまず前回以来の経過という事になります」

「なるほど・・・」

「敢えて補足的に付け加えさせていただくなら、以上お話したような経緯は私としてもこれまで経験のないケースですが、考えて見れば事前に現場を見られるなんていう事は、通常ではありえない申し出でもありますし・・・ある意味、これほど確実性の高い話はないのではないかと思いました。そこで改めて前向きにご検討いただいた上、是非とも良いご返事がいただければと・・・」

「うむ・・・趣旨はわかりました・・・」

「これ以上は話をするよりも、まずは実際の現場を見ていただいてはいかがでしょうか?」

「それは確かに現場を見られれば、一目瞭然だろうけど・・・現場を見てやっぱり合わない、というようなケースもあるけど・・・」

「そこなんですけど・・・現場を見る時は、あくまでも受けるというのを前提にしていただかないと困るんですね・・・あくまで受ける前提でご覧になるか、やる意思がなければ最初から見学は無意味だと思いますよ」

「そこは考えどころだが・・・ところで前の人は、スキル不足で直ぐにNGという事だったけど、D社の求めるレベルがわからない」

「Bさんの話では、docomo側からは

『多少スキルが低くても、前向きにやっていくんだという気持ちがあれば大丈夫』

と訊いていたので行けると踏んだが、実際に入れてみたら思った以上に要求が高かった」

という事でした。

ただしにゃべさんの場合は、スキル的に先方がまったく問題ない、とも言っておりました」

「ふーむ」

 「それで、率直なところにゃべさんとしては、どうお考えでしょうか?」

 「今、話を聞いたばかりだけど正直言って、やはり今更何を言ってんだか・・・という気持ちかなー。まあ、そうした感情は別にしても前にも言ったように、あの後こちらの方も色々と事情が変わって来ているから、今、この電話で二つ返事でOK出来るという状況ではないのです」

実際あの後で、既に他の話が進行中の状況であった。

「ともかく、それの結果が出るまでは動き難く、また筋から言っても当然、そっちの方を優先して考えているからね。率直なところ、その話が上手くまとまらなかった場合にまだ要請があれば、改めて選択肢として考えるという程度かな・・・」

「なるほど・・・それはまあ、仕方ない事なんでしょうね・・・」

相手は明らかな落胆に、声を落とした様子だった。が、そう簡単に引き下がっていては、第一線の営業マンが務まるわけがない。

「ところで、その進行中の話というのは現状、どの程度まで進んでいるのかお聞きしてもよいですか?」

「まだどうなるか、サッパリ掴めない状況だね」

「なるほど・・・」

と、しばらく考えている様子だったが

「実はにゃべさんに考えて貰いたいのは、こっちの話は基本的に向こうから『お願いします』と言って来ているという、殆ど決定している話だと言う事です。その辺りのプライオリティとかを再考していただくというのは・・・?」

「しかしねー。既に動いている状況を、もう一度戻す事は難しい。蒸し返したくはないが、そっちの方は前にあんな経緯があったから、プライオリティとか言ったら、やっぱり進行中のものが先だな」

「確かに、今すぐに結論を出してくれというのは、無理だと思ってます・・・しかしこの件にしても、相手もいつまでも待ってはくれないですよ」

「そこまでして、こちらから頼む気はないから、向こうは向こうのスケジュールで進めていけばいいんじゃない?」

と電話を切ったまでは、それなりにサマになってはいたが・・・

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