「いやその・・・なんというか・・・うちの方にも昨夜、電話が入ったばかりでして・・」
「ほら・・・また嘘をついてるな。大方当てにしていたヤツが来ずに、代りってとこか・・・」
「実は・・・予定していた者が、今朝になって急遽キャンセルしてきまして・・・先方の担当者がその前に東京を出発してたもので、昼に名古屋に着いてしまわれるのです」
「面接は出ないこともないが・・・別の日ではダメなのかね?
こっちだって、急に言われても予定があるんだが・・・」
なにせ「Ciscoルータの設定」とあっては、万難を排しても行かなければならない。
「しかし今から予定をキャンセルしても、正午はとても無理だ・・・」
「何時くらいならば来られますか・・・?」
「12時半過ぎ・・・いや、13時近くになるな・・・」
「じゃあ、それでも構いませんから・・・出来るだけ早く来て下さい。先方には、なんとか待って貰いますので・・・」
「で、どこへ行けば良いの?」
「ウチの会社に見えますので、ここへ来て下さい!」
「ST社へ?
そりゃ気が進まんな・・・どこか外で会うというのは、ダメなの?」
「そこらへんはまあ何とか考えますので、ともかく近くまできたら電話をして下さい」
「しかし・・・確認しておくが、今日の予定を総てキャンセルして行くんだからな・・・また、いつもみたいないい加減な話だったら、今度こそは今までのようにはタダでは済まんが・・・その辺は、間違いないだろーね?」
「先ほども言いましたが、前回と同じUC社の担当者が前回の断りを踏まえて持ち込んできた話なので、間違いなくちゃんとした話です」
こうした経緯で、その日は大した用事もなかった事から、総てをキャンセルして面接に向かう事となった。
それなりに急いではみたものの、到着した時にはやはり13時近くになっていたが、Bの携帯に電話をすると
「今、前の人が面接中なので、少し待ってください。5分くらいしたら、こちらから電話をします」
「前の人だって・・・?
キャンセルしたんじゃなかったのかい?」
「いや、それとは別にもう一人いましてね・・・ともかく一旦切ります」
と、なにか慌てたように電話を切る。ところが、それから15分くらい待っても何の連絡もないのだ。それでなくともこれまで散々に前科がある事からも、とても信の置けるような相手ではなかっただけに
(これも、また騙しだったか・・・?)
と疑惑が頭を擡げ始めたのも、無理ないところだった。
さらに5分が経過したところで、いよいよ痺れを切らせて再度電話をしてみたが何度掛けても話中になっており、ようやく電話が繋がった時には疑惑とイライラは既に頂点に達していた。
「オイ、一体どうなってんだ?
5分後に電話すると言っておいて、全然連絡がないじゃないか」
「前の人の面接が長引いてまして、まだかかりそうなんですよ・・・もう少し待って貰えませんか?」
「もう少しって、もう随分待ってるよ。どうもインチキ臭いな・・・本当に東京のUC社の人間なんて来てるのか?」
「見えてますよ。今、面接中です・・・とにかく終わり次第、こちらから電話しますので・・・」
と、ここでも何故か、早く電話を切りたそうな感じなのだった。
「終わり次第って、何分掛かるかわからんし。アンタが早く来いって言うから急いで来たのに、こんなデタラメは話ってないんじゃないのか?
長引いてるなら長引いてると、なぜ常識的な連絡が出来ないのか・・・」
「あと、もう5分か10分くらいで終わらせますので・・・では・・・」
「本当にもうこれ以上、付き合いきれんぞ・・・5分経っても電話がなかったら、キャンセルする!」
最早半ば以上信用せずにネットCaféに篭っていたものの、遂にBからはなんの連絡もないままに陽が暮れていった。
これでこの案件は消えたも同然だったが、その日にそれから2度電話したものの、何故か話し中でもないのにサッパリ電話に出ない。本来なら相手にすべきでもないが、ひとこと言ってやらなければこのままでは腹の虫が収まらず、夜になってから再度電話をすると、ようやく相手が出た。
「オイ!
これは一体、どういうつもりなんだ?」
「え?
それは・・・何のことです・・・?」
「はぁ?
何の事だって、オイ・・・まったく、正気かい!
なんで連絡してこなかったかと訊いている・・・」
「それは、だって・・・アナタが怒って、もうキャンセルするといったんじゃないですか・・・」
「なんだって?
オレは『5分以内に連絡がなければ、キャンセルする』と言ったんじゃないか!
何のために予定を変更して出てきたのか、考えりゃわかるだろーが、このバカが!
じゃあ、こっちから電話しても、居留守を使って出なかった理由を言ってみろ!」
「アナタがキャンセルするって言うから、私の方は先方に謝ったりで、ついさっきまで大童だったんですから・・・居留守どころの騒ぎじゃないですわ・・・」
ともかくコイツはマトモな頭じゃないから、これ以上話しても時間と金のムダは歴然だ。
「しかしなあ・・・オマエくらい非常識なバカは前代未聞だな。Tも随分と酷いオッサンだと思ってたが、オマエはT以下だわ。
オマエには、これまでも散々に電話をして来るなと言ったし、どうも日本語が通じないようだから、もう着信拒否に入れて今後一切相手にせんことにする。
以上!」
こうしてサギ会社ST社と詐欺師T及びBとの関係が、ようやくスッパリと切れたのである。
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