香、香里、美佳と『B中』には才色兼備の美少女が多い。当然の事ながら、3人揃って男子生徒らの憧れの的であったが、トップ10が指定席の香、香里のコンビに成績では一歩譲るものの、逆に垢抜けた美貌では3人の中でも一番と目されるのが、この美佳であった。
「ふっくらとした丸顔」と「目がパッチリ」というカワイコちゃんタイプが好みのにゃべっちは、細面に切れ長の眼をした美形タイプ美佳よりは、もっぱら香や小夜子の方に熱を上げたていたが、大柄な体に早くも大人の色気を漂わせていた美佳は容貌も大人っぽく、香や小夜子とはタイプを異にした魅力的で気になる存在であったことは間違いない。ズバ抜けたアイドルは存在しなかった『B中』において、女生徒人気ベスト3を選ぶならおそらくこの3人で、或いは美佳が1番だったかもしれない。
美佳の実家は『B中』学校区の最も南方の外れに位置し、もう少しずれていたら真紀らと同じ『C中』学区に区分されてもおかしくないくらいの、微妙な立地であった。成績は、香や香里といった、にゃべっちとトップを争うほどまではいかないが、小学生時代から常にクラスでは3~5番手に位置しており、まずは優等生といっていいランクである。
逆に、香里と同様にスポーツの方は苦手だ。同じ長身ながら、細身で非力な感じの香里に比べ、美佳の方はボリューム系だけに力は強く体力はそこそこありそうだったが、いわゆる「どんくさい」タイプだった。
中学から銀縁眼鏡を掛けたために、より一層大人びたルックスにインテリっぽさの加わった美佳であったが、そうした外見とは裏腹ににゃべに熱を上げたために、嫉妬した(?)男子生徒らから「ムッツリナカジョー」などと、冷やかされもしたようだった。が、実際の美佳は「ムッツリ」どころか、かなりのユーモリストであった。
早くも大人びたムードで、他の小便臭い女学生らとは一線を画していた感じだった小学生の時は、もっと乙に澄ましていたイメージだったが、大きな体に似合わぬか細い声でよく喋るのは、かなり意外な感じがしたものである。前の年によく会話を交わした真紀と同様に、その知的レベルの高さが感じられる楽しい話相手でもあった。
席替えで、にゃべの前の席に来た美佳。小学生時代は、切れ長の眼がややきつい感じが好みではなかったが、いつの間にやら銀縁眼鏡に三つ編みというヘアスタイルに変身し、すっかりイメチェンに成功。柔らか味の出た本来の美貌が、男子生徒らの眼を引くことになった。
元々がサラリ系の香とは違い、外見からしてガリ勉タイプであることから、ルックスのわりにはイマイチ人気の盛り上がりのなかった美佳だったが、この変身と明るく饒舌な性格により一気に無口な香を凌ぐモテ女となった。
小学5年生の時に一緒に委員長を務めた時の気安さから話が弾んだが、席替えではどういうわけかサッパリ縁のない香とは対照的に、美佳とは数度の席替えで連続して近くの席になるといったこともあり、急速に親しみを増していく事に。
「それにしても、オマエがこんなに良く喋るとは・・・なんか小学校の時と、イメージが変わった」
と言うと
「だって、あの時は《神童にゃべ様》でオーラが出てたし・・・なんか雲の上をフワフワ歩いているようなコに見えたからね~。こっちからは、とても声なんて掛けらんかったし」
やがて時が経過するにつれ、美佳のにゃべを見る眼や態度に、ハッキリとある「色気」があからさまとなるに及び、一部の目敏い男子学生らから
「ナカジョーって、絶対オマエに気があるぞー」
などと、はやし立てられる事になった。
そんな波乱含みの状況の中で、2年生にとっての最大のイベントとなる夏のキャンプを迎えた。ムラカミ、マサ、オグリといった悪友どもから
「オイ、にゃべ!
キャンプを利用して、ナカジョーのヤロ~をモノにしろ。お膳立ては、こっちでやってやるぞー」
とお節介な「友情」で煽られ、すっかりその気に?
キャンプが日一日と近付くにつれ、噂を耳にしたか満更でもなさそうな美佳の態度に加え、美佳の親友の女生徒らも「私たちも、協力しようか?」などと囁かれ、次第に高揚していく。
「夜、にゃべがナカジョーのグループのテントを襲うぞ・・・」
といった噂がマコトシヤカに伝わるに及び、担任から
「皆、中学生としての自覚を持って、風紀を乱さぬよう・・・云々」
といった訓話も、盛んになされたが・・・結局、何事もないままキャンプは終了した ( ´∀`)タハ
0 件のコメント:
コメントを投稿