クラス一の美少女・美佳にすっかりメロメロとなったマチャ。が、肝心の美佳の方は、マチャにはさしたる関心がないのは明らかで、美佳が思いを寄せる相手は誰あろう、校内一の人気者であるにゃべである事は、常日頃の態度から誰の目にも明らかだった。
そうした状況の中、2年生最大のイベントとなるキャンプを迎えることとなり、見知らぬ土地の空の下でこの美男美女のカップルが、めでたく結ばれることになるのか、と好奇心旺盛な輩たちは固唾を飲んで見守っていたが、結局何の異変もないままに、2泊3日のキャンプは呆気なく終わってしまった。
勿論、この間もマチャの美佳に対する熱は、醒めるどころか日一日と募るばかりの様子で、席替え後に再び美佳の前になったにゃべの傍にやってきては、例によって美佳を意識しまくっての一人相撲が続き、相変わらず皆から冷やかしの対象とされていた。
当初は、なかなか刺激的だったこの冷やかしのお遊びも、1ヶ月も経つとさすがにつまらなくなってきた。
「なんか全然進展がねーから、面白くなくなってきたな・・・」
という、にゃべの意見に同意してみせたのはマサだ。仲間内では最も気の短い男だけに、遂に痺れを切らしてトンデモない暴挙に疾ってしまった。
「オイ、ナカジョー!
オマエはマサユキの事、どう思ってんだよ?」
「えっ?
なに、それ?
どういう意味よ・・・?」
「オイオイ、とぼけるなよな・・・マサユキは、オマエに気があるのはわかってるんだろーが」
「え~っ!
何バカいってんのよー」
とかなんとか惚けていた美佳だったが、結局
「別に、なんとも思ってないけど・・・それって、アンタたちが勝手に煽ってるだけでしょ」
と、あっさりかわされてしまった。
美佳にアッサリとあしらわれた腹いせからか、持ち前の悪戯心を起こしたマサ。マチャの不在時を狙い、教室の黒板に
マチャ失恋! (TーT)
と大書してしまったから、たまらない。何も知らず天下泰平で現れたマチャは、すっかりみなの爆笑を買い、哀れなピエロと化してしまった (ノ-o-)ノ ┫オリャ
「マサー、テメ~か!
こんなクダラン事を書きやがったヤツは。
こんなバカな真似をするヤツは、テメーしかいねーよな?」
日頃は、あまり怒ったことのなかったマチャも、これには遂に堪忍袋の緒を切って本気でマサに襲い掛かかった。
「元ガキ大将」本気のド迫力!
表情の引き攣りを抑えつつ、かろうじて薄笑い浮かべていたものの、マチャの万力でヘッドロック(頭部絞め)をかけられたマサの顔面はみるみる内に真っ赤に充血していき、ようやくにして開放された時のマサは哀れ涙目となっていた。
「チクショウー!
オイ、マサユキー、なんでオレばかり目の敵にするんだよー。卑怯者が」
腕力では太刀打ちできないマサが、マチャを罵った。
「最初から、テメーが一番煽ってたんだろーが。俺の目も節穴じゃねーんだぞ、コラ!
オレをナメんじゃねーぞ!」
と一喝するや、次にはイモに向かった。
「オイ、イモー!
オマエも、よくぞこれまでオレをバカにしてくれたなー」
と、イモにも同様にヘッドロックを見舞った。マサ同様、顔を真っ赤に充血させたイモだが、元々図体に似合わず温厚な性格だけに
「イテテテ・・・畜生め」
と大人しく苦笑いしながら無抵抗のまま。次のターゲットにされたシモッチは、最も身体が大きく力も強かっただけにしばらくは抵抗していたが、怒れるマチャのパワーに屈し、遂にヘッドロックをお見舞いされる。
「イテテテ。コイツ顔は笑っとるが、マジで絞めて来やがったぞ・・・」
とボヤキつつもマチャの気迫に圧倒されたか、大した抵抗もしなかった。
続くオグリは短気なケンカ屋だけに、あっさりとはマチャの手にかからず
「なんだテメーは、コノヤロー!
オレが何したってんだ・・・言ってみろよ、このー」
と、いきなり先制の張り手を見舞った事から、しばし火の出るような張り手合戦が展開され、みなア然として注目していた。両者意地で譲れぬ張り手合戦は、容赦なく何発も打たれ互いの頬が真っ赤になっていたが、最後にはさすが復讐の執念に勝るマチャに、強烈なヘッドロックをお見舞いされ
「イテーぞ、こらー!」
「どうだ!
まだ張り手合戦をやる気か?」
「もうええ加減、気が済んだろー」
さすがのやんちゃなオグリも、マチャのパワーの前にお手上げの態で、残るムラカミは、温厚な性格だ。
「待て待て!
オレは、何にも言ってねーぞ。
なぁ、マチャよ・・・みんなしらけとるし、少し落ち着こうじゃねーか」
と、抵抗の構えを放棄し説得に回り始めたのは、さすがに賢いところだ。マチャの方も
「クソっ!
さすがに5人目ともなると、もう力が入らんくなってきやがった・・・まだ肝心の首魁が残っとるから、温存しとかんとな」
とか言いながら、やはりムラカミには一目置いているせいか、手を出さずに終わった。
そして最後に残ったのは・・・
「オーイ、にゃべ~」
と、マチャが物凄い形相(笑顔)で睨んできた (/||| ̄▽)/ゲッ!!!
「オマエのために、力を残しといてやったぞ・・・ 黒幕は当然、オマエしかいねーよなー?」
「そうだ!
本当の黒幕は、コイツなんだぞー」
と狡猾なマサが八つ当たり気味にドサクサではやし立て、いよいよ絶体絶命・・・
(コイツめ・・・どの程度、本気でやるつもりか?)
と腹を決めかねていると、土壇場のタイミングで思わぬ方向から、よく通る凛とした声が・・・
「アンタたちー、うるさいったら!
子供じゃあるまいし、いつまでバカやってんの?
マサユキも、もうそんだけ暴れたら充分でしょ?」
声の主は、意外にも女子委員長の香。マチャの常軌を逸した狼藉に、眉を顰めてヒソヒソとやりだした女子生徒らの空気を察してか、或いは身の置き所のない美佳の心中を慮ってかは知るべくもない。
が、普段はこのように出張って来ることはおろか、殆んど存在感のなかった香のひと声だけに、この効果は予想以上に絶大だった。
「うむむ・・・しかし」
「残りは、にゃべをやれば気が済むんなら、さっさと片付けたら?
みんなの迷惑だから、次からは校庭かどこか教室の外でやってよね?」
という香の毅然とした怒声に
「チッ!
仕方ねーな。
そろそろ腕が痺れてきたとこだし、この辺で勘弁しといてやるか・・・」
さすがの怒れるマチャも、女子リーダー香の威厳に気圧されたか、或いは改めて自らの暴走振りに照れ臭くなったか、負け惜しみのひと言を残しながらも案外、あっさりと矛を収めてしまった。
まさに、鶴のひと声!
思わぬ香の「援護」のおかげで、間一髪のところで命拾いし内心ホッと一息を吐くにゃべに、執念深いマチャがさり気なく寄って来くると
「オマエには、後で特別にたっぷりお見舞いしてやるぜ」
と周囲に聞こえないような小声ながら、しかしドスの聞いた声で脅しに来た。
「いらんいらん」
が、結局、この出来事を機に一層親しさを増していった ( ´艸`)ムププ
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