2004/04/16

女たらし

 そうした楽しい日々が続くうち、クラス一人気のあった美佳が事ある毎に振り返っては、にゃべに話し掛けてくる。その大人びた、切れ長の視線の色っぽさに

(う~む、ナカジョーのヤツ、オレに色目を使って来てるな・・・)

と確信し

(こりゃ、どう対応したものかいな・・・)

などと考えるうちに、斜め前の席にいるお調子者のマチャの方が、美佳に相当に熱をあげているらしいのが、アリアリと伝わってきたのである。

「オイ、にゃべ~!
それでなー」

とかなんとか言いながら、なにかと話を仕掛けて来るとみせかけながら、定まらぬマチャの視線はにゃべと美佳の間を彷徨う有様であった。

こうして日を重ねるにつれ、マチャの美佳に対する熱はいよいよ高まる一方で、例によって

「オ~イ、にゃべー!」

と呼びかけながらも、話している最中は殆んど美佳の白い顔ばかりを窺っているマチャに対し

(アイツめー。
人をダシに使いやがるとは、ナメたヤローだ・・・)

と持ち前の悪戯心を起こしたにゃべは、悪友トリオのムラカミ&マサやイモ、オグリ、シモッチら親しい友らに

「マチャのヤツなー、近頃やたらとオレに話し掛けてるくるだろー。口は弁舌爽やかでも、眼は虚ろってやつでさ。ヤローの視線の先を追ってみな。ちょっと面白い見物だぜ・・・」

と、ほんの些細な悪戯心で煽ってみたところが、当のにゃべ自身すら予期せぬような、思わぬ大騒動に発展して行く事になってしまった。

この意味深な言葉に密かに皆が注視する中、何も気付かぬ鈍感なマチャは相変わらず、美佳の視線ばかりを意識し

「確かに本当だぜ。
マチャのヤロー、にゃべに話し掛けながら、ナカジョーの方ばかり意識して見てるじゃね~かよ、オイオイ」

と目論見通り、ワルどもの格好の餌食となったマチャ。が、自分が裏で笑い者にされているとは一向に気付く気配のない鈍感なマチャに対し、次第に業を煮やしていった面々は、例よって

「オイ、にゃべー」

が始まるや

「オ~イ、マチャ!
オマエ、どこ見て喋ってんだー」(マサ)

「目が虚ろだぞー、マチャー!
大丈夫かよー(イモ)

「オマエ、誰に話し掛けてんだ。このスケベ野郎がー」(シモッチ)

「オイオイ、この女誑しが。にゃべをダシに使うとは、とんでもねーヤローだな」(オグリ)

などと、こぞってボロクソに扱き下ろし始め、遠慮のない馬鹿笑いを浴びせかけていた(同時に、美佳の戸惑う様子を楽しむという、もう一つの目的があったことは言うまでもない)

 中でも、最も激し易い性格のマサなどは

「オイ、マサユキー!
もう見ちゃおれんぞー・・・そんな回りくどい事やってるなら、オレが代わりにナカジョーをクドいてやろーか」

などと、かつてガキ大将として威張り返っていたマチャを、この時とばかりドサクサで呼び捨てにして、ミソクソに扱き下ろして溜飲を下げている悪質さだった。

「ありゃ、ガラにもなく相当参ってるなー」(イモ)

「他の事は、まったく目に入っとらんからなー」(シモッチ)

「こんだけ冷やかしても、まだ気付かんとは… 信じられん鈍さだな・・・」(オグリ)

「ありゃあ思考停止ってヤツで、総てが上の空なんだろ」(ムラカミ)

「ホント、ショウモないヤツだ・・・あんだけ鈍くちゃ、まったく冷やかし甲斐がねーっつーか・・・」(マサ)

と、口々にマチャを罵る面々。

「だけどよー。ナカジョーの方は、どう見てもマチャには関心がねーみてーだな・・・」(シモッチ)

「ナカジョーは、マチャよりもにゃべに、気があるんじゃねーのか」(イモ)

「そうそう。
オレも、前から思ってたんだって。あのナカジョーのにゃべを見る眼だけは、ちょっと違うだろーって」(マサ)

「ほほぉ、そうなのかよ・・・で、にゃべの方はどうなんだ・・・」(オグリ)

「にゃべよ。この際だから、マチャに引導渡したるか・・・」(ムラカミ)

と、次第に話がややこしい雲行きになってきた。

「オマエら、ええ加減にせんかー。勝手に変な事に、決め付けるなよ」

「いや、ナカジョーは絶対、オマエに気があるぞ。なんなら、オレが確かめてやろうか?」(マサ)

と皆から詰め寄られる、思わぬ展開となり

「まあ待て待て。後からハシゴを外してやるにしろ、今は折角おもろいとこなんだし。もうちょい、マチャのヤローをオモチャにしといてやろうじゃねーか」

と当面はなんとか、逃げを打ったにゃべっちだったが (=°3°=)~♪ ピュー

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