掛け込んで来る様に出てくる第1主題、華やかな花が開くような第2主題ともに躍動的で、この2つの主題が競い合うように輝きを持って流れて行く。再現部では、ソロ・ヴァイオリンに絡む対旋律の美しさも聴きどころだ。最後はソロとオーケストラとが一体となり、華やかなクライマックスを築きあげる。
この『メンコン』は世界中の人々から愛されているが、特に地元のドイツでいかにこの曲が支持されているかは、次のエピソードを見ればよくわかる。第二次世界大戦中、ドイツ帝国に君臨していた独裁者・ヒトラーは、ご存じの通り大の「ユダヤ嫌い(恐怖症)」でであり、ユダヤ人画家の手による芸術作品などを片っ端から焼き払ってしまう、という狼藉を働いた。当然の事ながら、Classic音楽もその狂気の魔手から逃れる術はなく、ユダヤ系の音楽家たちは徹底的に排斥されるという悲運に直面した。中でも、ヒトラーが特に目の敵にしたのが、当時のドイツで有名だった「3M」、即ちメンデルスゾーン、マーラー、マイアベーアだった。
「これらの音楽家の上演は一切、罷りならん!!!」
という、なんとも非常識な通達が出されたのである。独裁者ヒトラーの巨大な権力に恐れをなし、それまでは羊のように言うがままになっていたドイツ人だったが、この通達には断固猛反対で団結した。
「我々の愛する『メンコン』を聴く事が出来なくなるなんて、アホ抜かせ!」
とばかりに『ヴァイオリン協奏曲 ホ短調』と、メンデルスゾーンという作曲者の名は伏せたまま、堂々上演がかけられる事になったのだ。無論、ヒトラーとて『ヴァイオリン協奏曲 ホ短調』と訊けば、かの有名な『メンコン』であると気付かないわけはない。が、さすがの独裁者も『メンコン』を愛するドイツ人の情熱には抗しきれず、遂には苦虫を噛み潰しながらも、知らぬふりを決め込んだとか。
これこそ音楽の偉大な力であり、そしてそれほどまでに民衆の心を虜にした、稀代のメロディメーカーたるメンデルスゾーンの偉大さを如実に物語っているではないか。
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