かつてサッカー少年だった頃、世間のサッカーに対する関心も今とはまったく比較にもならないくらいに低かった。オリンピックを凌ぐ「世界最大のスポーツ祭典」と言われる「W杯サッカー」でさえ、満足にテレビ中継されることもないままに、殆んど誰も見ていないような民放の深夜枠でひっそりと中継されていた、お寒い時代だ。そんな頃、初めて「W杯サッカー」を目にしたのである。
世界のサッカー大国同士がぶつかる夢の祭典。その魔法を見ているかのような高度な技術の応酬に、多感なサッカー少年の目がしっぽりと釘付けにされてしまった事は、言うまでもない。当時は昨今の地味な組織プレーよりは、スーパースター達の華麗な個人技が大いに持て囃された時代であり、キラ星の如きスターが次々に現れる黄金時代も、まだ続いていた。
記憶にある最初のW杯は、82スペイン大会だったと思う。この年の優勝候補に挙げられたブラジルには、かつて日本代表を率いたジーコを中心にトニーニョ・セレーゾ、ソクラテス、ファルカンという4人で中盤を構成する「黄金のカルテッド」が、またフランスも同じく中盤に「ナポレオン」と称されたプラティニを中心にティガナ、ジレス、ジャンジニという「華麗な4人」などMFが注目をされた大会だった。
勿論、エースストライカーも負けてはいない。アルゼンチンにケンペス&マラドーナ、西ドイツにはルンメニゲ&リトバルスキーと、実に錚々たる顔ぶれだ。 多くの日本人同様、鮮烈な記憶にあるのは「86年メキシコ大会」で見た、アルゼンチンの大エース・マラドーナだ。決勝で見せた「神の手」や派手な5人抜きの60mドリブルは世界のサッカーファンを熱狂させ「マラドーナのための大会」とまで言わしめた。続く「90年イタリア大会」では「皇帝」と言われたベッケンバウアー監督率いる西ドイツと、前回大会で世界一のスーパースターに伸し上がったマラドーナのアルゼンチンが決勝でぶつかるという、夢のカードが実現。マラドーナの華麗な個人技を、ベッケンバウアー仕込みの緻密な組織プレーで封じ込めた西ドイツが優勝を果たし、それまでの「スーパースターによる個人技サッカー」から「役割を分担した組織力のサッカー」へと移り変わる、時代の節目を象徴するような大会と位置付けられた。
そして「サッカー不毛の地」と言われ続けたアメリカで開催された「94年大会」は大いに注目を集めた。その前年の93年には、同じく「サッカー不毛の地」と思われた日本でも「Jリーグ」が大々的に旗揚げされ
(日本にも遂にプロ野球にも対抗しうるような、プロサッカーリーグが誕生したか・・・)
と、かつてのサッカー少年としては待望久しかった事もあって、大いに歓んだものだった。が、歓び勇んでTV中継に齧りついたJリーグ開幕戦は、それまでW杯ばかりを見慣れていた目には
「 ( ´Д`)はぁ?
これがサッカーだって?
こりゃどう観ても、サッカーとは違うスポーツにしか見えんぞー」
と、ものの3分ほどで最早観る気が失せてしまうほど、大いに失望したものだった。
かつて日本のプロ野球にやって来たメジャーのスター選手が、シーズン途中でアメリカへ無断帰国するや、自国のマスコミ相手に
「地球の裏側に『ヤキュウ』という、もう一つのベースボールモドキがあった・・・」
と扱き下ろした、という話を訊いた時は
(ふざけるな、この月給泥棒ヤロー!)
とムカついたものだったが、同じように欧米や南米辺りの関係者がJリーグを目の当たりにしたならば
「地球の裏側に『サッカー』という、もう一つのフットボールモドキがあった・・・」
と言わずにはいられない事だろう、と思わず納得してしまったくらいである Ψ(ーωー)Ψ
そんなだから「94年アメリカ大会」のアジア予選からは、かつてないほどに「W杯」が(こちらとしては、10年以上も遅れて何を今頃・・・という気分だったが・・・)注目を集め、世界一レベルの低いアジアだからなんとかあと一歩のところまで漕ぎ着けはしたものの「ドーハの悲劇」とやらで念願の初出場を逃した試合で、日本中が悲鳴を上げていた頃も
(ああ・・・なんてヘタクソな、ブサイクなサッカーよ・・・)
と一人激怒していたのであり、実のところは密かにW杯出場を逃した事で
(これで世界に恥を晒さずに済んだのは、かえって良かったじゃないか・・・)
とばかり、寧ろ幾らかホッとしていた気持ちもあったくらいで
(所詮、フットボールモドキのサッカーゲームは、日本国内だけでシコシコとやっているのがお似合いだ・・・)
などと悪態をつきながら、晩酌の友として観戦するのは専ら野球であった。
自分がやっている時にはまったく考えもしなかったが、Jリーグを観ていてつくづく感じたのは
(サッカーというのは、日本人にまったく似合わんスポーツだな・・・)
というものだ。あの安手の軽薄そうな化繊シャツと、ボクサーブリーフの出来そこないのような中途半端な丈のパンツの取り合わせは、どう見ても欧米人のような胴が短く足の長いスタイルしかサマにならないし、パーマの金髪を風に靡かせて颯爽と大地を駆け抜けるあの格好の良さに比して、日本選手の茶髪のパーマや金髪のロン毛から漂ってくるのは、どうにも不潔な印象ばかりなのである。
かつて某作家が「日本の男に絶対似合わない三点セット」として
・サングラス
・ヒゲ
・香水
を上げていたが、これを次の如くにアレンジしてみたい。
・レンズの上から眉が間抜けに飛び出しているサングラス
・コギタナイかインチキ臭くしか見えないヒゲとロン毛
・似非ドンファン気取りの安香水
どれもがヤクザ崩れか風俗店の呼び込みのような、どうにもイカサマ師臭いこの最悪三点セットがバッチリと似合うような日本人がいたら、是非ともお目に掛かりたいものだが、実はここに「サッカー選手」を付け加えれば「日本の男には絶対似合わない四点セット」が出来上がってしまいそうである。
とは言うものの、ここ数年は海外の一流クラブで活躍する選手など、世界で揉まれてきた世代が次々代表に送り込まれ、ようやく世界を相手にしてもそれなりにサマになるような格好が付いて来て「日本人サッカー選手」に対する当初の違和感も、徐々に薄れて来てはいるが (´ー`)y─┛~~
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