第7戦 ダイエー
6-2 阪神
2003年の鷹虎日本シリーズは、最終第7戦まで縺れこんだ末にダイエーの日本一で幕を閉じました。
4勝3敗という結果を受け、またしても評論家などは口を揃えて
「球史に残る名勝負でした」
とか言っておりましたが、ワタクシの見方はまったく違ったものであることは、このシリーズ日記でも散々書いてきた通りです。
全7戦を通じてのワタクシなりの印象は、正直両チームの力に思った以上の開きがあったな、というものです。
その根拠を示すのは簡単で、結果的に阪神が3連勝した《甲子園》でのゲームを含め、終始一貫して主導権を握りつづけてきたのがダイエーだった点は、誰の目にも明らかだったでしょう。
あの前代未聞の大応援団をバックに戦った《甲子園》でのゲームは、言ってみれば阪神は10人で戦っているようなものでしたが、そのアドバンテージがありながらも、いずれもが勝利の女神がどっちに微笑んでもおかしくないような薄氷を踏む勝利であり、逆に福岡ドームにおいては手探り状態だった初戦を除けば、いずれも阪神はダイエーに対し手も足も出ないような完敗に終わっています。
仮に、この両チームがまったく関係のない東京ドームや名古屋ドームでシリーズを戦ったなら、恐らくは4勝1敗くらいでダイエーがあっさりケリをつけていたであろう、と思われる程に歴然とした地力の差があったように映りました。
しかしながら、いかに阪神嫌いなワタクシといえど、この期に及んで今更、敗れた阪神を叩こうなどというほどの悪趣味はありませんし、それどころか逆に 「阪神が、こんなに弱いはずはないんだがなぁ」という思いでずっとシリーズを観ていたくらいで、シーズン中に見せていた本来の力を発揮したなら、内容的にももう少し互角に近い闘いが出来たはずなのに・・・などと歯がゆい気持ちもあったと言うのが本音です。
では、何故に阪神が本来持てる力を出し切れなかったのか。
星野阪神の敗因をズバリひと言でいうなら「伊良部との心中」といえます。
まずは、第2戦。
初戦の福岡で、接戦を演じた翌日のこの試合。
阪神とすれば、《甲子園》では3連勝が有力だけに、この福岡2連戦で一つをモノにしておけば、俄然有利にシリーズを展開していくことが出来た、大事なポイントとなるゲームでした。
その大事な第2戦において、先発した伊良部は序盤からメロメロに打たれ、KOされました。
そして第6戦。
《甲子園》でとにもかくにも3連勝を飾り、王手を掛けて迎えたこの試合は阪神が日本一になる、最大のチャンスでした。
にも関わらず、最もダイエー打線には通用しそうもない伊良部を投げさせた、星野の温情采配。
そもそも、伊良部が良かったのはシーズン前半だけで、後半は各チームから攻略されるなどすっかり弱点が曝け出されていたのだから、どう考えても当然研究済みであり、またセリーグ各チームとは比較にならないほど強力なダイエー打線に通用するはずはないのですが、案の定クラゲは再び火達磨となってしまいました。
戦術的な敗因はこれに尽きるとして、戦略的な大きな敗因としてはやはり、シリーズ直前という最もプレッシャーのかかる最悪のタイミングで「星野監督勇退」という、デリケートな報道が流れてしまったことに尽きるでしょう。
これまで日本一の経験のない星野監督にとって、日本一が悲願であった事は亡くなった奥さんの葬儀での
「最期に 『日本一になってください!』
と言って息を引き取りました・・・」
というあの弔問客の涙を誘った、星野監督自身の弔辞でも有名でした。
勿論、プレッシャーというものは時として、プラスとマイナスの両方に作用するものです。
が、常識で考えるなら、同じ
「星野監督を是非、オレたちの手で日本一にしてやろうじゃないか!」
と張り切るにしても、かつてのV9巨人のような百戦錬磨のツワモノ集団ならば疑いなく大いにプラスにも働きましょうが、何しろ前回優勝が18年も前と日本一経験者が殆んど皆無に等しい阪神選手達にとっては、余計な重圧以外の何物でもなかったであろう、と推測できます。
そして、これも繰り返しになりますが、試合をやっていない《甲子園》球場に詰め掛けて熱心に応援を繰り広げる阪神ファンの姿には、何度見てもさすがに込み上げるものがあります。
大阪(関西)人同士というのは大きな家族のように結束が固い、というのはワタクシのこれまでの経験則であり、また「デキの悪い子ほど、可愛いのが親心」とも言いますが、あの熱狂的なファンたちの阪神を見る目こそは、まさしく不肖のドラ(トラ?)息子を見守る慈母の如し、という感じがします。
ともあれ、今年1年間プロ野球界を熱くしてくれた阪神には、素直に感謝せねばなりません。
最後は残念な結果となりましたが、約7ヶ月・146試合の長き(短き?)に渡り、阪神ファンも18年ぶりに良い夢が見られたんじゃないかな(= ̄∇ ̄=)
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