さて、こうしたワタクシの「ラッキーボーイ」ぶりは、特に若い頃に限ったわけではなく今も続いているのだが、実はワタクシがこれまで仕事で渡り歩いてきた多くの現場において、面白い現象が起こっているのである。
それは
「ワタクシが関わった現場やプロジェクトが、ワタクシが抜けた後でトンデモナイ事になっているケースが多い」
という事実である。
さらには
「(たまたま)ワタクシの周囲に居た人間が、トンデモナイへまをやらかした」
というのも数々あったが、これもワタクシとは無関係なところで起こったものと思っている。
これは、決してワタクシが「疫病神」というわけではない。
ワタクシがいる時にトンデモナイ事態が起きているのなら、ワタクシ自身が「疫病神」扱いされても仕方がないが、現実はその逆でワタクシの在籍中は何の問題もなかった
(少なくとも、目に見える形で顕在化していなかった)のが、ワタクシが抜けた直後やしばらく経ってからボロボロになっているのだから、寧ろ「疫病神」の逆 の「福の神」と言うべきであろう ( *^艸^)ムププ
例えば、以下のような具合だ。
フリー記者時代のこと。同じプロダクションに所属していた先輩フリー記者Mが、某地方紙の特集紙面(1ページ分)に穴を開けた。記者にとって「紙面に穴を開ける(締め切りに間に合わない)」のは、万死に値する最悪の犯罪行為であり、これをやってしまったらどんなに優秀な記者といえど、どこからも依頼が来なくなるのは間違いない。しかも、囲み記事程度なら何とかごまかしが効くが、この場合は企画から総てを行う1ページの特集ページだから、どう埋めようもない。さらに最悪なことに、担当者は連絡がまったく取れなくなっていた。
この事件により、本来ならば2年くらいのキャリアを積まないと担当させてもらえない毎週1ページの特集ページを、記者デビュー後、僅か半年ほどだった20歳そこそこのにゃべっちが、大抜擢を受ける結果となった。
プロダクションの編集長は、大手スポーツ新聞社から天下ってきた人で、最初からこのKジイサンに才能を見込まれていたのが、若き日のにゃべっちである。余談ながら、Kジイサンが元いたスポーツ新聞の新編集長も
「にゃべっちの記事が、一番おもしろいよ」
と、当初から太鼓判を押していた。ワタクシ以外の3人は、いずれも記者歴10年以上で30代のベテランのはずだったが。
話を元に戻そう。
数日後に涙の謝罪に訪れたMに対し、社長から嫌な役目を押し付けられたK氏が引導を渡す。
「紙面に穴を開けるなど、もっての外だ。この噂が広まったら、幾ら優秀でも誰もオマエなど使わん。今回の件については、内輪で済ましてやるだけでも武士の情けだと思え」
「Kさん・・・(新聞社の編集長に)ボクと一緒に、謝りに行ってください」
なおも土下座をせんばかりのM氏に、K氏は
「オレは行かん・・・行きたきゃ、オマエ一人で行け。
オマエが行く事は止めはせん・・・オレは明日、別の男を連れて行くよ」
オマエが行く事は止めはせん・・・オレは明日、別の男を連れて行くよ」
と言った。
そうしてタナボタのような形で、地方紙の特殊ページを担当する事になったのがデビュー約半年後だったが、それまではスポーツ新聞のコラムの仕事しか貰えず、これだけではどう頑張っても月に5万程度の収入にしかならない。
「もっと仕事を出してもらわないと、やってけませんよ」
と顔を見る度に再三、社長に申し出ると
「今、ウチで出せる仕事は、それくらいしかねーんだ・・・」
と、知り合いでタウン誌を発行している、女社長を紹介してもらった。見せてもらったタウン誌は、予想外に小さな貧弱なものだったが
「近々、広告代理店が新たに発行する情報誌の編集を請け負う計画があるから、そちらの方に主力で参加してもらいたい」
との事だ。
「文章力を確かめなくていいんですか?」
と訊くと
「新聞で1ページの企画ものを書いている人なら、その必要はない」
との返事だった。時期はGWの直前。
「創刊号でGWの特集をするから『男のGW』というテーマで特集記事を書いてくれないか」
というのが、最初のオーダーだった。まだ記者デビュー3ヶ月ほどの駆け出しだったから、いきなりそんな難しいオーダーを受けて困ったが、考えた挙句に切り口が浮かぶと案外スラスラと筆が進んだ。
(これなら大丈夫だろう・・・)
と、女社長に見せると
「うーん、いいわね・・・大変、結構です。
やっぱり、アナタは文才があるわ・・・」
と褒められた。
女社長に才能を見込まれ、所属しているプロダクションの仕事があまりない事を伝えると、自社の社員になるかと問われた。この会社は元々、同じ地元のA市にあったが、女社長は名古屋で営業をする事が多いのか、中心街の栄のマンションの一室を事務所にしており
「今度、上飯田に事務所を構えることにしたから、この部屋を貸してもいいよ」
と奨められるくらいに、早くも見込まれていた。
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