迎えた三日目は再び京都へ戻ると、この日は前日から一転して朝から穏やかに晴れ渡った、絶好の花見日和となった。前年春に訪れてすっかり気に入ってしまった「天龍寺」の曹源池庭園を観ようと、再び嵐山へやって来た。渡月橋から望む嵐山の桜はさすがにまだ早かったが、所々が早くもピンク色に染まった遠景が春めいた雰囲気を醸している。橋のたもとの中ノ島公園の方は、ソメイと枝垂れが同時にほぼ満開を迎えていた。
さて、1年振りに訪れた天龍寺である。
(枝垂れは去年拝んだから、今年はソメイさんを・・・)
という期待に違わず、やはりここでもソメイと枝垂れがほぼ同時といった感じで、満開の見頃を迎えていた。この上で、曹源池庭園の借景である嵐山の山桜までが満開ならば総て言う事なしというところだが、さすがに遅咲きの山桜だけはそうはいかず精々三~五部咲きといったところだったか。それでも、本来なら枝垂れはソメイに比べれば半月くらいの遅れが普通だから、こうしてほぼ同時に見頃を迎えてきているのは、数十年に一度あるかないかという僥倖と言えるだろう。しかも、この日はポカポカトした陽気にも恵まれ、自然と弾んでくるような足取りでノンビリと散策を楽しむ事が出来た。
こうして午前中はまったりした後、午後からは蹴上の「南禅寺」へ移動する。こちらは秋の旅行以来で、前回は赤く色付いていた境内の木々が、すっかりピンクの若やいだ感じにお色直しを終えていた。改めて三門に上がり
(絶景かな!)
と大見得を切った後に、前回は見逃していた日本庭園へと足を運ぶ。
《代表的な禅院式枯山水の庭園として有名で、清涼殿、庭園、借景の羊角嶺大日山の山並みがよく調和して、優雅枯淡であるとされる》「虎の子渡し」を堪能する。寺社拝観を重ねるに連れ最初は有名どころを見物し、次に訪れた時は前回見逃したり手の廻らなかったところを改めて観賞する。そして次には、大寺院の周辺にひっそりと佇んでいるような塔頭(大寺院の敷地内にある小寺院や別坊。脇寺)にも足を伸ばしていくというスタイルがいつの間にか定着し、ガイドブックなどには載っていないような名もない小さな塔頭寺院の中に、素晴らしい庭園が観光客の目に触れずに、ひっそりと佇んでいる事を知っていくのであった。
この年の花見最終日となる4日目は、再び岡崎コースとした。考えてみれば、これまで金閣寺には何度か足を運んだが、銀閣寺の方はどういうわけかサッパリ縁がなかった。やはり、何と言ってもイメージ的に金閣寺に比べインパクトが弱いせいもあるが、雑誌で見て以来あの銀沙灘と向月台の庭園は是非ともこの目で直に観てみたいと強く願ったものだったが、ようやくこうして願いが実現した。
<慈照寺(じしょうじ)は、京都府京都市左京区にある東山文化を代表する、臨済宗相国寺派の寺院(相国寺の境外塔頭)である。正式名は東山慈照寺で、山号は東山(とうざん)、開基(創立者)は室町幕府8代将軍の足利義政、開山は夢窓疎石とされている(夢窓疎石は、実際には創建より1世紀ほど前の人物であり、このような例を勧請開山という)。
足利義政が造営した楼閣建築である観音殿を「銀閣」と通称し、観音殿を含めた寺院全体を「銀閣寺」と通称している。この通称名は、近世の名所案内記などですでに使用されている。なお、金閣と通称される鹿苑寺舎利殿には金箔が貼り付けられているのに対し、銀閣と通称される慈照寺観音殿には銀箔は使用されていないが、全体に黒漆が塗られていたと考えられている。なお、修復に際し黒漆を再現するべきか、現在の木目をそのまま生かすかで、議論が分かれた。
平成20年2月から2年間の予定で修理中であり、この間は銀閣そのものは見られない(平成20年7月現在、骨組みと屋根の見本は見られる)。室町幕府8代将軍足利義政(1436 - 1490)は、1473年(文明5年)、嗣子足利義尚に将軍職を譲り、1482年(文明14年)から東山の月待山麓に東山山荘(東山殿)の造営を始めた。この地は、応仁の乱で焼亡した浄土寺のあったところであり、近代以降も左京区浄土寺の地名が残っている。当時は応仁の乱が終わった直後で、京都の経済は疲弊していたが、義政は庶民に段銭(臨時の税)や夫役(ぶやく、労役)を課して東山殿の造営を進め、書画や茶の湯に親しむ風流な生活を送っていた。
造営工事は、義政の死の直前まで8年にわたって続けられたが、義政自身は山荘の完成を待たず、工事開始の翌年である1483年(文明15年)には、ここに移り住んでいた。東山殿には会所、常御所(つねのごしょ)などの大規模な建物が建ち、足利義満の北山殿(後の鹿苑寺)ほどではないが、ある程度政治的機能も持っていた。ただし現存する当時の建物は、銀閣と東求堂(とうぐどう)のみである。1490年(延徳2年)2月、同年に死去した義政の菩提を弔うため東山殿を寺に改め、相国寺の末寺として創始されたのが慈照寺である。
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