ヴァルプルギスの夜の夢(魔女の饗宴)
「ヴァルプルギス」とは、魔女や魔物が年に一度集まる祭典の事で、前の楽章の最後で処刑された芸術家が、魔女達の饗宴に列席するところからという舞台設定になる。
鬼才・ベルリオーズは、コル・レーニョ奏法(ヴァイオリンの弓の木の部分で、弦を叩く)を考案するなど、それまでの作曲家が到底考えもしなかったような楽器奏法を独断で編み出していったが、このコル・レーニョ奏法では、あたかも魔女や魔物たちが徘徊するような、薄気味の悪い妖しげな世界のムードを創り上げる事に成功している。
これまでに、繰り返し何度も出てきていた美しい「恋人の旋律」は、ここでは一転して不気味でグロテスクなものにデフォルメされて、繰り返し登場する。全編これ狂気に満ち溢れた音楽であり、また作曲家のオーケストレーションの達人ぶりを充分に堪能できる色彩感に溢れている。
《ベルリオーズは、楽器を演奏することができませんでしたが、当時60人を超えることが滅多になかったオーケストラを150人もの規模で編成し、ヨーロッパ中を驚かせました。
当時の交響曲では、全く見られない楽器とその編成数が記されています。その概要は以下の通りで、どれもが当時の常識を大幅に覆すものでした。
木管楽器群:イングリッシュ・ホルン、小クラリネットの交響曲史上初の使用、4本のファゴット(当時は2本以上使用されなかった)
金管楽器群:コルネットの交響曲史上初の使用、2本のチューバ(交響曲史上初の使用、2本は現在もまれ)
弦楽器群:各楽器数の指定(しかも数は、当時の標準数の約2倍弱!)、コル・レーニョ(管弦楽史上初、弓の木の部分で弦を叩く奏法)
打楽器群:奏者2人以上を要するティンパニ(当時は一人だけが普通)
その他:2台のハープ、鐘の交響曲史上初の使用
ベルリオーズは、当時の管弦楽法の第一人者でした(特に1844年の彼の著書「近代楽器法と管弦楽法」は、全世界の後進作曲家に多大な影響を与え続けました)。それだけに彼は演奏会場での音の効果やバランスに、もの凄い「こだわり」を持っていました。また、当時のヨーロッパ(特にフランス)では工業技術の進歩がめざましく、それらを駆使していろんな管・打楽器が改良されており、これらの技術革新がベルリオーズの「先進的な」管弦楽法の助けとなったのです。
※楽器を演奏できなかったのに、よくぞこれらが出来たものだ。
これらの大編成管弦楽と斬新なまでの楽器使用法は、後の世代の作曲家に多大な影響を与え、特に交響曲の世界では有名なところでマーラーが大編成管弦楽と、音の効果やバランスに対する配慮(総譜に書かれた細かい注釈)という点では、最も色濃く影響を受けた作曲家と言えるでしょう。
出典 http://kcpo.jp/info/35th/genso0.html
0 件のコメント:
コメントを投稿