第2楽章「舞踏会」
恋の夢が叶わぬままに、アヘンに溺れ捨て鉢な気分で舞踏会に列席すると、そこに例の「恋人の旋律」が優雅に現れた。思わぬ場で「再会」した恋人が、見知らぬ男と楽しげにワルツを踊っている現場を目撃する。思わず我を忘れた芸術家が、舞踏会場から逃げるようにして遠ざかっていく様子を描写したのが、この第2楽章である。
交響曲の中にワルツを入れるというのは、当時としては甚だ常識外れであった。こうしたところなども、形式には捕われず自らの感性に忠実に新しいものをも積極的に採り入れていくという、ベルリオーズらしい型破りな冒険心が如実に垣間見える。
「病的な感受性と燃えるような想像力を持つ若い音楽家が、恋に絶望し、発作的に阿片を飲む。麻薬は彼を死に至らしめるには弱すぎたが、彼を奇怪な幻想を伴った重苦しい眠りに落とし込んだ。
彼の感覚や情緒、記憶は彼の病んだ心を通じて、音楽的な想念や心象に変えられた。
恋人ですら一本の旋律と化し、絶えず彼に付きまとう固定観念(イデー・フィクス)のような存在となる」(1855年改訂時、幻想交響曲の楽譜に記載された「前書き」解説より)
上記の「前書き」でも分かるように、幻想交響曲の成立には、これらの2つの(熱狂的とも言える)恋とその破局が母地となっており、作曲が同時並行に進められていたのは確かである。
また彼の父親が医師であり、持病であった胃疾患(神経性胃炎、胃潰瘍?)の鎮痛のため、強力な鎮痛作用を持つ阿片を常用していたことから、阿片の副作用の幻覚作用などについても、かなりの知識を持っていたことが伺える。
ベルリオーズ自身も、腸神経痛(過敏性腸症候群?)と躁鬱症が持病だったため、これらの緩和のために若い頃から阿片を使用していたのかもしれない。
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