地区大会で、優勝候補の筆頭に挙げられていた怪物ドージマ率いる『A中』との血の雨降る死闘を制し、遂に念願の県大会出場権をもぎ取った『B中』サッカー部。続く県大会でも地区優勝の勢いは衰えることなく、並み居るライバルを次々に撃破し、いよいよ「全国大会」が目前にちらついて来た。
「これは『B中』の歴史に残るような快挙になるかも知れんぞー。オマエらの力なら、絶対に優勝も出来るはずだ・・・」
若きガンゾー監督も思わぬ快進撃を目の当たりにし、顔を真っ赤にして相当に興奮気味だ。約束どおり『A中』のキャプテン・ドージマばかりか、チームメイト数人も応援に駆けつけてくれていたのには驚いた。
「オオ充分、堪能させてもらってるぜ。サッカーをこんなに楽しんで観るのって、生まれて初めてだよ。あー、サッカーって、本当におもしろいなー」
「勝て」とか「頑張れ」というような、押し付けがましいセリフが一切出てこないところが、やはりドージマらしかった。
最大のヤマ場と目された準々決勝の相手は、優勝候補筆頭にその名が挙げられる強豪校。
「この相手に勝てば、優勝したようなもんだ・・・次の事は考えず、死ぬ気でいけー!」
かつて『A中』時代に、県大会に進出した経験を持つというガンゾーは、今にもグランドに飛び込んできそうな勢いである。そんなガンゾーの執念が乗り移ったか、キックオフ早々にゃべ得意の速攻で、先制のゴールが綺麗に決まった。
「さすがは、にゃべ!
この試合もらったーぞー、イケイケー!」
ガンゾーを先頭に、ベンチのボルテージも最高潮に達したが、さすがに相手は強豪として揉まれてきた百戦錬磨のチームだけに、やはり底力が違った。
時間の経過とともに、ジワジワと地力を発揮してきた相手に押され始めると、後半は防戦一方のツケからディフェンダーの足が止まり始め、なす術もなく逆転を許したところで、終了のホイッスルが虚しく響き渡った。
結果は、昨年の『A中』と同じ準々決勝敗退。強豪相手に惜敗は大健闘とはいえ、目標だった決勝へのキップを逃し中学サッカー有終を飾れぬまま、クラブを卒業する事となった。
「いいゲームを楽しませてもらったよ」
と、ドージマから労われたが
「チクショウ! このチームなら、絶対優勝できると思ったのにー!」
「しゃーねーよ。勝負は時の運もあるし、済んだ事はもう言いっこなしだ・・・」
などと、悔しさの中でも健闘を称え合う仲間たち。
「来年からは皆バラバラになるが、それぞれの高校で国立(全国大会)を目指して、頑張ろうじゃねーか!」
というイモ主将の挨拶で、激しく燃焼した3年間の活動にピリオドが打たれた。
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