『B中サッカー部』といえば、2年生からレギュラーを張るにゃべとイモを中心に、前年度は地区大会準優勝の好成績を収めた。決勝では宿敵である『A中』の前に「0-5」と、まったくいいところのないままに一方的に敗れたものの、その後の長野夏季合宿を通して戦力は目覚しくアップし、いよいよ中学最後の大会を迎えた。
「今年こそは、県大会優勝だー」
「そうだ! なにがなんでも『A中』を倒すぞー!」
とイレブンの意気は、最高潮に達していた。
イモ主将、にゃべ副将を中心に非常に良くまとまり、地区大会優勝は決して夢ではないと、にゃべ&イモのフォワードコンビも密かに胸算用していた。
大舞台には滅法強い目立ちたがり屋のにゃべは、初戦から絶好調だ。ドリブル、ボレー、ミドル、ヘディング、オーバーヘッドの5種類に及ぶ多彩なシュートで、夢のダブルハットトリック(6得点)の快挙を達成するや、神懸かりのスーパープレーを連発し順調に勝ち上がっていく。もう一つのブロックでは、やはり「ガチガチの本命」との呼び声が高かった『A中』や、あのゴトー主将率いる『C中』が、ともに圧倒的な強さを見せつけていた。
この年も、優勝候補筆頭に挙げられていた『A中』は、過去には全国大会にも出場した事のある地区きっての名門である。2年前には『B中』が優勝したが、この5年間で3度の優勝という圧倒的な戦績だ。昨年も猛威を振るったFWのうち、エースのクロガミは卒業していなくなったものの、もう一人のドージマは昨年のクロガミを凌駕するような、恐るべき天才ストライカーに成長していた。
このドージマは185cm近くあろうかという長身と、中学生離れのした素晴らしい体格だけでも脅威だが、その長く逞しい右足から放たれるシュートは強烈かつ正確無比であり、大会出場選手の中でも図抜けた存在であろうとは、誰の目にも認められていた。
一方、にゃべとは因縁浅からぬゴトー率いる『C中』も、負けてはいない。前年に続きエースのゴトーを中心に、チーム全体が非常に高いレベルで纏まっていたし、前年は3年生を欠いた陣容で苦戦を強いられた『C中』だったが、この年は逆に苦労を重ねてきた経験豊富なメンバーが中心となり『B中』とはほぼ互角の戦力と評価出来るくらいまで、充実して来ていた。
この『A中』、『B中』、『C中』、そしてA市以外の地区では、最も戦力の充実していると見られた『F中』と『K中』の両チームが並んで、上位候補の一角に挙げられる。
さて、そうした情勢で迎えた準々決勝。まず、前回優勝の『A中』がエース・ドージマの2発で勝つと、続いて『B中』も順当に勝利を収める。ともに優勝候補の一角に挙げられていた『F中』と『K中』の直接対決は、エース・コジマの活躍で『F中』が勝利を収め、最後にゴトーがハットトリックを決めた『C中』が快勝した。
こうして「5強」の内の4校が評判通りの強さを見せ、いよいよ準決勝を迎える。
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