2004/06/20

一時帰郷(東京劇場part6)


 出発数日前に、転職サイトに公開している公開経歴の住所を《愛知県xx市》  から《東京都江戸川区(仮)》(ホテル所在地)に変更したら、その日のうちに3件ものスカウトメールが舞い込んで来た。

一週目の経過を受け、客先面接とスカウトメールへの対応が主となった二週目は、渋谷→目黒不動(月)、大崎→保土ヶ谷→武蔵溝の口(横浜=火)、吉祥寺→さいたま新都心(水)、幕張(木)、渋谷(金)と郊外を中心に廻る事になった。無論、観光などに費やしている時間はないものの、それでも幕張の「WBG(ワールドビジネスガーデン)マリブxx」の高層階にあるオフィス応接室の総ガラス張りの窓から望んだ東京湾と人口浜の美しさには、心が癒される気がした。

そんなこんなでともかくも日程を終え、帰路につく新幹線の車中にあった。いつものように、チケットショップで買って来たビジネス指定券でのぞみに乗車する。窓側と三人掛けの席の真ん中は圧迫感を感じるため、これまたいつものように通路側の座席を取る。周囲の席もサラリーマン風ばかりで、通路を挟んだ隣も出張帰りらしき二人連れだったが、これがいい歳の割りになんとも落ち着きがない。席に着くなり、水割り用の氷の入ったカップとオールドのポケットビン、そしてビールを取り出すや小さなテーブル狭しと並べて、やおら弁当を食べ始めた。

新幹線に限らず、こうして列車などに乗っていると、どういうわけかワタクシの隣には必ずといってよいくらいに、おかしな輩が来る事になっているのである。さて、この時も顔を赤らめてつまらぬ論(?)を闘わせている二人連れに鬱陶しさを感じながらも、そ知らぬ顔で雑誌を読んでいると、車内販売のワゴンを押しながら若い姉さんがやって来た。

(ビールでも飲むか・・・)

と思いながら待っているうちに、ワゴンが目の前にやって来たところで嫌な予感が的中した。

ソワソワとして、落ち着きのなかった例の宴会野郎が「すいませーん」と声を掛けながら手を挙げた拍子に、水割りを並々と注いでいたカップを手で払ってしまったらしい。一瞬にして通路一面が、零れた液体で濡れた。

(やっぱり、ドジをやりやがったか・・・)

「すいません、すいません・・・」

と平身低頭の宴会オヤジに対し、ワゴン嬢は

「大丈夫ですか・・・? 少々お待ちを・・・」

と優しい気遣いを見せる。

しばらくすると、雑巾を持ったワゴン嬢は床に屈み込んで這い蹲るようにして処理を始めたから周囲の注視を集め、さすがにバツが悪くなった「犯人」の宴会オヤジも恐縮したテイで、一緒に拭き掃除を始めた。数分間、手を休めることなく献身的な姿勢で処理をしたワゴン嬢に感心したワタクシは、彼女に声を掛けた。

「わてもビールが呑みたい・・・」

 結局この2週間弱に渡る東京での活動で、使ったお金が約20万ほどにものぼってしまった。なんといっても、宿泊費用が大きい。割安のウィークリー・マンションは、検索しているうちに沢山あり過ぎたのと、手続きなどの面倒さから嫌気がさして結局ビジネスホテル某に泊まったのだったが、これが一泊辺り7000円近く掛かったから、これだけでもトータル8万ほどになる。

これでもインターネット接続の環境があるホテルとしては安い方で、関西旅行などでも何度も利用してきた馴染みのあるホテル(東横イン)という事で大して考えもなく決めたのだった。ダブルベッドを使った部屋は比較的広く、ネット環境も光接続で持参したのが新品のPCとはいえ、自宅の時の25MBを上回る35MBくらいは平均して出ていたから「高速接続」の看板に偽りはなかった。

立地的には駅幾つかで千葉という都内の外れとはいうものの、それでも中心部の大手町などへは10分強だからまずまずだ。また駅からホテルまで、歩いて5分程度の道程がアーケードを連ねた商店街になっており、食べ物屋にしても「オリジン弁当」を始め「てんや」などは幾つもあったから、困る事がなかった。

コンビニも510分のところに45件あって「マルエツ」というダイエーもどきのスーパーもあり、生活するには便利な場所である。

メトロなどで使うカード「パスネット」は3枚(9000円)使い、JRの「スイカ」のチャージが5000円分。東海道新幹線の往復チケットを合わせると、35000円である。これは総て、初めての東京での求職活動で必要な分だから、仕方ないが・・・

と、ここまで読んできて「何だ、肝心な事が書いてないじゃん!」という人も少なくない事だろうが、幾らなんでも本来の目的を忘れてスーパーやコンビ二巡りをしているほど間抜けではないので、やる事はしっかりとやって来たのである。ただ単に、結果が伴わなかったのみで・・・

具体的には受け入れ体制は貰ったものの、こちらから断ったものが数件。相手企業からNGを出されたものも数件。言うまでもなく後者の方が多いのは、これまでの経験値に比して高いレベルにターゲットを絞ったためである事は、最初にも触れた通りである。

客観的には2週間弱の無駄と、20万弱の大枚をドブに捨てたように移るかもしれないが、実際はそうではない。この活動は表面的には一旦ピリオドとなったものの、もっと深い階層で密やかに進行していくものであろうと期待していたのだ。

どんな花でも種を蒔いて直ぐに実がなるというものではないし、企業などでも借金を背負って先行投資をしておいてから、徐々に利益を上げて回収していくのが常識であるように、今回の投資は必ずや先々何倍にもして回収するつもりである事はいうまでもない。

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