2004/06/23

モーツァルト セレナーデ第9番『ポストホルン』(4)



 17世紀頃には、ニュルンベルクのトランペット制作者の徒弟は、その楽器を作ることをまず最初に許されたと言われる。初め、ポスト・ホルンは管の長さが短かく1重程度しか巻かれていなかったため、第1倍音と第2倍音を用いたオクターヴの動きしかなかったが、管の長さが長くなり第6倍音程度まで出せるようになって、様々な音型が生まれるようになった。このポスト・ホルンを用いた有名な曲に、モーツァルトの「セレナード」K.320がある。

1800年以降ドイツとオーストリアでは、共通の調子としてヘ調と変ホ調が用いられた。またオクターヴ信号は曲から消え、普通の楽器と同様の音型が演奏されるようになる。

F.グンベルトの「ポスト・ホルン教本 POsthorn-Schule」から、ハイニッツによって再編されたプロシアの信号ではgc''の間の音が用いられている。 

19世紀半ばからはヴァルヴ付きのポストホルンが現れ、マーラーの交響曲第3番などでも使用された。また、19世紀のドイツでは移調のための穴を持つものもあり、それを開けた状態にしておくと音程を4度上げることができ、綺麗な音を出すことができるようになった。イギリスではポスト・ホルンは環状のものから直型のものに変わり、最初は短かったものの段々と長くなっていった。調子は変イ調で、コルネット奏者の都合に合わせられた。

 セレナーデといってもかわいらしいものではなく、フル編成のオーケストラで7楽章構成なので、交響曲の1個半以上のボリュームの聴き応えのある曲だ。

モーツァルトの管弦楽の集大成とも言えるこの曲だが、残念ながらあまり知られていない。2つのメヌエットを含み、さらに2つのコンチェルタンテ楽章を持っていることは、当時のセレーナードの慣習である。ニ短調の表現的な緩徐楽章を加えて烈しい第1楽章と、交響曲的なフィナーレをそたえたこのセレナーデは、当時のモーツァルトのスタイルを代表する作品のひとつと言える。

なお、第2メヌエットの第2トリオで、駅馬車に用いられたポスト・ホルン(コルネ・ドゥ・ポスト、コーチ・ホーン)が使われていることから、この曲は普通「ポスト・ホルン・セレナーデ」と呼ばれている。

5楽章は、モーツァルト自身も器楽作品では、そんなに多くは書いていない短調の緩叙楽章だ。セレナーデという機会音楽で、このような深刻な楽章を創ってしまったモーツァルトの意図は不明ながら、この楽章単体で聴いても聴き応えのある悲しみに彩られた傑作と言える。
出典 http://chichian.com/

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