『H小』転向後、知らない連中ばかりの中ですっかり「神童」に成りおおせた(?)ゴトーにとって「にゃべっち」という存在は、あまり思い出したくもない苦い過去であったに違いない。などと忖度したものの、そんな事とはツユ知らない真紀が何かの折りに、ご丁寧にもゴトーに『B小』時代の事を確かめてきたらしい。
「この前、ゴトーと廊下であった時に、にゃべの事を訊いたよ。
『オーミヤ!
オマエ、アイツと同じクラスかよー」
最初は、なんかビックリしてたみたい。
『小さい頃は、よく遊んだぜ』
なんて笑ってたけど」
ムラカミにも、ゴトーの話をすると
「ホー、あのゴトーだったのか・・・オレもあの変な名前に、どーも憶えがあるとは思ってたんだがな・・・」
「そうそう、知らない間に『B小』からは消えていたと思ったが」
と2人で顔を見合わせたほどで、3年生の時に途中で転校して行った経緯すら、ろくろく思い出せない始末だった。
それはともかくとしてその日、改めてサッカー部でゴトーの姿をしげしげと観察し
(これが、あのゴトーとは・・・やっぱ、どう見ても別人だよ・・・)
と思わず見違えて、これまで1ヶ月間気づかなかったのも無理はない。
かつて、にゃべっちやマツモトらに虐められていた頃のひ弱な面影は、すっかり跡形もなく消し飛んでいたのである。
「オイ!
オマエって、以前『B小』にいたゴトーだったんか?」
ヾ( >▽)ノ彡☆
今頃、やっと気付いたか・・・オマエらしーよ」
「オイオイ・・・オレの事に気付いていたんなら、声くらいかけてくりゃ良かったのに・・・」
「いつ、オマエがオレの事に気付くかと思ってなー。ぎゃははは」
と、ゴトーはさも愉快そうに笑っていた。
翌日、改めて真紀に
「オイ、オーミヤ!
やっぱり、同じサッカー部にいたヤツだったぞ、ゴトーは。
いや~、昨日まで全然わからんかった (ノ∀`)アヒャヒャヒャヒャ」
「えっ、マジ?
それって、ちょっと酷くない・・・?
ゴトーも、内心ショックだったろうねー」
「ホント、このコったらズボラなんだからねー。
信じられんわ、それ」
と、また千春が割り込んで来た。
「そうじゃねーってば。本当に同じヤツとは思えんほど、変わってたんだって。それで『H小』では、そんなに優秀だった?」
「ううん、そりゃもう、凄く優秀だったよ」
と、真紀はべた褒めなのである。
そうは言われながらも、かつてのイメージが強いこちらとしては、どうしてもあのゴトーが「神童」とは信じ難いところではあったが、さりとて他の誰でもない真紀の言うことだから、これまた真実味は充分である。
それよりなにより、サッカー部で見る実物のゴトーがあの変身ぶりだから「神童」の噂もあながち「デタラメ」と決め付けることは出来ぬ。なんとも狐につままれたような、奇奇怪怪さであった ( ̄_ ̄;) うーん
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