2004/02/26

ライバル激突(運命の体育祭part5)

にゃべの場合
 背の低いものから順に、次々にスタートをしていく中、後ろの方での出番となるにゃべらには、嫌が上にも緊張感が高まってきた。6組の応援席には、少し前までそれぞれ、にゃべとオグリのガクランを羽織った真紀や千春らが声援を飛ばす姿が見えていたはずだが、いつの間にやら二人の姿が消えていた。

 (ハテ?
あいつら、どこへ消えた・・・?)

などとボンヤリと考えているうちに、いよいよ順番が巡ってきた。

あの皆が緊張している、スタートラインの独特の雰囲気は嫌いじゃない。この日もいつものようにリラックスして、良い意味での心地よい緊張感に包まれながら横目で確認したゴトーの方は、ちょっと強張ったような表情だ。

「アイツめ、緊張してやがるわ・・・」

と、腹の中で嘲笑ってやった (`m´+)ウシシシ

「いざ、勝負だ!」
「おう、望むところよ!」
バチ (#--)……(▼▼#) バチ

と、レーンの離れたライバル二人が目で火花を散らし「パーン!」という景気の良いピストルの音とともに、6人が一斉にスタートを切った。

快心のロケットスタートを切ったこっちは、いつものように風を切ってトップを走る。どちらかと言えばスタートは苦手だったが、この日は珍しいくらいに最高のスタートが切れた。

(よし、最高のスタートだ。
これは間違いなく、勝てる!)

と確信を持った・・・  が、100m近くのカーブを曲がる直前に、後方にピッタリと付いているゴトーの姿が目に入った。

(ウヌヌ・・・ヤツも、いいスタートを切りやがったか・・・)

と、一瞬雑念が脳裏を過ぎってしまった。そのせいかコーナーでやや膨らんでしまったが、カーブを曲がりきってホームストレッチに入った前方の視野には、無論前を行く人の姿とてない。視界の先にあるのはただ一つ、確実に迫ってくる白いゴールテープのみである。

(よし。
この勝負も、貰った!!)

と、勝利を強く意識した瞬間だ。場内に一際大きな歓声が湧き上がったと思うや、いつの間にやら見覚えの肩幅の広い大柄なシルエットが、隣に肩を並べて来ていたではないか・・・  ( ̄ェ ̄;) エッ?

まさかまさか・・・

皆が最後の気力を振り絞る、ホームストレッチ。3位以下を大きく引き離して、因縁のライバルがあたかも仲良さげに肩を並べたまま、並走を続けた ヽ(′▽`*)(*′▽`)

ゴトーの場合 
 スタート前はちょっと緊張したが、例によって緊張とは無縁のようなアイツの澄ました横顔を見て、ムラムラと闘志が湧いてきたよ。昨日に続いて、いいスタートが切れたぞ・・・と思ったが、この日はアイツのスタートの反応が、信じられないくらい凄かった。ピストルの音を聞いてから飛び出したんではなく、ピストルのタイミングに予測をつけて飛び出したような、フライングすれすれの奇跡のようなスタートだったな。
 
 一瞬

(やられた・・・)

と思ったが、こっちもイソガイに教わったお蔭で自分としては最高のスタートダッシュが切れたから、幸いにも思ったほど差は付いてなかった。それで、直ぐに冷静になれた。こういうのも、しっかり準備していたお蔭だよな。

 イソガイからは

 「200は後半勝負だから、スタートで差をつけられなければいい」

 と、言われていたからね。それで、とにかく離されないようにと、100m近くのカーブを曲がるところまで、アイツの後方にピッタリと付けていてね。カーブのところで、確認するようにアイツがチラッとこっちを見たが、そのせいかコーナーでかなり膨らんでいたね。

 きっとアイツは、オレとはもっと差があると思ってたんだろう。
 
( ̄ェ ̄;) エッ?  というような表情が見えた。

 もっとも、こっちはこっちでコーナーを上手く回ったから、カーブを曲がってホームストレッチで抜いたハズだと思ったら、しっかりアイツが前にいやがった!

(やっぱコイツ、はえーわ!)

 って、ビックリだわな。オレとしては昨日のことがあるから、ラストスパートの勝負になったらアイツの化け物じみたスピードには絶対に負けると思って、まだ少し距離はあったが早めのスパートで勝負を賭けるしかなかった。

 オレがアイツに追いついた時は、場内に大歓声が湧き上がったって?

 こっちは頭の中が真っ白だったから、歓声なんてまったく聞こえんかったな。 並んだ時にチラッとアイツを見たが、相変わらず何を考えているのかわからん例の澄ましたポーカーフェースだし、横を見てる余裕もなどなかったが、それでもアイツの気配だけはずっーと感じ続けてた。ホームストレッチはオープンコースだから、アイツとオレは殆どぶつからんばかりに、ずっと肩をくっつけるようにして走ってたね。3位以下は、遥か後方に離れてたんじゃねーかな・・・まったく気配すら、感じなかったなー。

 正直、なんだかジーンと胸が熱くなっていたんだよな、あの時は。あの短い勝負の間に、あれだけ色々あった「過去」を回想してる暇なんて勿論ないんだけどね・・・なんか、感情が一気に迸り出たというかね。

(あの「神童」と、肩を並べて走ってるんだ・・・)

みたいなね。

「こんなこと、もう二度とねーだろう」

という一種異様な臨場感というかな。実際、どこまでも憎い相手のはずなのに、なんかこう・・・なんていうのかな・・・不思議と懐かしさがこみ上げてきたりしたね・・・  まあ、ひと言でいうなら、あれこそ「無上の瞬間」というかね。
 
 (ああ、オレは生きてるんだ!!!) 

 というか、なんかこう凄い手応えみたいな、怖いような充実感というのかな・・・なんか全身に血が滾るっていうか、体の奥底から物凄いパワーが漲って全身で波打ってるようなね。現実に、こんなマンガみたいなことってあるんだって、なんか不思議な感じだったな・・・あれって、一種の恍惚状態だろーな。やっぱ、隣にアイツが並んで走ってるってのがね。

それまでは、ひたすら

(勝ちたい、勝ちたい)

という一念しかなったのに、もうそんな次元は一気に超越してしまったというかね。ああいうのをカタルシスというのか、はたまたエクスタシーというのか・・・難しいがひと言で言うなら、とにかく最高の充実感を味わえた瞬間としかいいようがねーよなー、やっぱ。

(このまま永遠に、時が止まってくれ!)

とか思ってたなーw

勝った、負けたも大事だけど「事を謀るは人に在り、事を成すには天に在り」というヤツだね。 あれは本当に、自分の中の美しいアルバムの1ページだな・・・ホントいい想い出だよ。ゴメン・・・なんか、日本語グチャグチャになっちゃてるな、オレって。

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