1学期期末テストを間近に控え、鬼の担任女史から試験勉強用のノート提出を義務付けられた、6組の生徒たち。普段からはもとより、試験前といえどもまったく勉強する事がなかっただけに、提出するノートなどがあろうはずもない。何も出さないままで涼しい顔を決め込んでいたのだが、これが鬼女史のヒステリーの発作を誘発した。
「オイ、にゃべー!
オマエだけノートが出とらんが、一体どういうこっちゃ?」
「はあ・・・特に試験勉強はしてないので・・・」
「なにぃ~?
試験前に勉強する必要がないくらい、普段から準備ができとるっちゅうんかい?
そんなら、それを出せよ」
「いや、出すべきものもないので・・・」
「オマエなー。
ナメとんのかー、この私を」
この場は、適当に謝ってしまえばそれまでだろうとは思いながらも
(なんで勉強しないことに、オレが謝らなきゃいかんのか?)
という反発があるせいか変な対応となってしまい、鬼女史のヒステリーの炎に益々、油を注ぐ結果となってしまった。
「確かに、今の成績ではケチのつけようもないが、そう甘くはねーぞ。まあ今にガタガタと落ちてくることになるだろうが、そうなってから騒いでも遅いからな。よー憶えとけよ」
などと、ボロクソに言われ続けるうち
(仮にガタガタに落ちたところで、アンタにゃあ関係ね~だろ~がよ。 元々順位などに拘っているワケでなし、人の主義などほっといてくれ、このクソババーが)
と、腹の中で毒づいていた。
「それにひきかえ、オーミヤはさすがにえー勉強をしとるわ。みんなもオーミヤのノートを見せて貰って、勉強方法の参考にしろよ」
と、あてつけがましく真紀をべた褒めしてみせた。
鬼女史が去るや早速、真紀の周りには女性徒らの輪が出来たが、それが一段落すると
「にゃべ、えらい災難だったね・・・」
と、千春と真紀のコンビがやって来た。
「うむ・・・」
「真紀のノート、ホラ、見てよ。スッゴイ、字が綺麗なのよ・・・」
「ほー」
勉強嫌いのにゃべっちにとっては、真紀の学習ノートにもさして興味はなかったが、言われるままにお義理で何気なく目を通すと、そこには達筆で細かい字が大学ノート一杯にビッシリと埋まり、これを見るだけでも確かにノートの持ち主の知的レベルの高さを感じさせるには充分だった。
「でもさ~、あの先生、酷くない?
あんなに言う事、ないと思うけどさ。人それぞれ、やり方があるじゃない?」
「そうそう。人それぞれ、能力が違うんだしね。私のなんて、ただビッシリ文字が埋まってるだけよ。にゃべって、授業中もまったくノート取ってないよね?
ノートに書かなくても、黒板の字とか先生の話がスラスラと頭に入っていくんなら、別に必要ないよねー。そっちの方が、よっぽど凄いことだと思うけどなー」
と、真紀は如才がなかった。
「でも教師には、そういうのが許せないのかもしれないね・・・」
「まあ教師ってのは、だいたい杓子定規にやるしか能がないか、それとも皆の手前は建前に拘らざるを得ないのか、ってとこだろーよ。それでスケープゴートにされる方は、迷惑千万だけどな」
かくして
「どれだけ努力をしたか。これが必ず、最後の結果に表れてくるんだ」
と、建前論ばかりに虚しく縋り続ける(或いは、本気でそう信じ込んでいた?)頑迷固陋の鬼女史と、あくまで勉強しないにゃべっちの主義とはどこまでも平行線を辿り、一年間に渡って不毛な暗闘は続いた ('Д')y ─┛~~
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