体育祭の締めくくりは、言うまでもなくクラス対抗リレーだ。6組はオグリが一走、にゃべっちはアンカー前の三走でアンカーは勿論、超人ミグである。このリレーは「教師も参加が可能」というルールになっていたが、相手は中学生とはいえリレーに選ばれる俊足ぞろいだけに、いい歳をした教師陣は誰もがしり込みをして名乗りを挙げなかった。そんな中、唯一エントリーしていたのが隣の5組の担任教諭であり、また我がサッカー部監督のガンちゃんだ。
「リレーにエントリーとは無謀な・・・そんなに、恥をかきてーのか?」
というにゃべに対し、あるサッカー部員は
「本人は、自信があるんじゃねーのか?
案外はえーかもよ・・・」
と、冷やかしていた。小柄で小太りの体型ながら、昨年まで大学でサッカーをやっていたというし、この歳が新任で23歳だ。当然ながら、このリレーの最大の注目は
「ガンちゃんが、どこまでやれるのか?」
であった。
一走には4組のマチャを始め、我が6組からはオグリと各クラス精鋭を揃えているだけに、余計に目が放せない。そんな注目の中、リハーサルでは惨めな最下位に沈んだガンちゃん (;´д`
)トホホ
「なんだ、クソおせー!」
と罵る声が多い中、5組の学生を中心に
「今日はリハだから、わざとビリになって生徒に華を持たせたんじゃねーの?
本番は、ちゃんとトップで走ってくるハズだ」
と、本番に期待する声も少なくなかった。
そんな中、いよいよ本番を迎える。
「にゃべ~。リレーで優勝したら、真紀がキスのご褒美だっってー」
千春が例によって、悪戯っぽい笑みを浮かべながら、冷やかしてくる。
「ちょっとぉ、タカ~。んなアホなこと、言わんといてー」
いつもは冷静な真紀が、珍しく真っ赤になって否定するのが眩しく
「じゃあ、グリにはタカシマがキスしてやるのかよ?
なんせ一走は、責任重大だからな~」
と照れ隠しに、ジョークで誤魔化した。
「なんで私が、あんなヤツに・・・」
「テメ~らな~、リレーの前に気が抜けるようなコト言うんじゃね~」
とオグリだけは、いつも通り大真面目である。その横では、もてない(?)アンカーの超人ミグが、我関せずと瞑目していた。
クラスが12あるため、予選は6組づつ2つに分かれ行われ、にゃべのクラスは2位(4位までが決勝)で通過し決勝を迎える。
予選では、2位でバトンを渡したオグリ。典型的な後半型だけに、ビリからのスタートはいつも通りで、リハ同様にガンちゃんとともに最後尾からの追い上げだ。ガンちゃんに遅れてスパートを切ったオグリは、後半から得意のゴボウ抜きで見る間に順位を上げたが、それでもさすがは精鋭揃いだけに体育の授業のように簡単に追い上げは効かず、3位でバトンパス。オグリの前の2位はマチャ。密かにトップが期待されていた注目のガンちゃんは、なんとか食い下がって喘ぎながら、ビリまでが団子になった4位に入るのが、やっとだった ( ´艸`)ムププ
続く二走で5位に落ちた6組、バトンを受けた三走にゃべが猛烈に追い上げる。二走で7位まで後退した5組は三走がムラカミだから、これは負けるわけにはいかない。
「バカヤロー、なにやってんだ・・・まったくうちのクラス、おせーな。にゃべよ、親友の誼でオレを前に出してくれ」
「アホ言うな・・・」
などと軽口を叩き合っていたが、スタートともに前半型のムラカミにあっという間に並ばれる。考えてみれば、こうしてムラカミと勝負するのは初めてだったが、さすがにムラカミは速かった。そのまま2人で並走するような形で、2人を抜いて順位を上げていく。アンカーの姿が見えてきたところでラストスパートに入り、ムラカミを振り切りってどうにか3位でアンカーにバトンパス。前半飛ばしすぎたムラカミは、最後に抜かれて5位でアンカーに渡した。こうして稀に見るダンゴレースのまま、最後のアンカーへと勝負の行方は縺れ込んでいった。
ここまでの順位は、以下の通り(アンカー)
1. 10組(ホリサキ)
2. 2組(タケダ)
3. 6組(ミグ)
4. 12組(イソガイ)
5. 5組
6. 4組
7. 11組
8. 3組(ゴトー)
1. 10組(ホリサキ)
2. 2組(タケダ)
3. 6組(ミグ)
4. 12組(イソガイ)
5. 5組
6. 4組
7. 11組
8. 3組(ゴトー)
まず2位でバトンを受けた2組のタケダが、10組をかわしてトップに立ったのが波乱の幕開けだ。抜かれたホリサキはショックからか転倒し、ズルズルと交代。にゃべがバトンパスをした我が6組期待のミグは、一旦2位に上がったものの、すぐさま12組のイソガイらに抜かれ4位に後退していくという、まさかの展開だ。
学年一の俊足を誇る陸上部エースのイソガイが、4位からスタートで一気のゴボウ抜きを見せ遂にトップに立つと、場内が大きく沸いた。続いて場内を沸かせたのが、誰あろうあのゴトーである。最後尾の8位からスタートした3組のゴトーは、猛烈な追い上げで一人、また一人とゴボウ抜きを見せ、一気に4位にまで浮上しただけでも驚いたが、とうとう我がクラスの超人ミグをも抜かんばかりの物凄い勢いだから、みなびっくり仰天しながら目を瞠った。
徒競走で憎きライバルの神童にゃべっちに勝って、積年のトラウマを完全払拭できて遂に開眼したか、まるで何かが取り憑いたような恐るべき迫力だった ε=ε=ε=ε=┏(; ̄▽ ̄)┛
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