2004/02/10

不吉な前兆

 T社長からは、例の女子大案件の穴埋めのように

「N社プロジェクトの、リーダー格で是非という話が」

と持ちかけられ

「既に、エンド(ユーザー)のN社には打診済みで、かなり色よい返事を貰っている」

という、調子の良い話だった。タヌキのように小太りでドス黒い顔をしたT氏に関して

「どうも信用出来ないオッサンだ・・・」

という予感はしていたものの、なんとか静岡に行かずに通勤圏の名古屋で仕事がしたかっただけに、疑いつつも半分ほどは期待も抱いていたのが間違いの元だったのだが、それに気付いたころは時すでに遅しであった。

 そんな矢先、静岡F社案件の窓口になっている会社から正式契約書送られてきたが、中身は

「これ以上になる事はあっても、以下になる事はありえない」

と、担当者が大見得を切っていた見積もりの金額よりも単価が下がっており、付帯条件も悪くなっているではないか (/||| ̄▽)/ゲッ!!!

「どうも当社の見積もりが、甘かったんようで・・・なんとも、大変申し訳ないと思ってますが、この線でなんとかお願いできないものでしょうか?」

金額そのものは下がったとはいえ、まだ相場から見ればそこそこのレベルだったが、なにしろ最初からこんな調子では到底、信が置けないではないか。わざわざ静岡くんだりまで行ってからでは、この先また騙されても泣き寝入りしかないのだ。

「(F社に責任はないが)、どうもF社がらみの話は巧くいかんようだ・・・」

と、頭を抱えているところへ

「いよいよN社の、例の話が決まりそうだよ」

というT社長からの連絡などもあり、返事を引き延ばしていた(静岡)F社案件からは「最終回答求む」と決断を迫られる。他にも二件、別ルートから新プロジェクトへのお誘いが入って来ていたために

(この内の、どれか一つくらいはいけるだろう・・・)

と、静岡行きの辞退を申し入れした。

が、しかし・・・ 姿の見えぬ悪魔が、まるでどこかからそのタイミングを見計らって待っていたかのように、静岡行きを断った直後からあれほど降って沸いたように次々に舞い込んできていた案件の連絡が、まるで嫌がらせの相談でもしていたかのように、一斉にプッツリと途絶えてしまったのである。

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