おまけにサッカーの方も、クラブのコーチから
(オマエは才能がある・・・将来のエースだ!)
なんて言われて、すっかりその気になったしで益々、学校生活も面白くなってた。
こうなると、なんにでも積極的に取り組みたくなるものだから、ゲンキンなものよ。ほら、ゲームなんかでも下手なうちはつまらんけど、上達するとドンドン面白くなっていくだろ。あれと同じで、なにより
「ここには、かつてのオレを知ってるヤツが1人もいない!」
というのが、一番嬉しいことだった。
(もう一度、まっさらなとこからやり直せるんだ!
だったら、なりたかった自分に生まれ変わってやろうじゃねーか!)
とね。その後は勉強にスポーツにと快進撃を続けて、気付けば自分でもビックリするような『H小』のヒーローさ。まあ、誰かみたいに「神童」と呼ばれる域までには達しなかったがね。それでも「過去」を知らない連中は、みんな 「ゴトー君、ゴトー君」と呼ぶし、最早「同級生でゴトーを知らない者はいない」という勢いだ。
「オマエって、誰だっけ?」と雑魚扱いだったいつぞやとは、エライ違いだわな。
(よーし、オレも「神童」になってやろうじゃねーか!
そうして、いつかどこかでアイツを見返してやるのだ!)
と一念発起して、さらに頑張った。その頃は
(オレも「神童」になれる!
アイツは決して、手が届かないところにいるわけじゃねー!)
などと本気で思ってたし、一番充実していたころだったな。ところが、これがそう簡単ではないことがわかった。それを思い知らされたのが、オーミヤの存在さ。オレの描いた「神童計画」は、結果的にあの憎たらしい女にぶち壊されたようなもんさ (ノ-o-)ノ ┫オリャ
確か『B小』にも「もろこ」とかいう優秀な女子がいたけど、こっちにも「オーミヤ」という優等生がいたんだよ。そう、あれはにゃべやマサのような眩しいオーラを発するような「天才」ではなく、努力家の秀才タイプだった。
(よーし、人生やり直しや!
オレも、ここでにゃべ様になってやるぞー!)
と本気で張り切っていたオレにとって、憎っくき目の上のタンコブはあのオーミヤのメガネザルよ!
もっとも念願のトップには立ったものの、それからが大変だったな。これはトップに立って始めてわかったことだが、トップを維持するってのはトップになることよりも、よっぽど難しいことなんだと。それまでは一旦トップになってしまえば、後は楽なもんだと思っていたわけ。ところが、そーじゃねーんだな。しかもトップが続くと、周囲からもドンドンそれが「当たり前」のように見られてしまうから、これが結構なプレッシャーさ。
オレなんかも「英雄」と祀り上げられた当初こそ、天にも昇ったようないい気分だったが、そうなるともう落ちるわけには行かん。しかもトップを維持しながら「オレには当然」というポーズを取らないといかんから、うっかり喜んでる姿も見せられん。実際、「英雄」とか「神童」の落ち目ほど、惨めなものはないぜ。
これは、なったものにしかわからんだろうが
(いつか落ちるんじゃねーか、次は落ちるんじゃねーか?)
って凄い不安に襲われて、酷い時には変な悪夢に魘されて寝られなかったりね。そういう意味では、真に勉強が好きでコツコツと地道に努力するオーミヤの方が、オレなんかよりはトップに相応しいんだろうな。だからその時になって、ずっとトップを独走していたアイツの偉大さが、初めてヒシヒシと実感できたわけよ。しかもアイツの場合は、まったく勉強をしないどころか授業中もふざけてばかりいて、ろくに話も聞いてないと来ている。それでいて、いつもさも当然というツラで「落ちる恐怖」などは、爪の先ほども無縁そうなヤツで、こせこせしたところがまったくない。
(やっぱり、アイツは例外的な存在なんだ!)
と、何度思ったことか!
その後は幸いにして身長もグングン伸びてくれたし、気付けば後ろから2~3番目と大きくなってた。おまけにスポーツも、何をやっても殆ど誰にも負けなくなっていた。イジメ対策で、引越し後は空手道場にも通ったお蔭で腕力も付いた。
ただ、これは翌年にサッカークラブに入ったから長続きはしなかったが、そのころはもうすっかり自信の塊みたいなもんさ。転校して間もない頃に、ガキ大将みたいなのに喧嘩売られて、空手でやっつけてからは
「ゴトー君って、空手をやってるんだって・・・」
という噂が広がり、それからは誰も喧嘩を売って来るような者もいなくなった。もう、まさに「天下を取った」ようなもんさ。しかし、勉強だけはオーミヤという強力なライバルがいたから、誰かみたいにトップを独占というわけには行かなかったし、結局あの女のせいで「神童」にはなれなかったんだけどな。もっともオレの知ってる「神童にゃべっち」は、あくまで小学3年生の途中までだから、その後もずっと神童のままだったかどうかはサッパリわかってねーんだけど。
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