ゴトーの場合
(ともかく、オレはあの「神童にゃべっち」に追いついた!
もう互角なのだ!)
というリハの結果が、凄い自信になった。
そうなると、徐々に
(明日は、勝つチャンスはある!
いや、絶対に勝てるぞ!!)
という自信も湧いてきた。もうこうなったら戦略もクソもない、執念の勝負なんだと。執念では絶対にオレの方が上だ、という気持ちはずっと強く持ってたから
(最後は、執念で勝るオレが勝つのだ!)
と、何度も言い聞かせてたね。
そして今日は最後の最後で抜かれたから、明日は今日以上に頑張らんと・・・たとえ心臓が破れようとも、最後まで絶対気を抜くものかと。最後まで、100%の力を完璧に出しきらなければ到底、勝てるヤツじゃない・・・それだけを繰り返し繰り返し、自分に念じ聞かせてた。とにかく本番で負けてしまっては、折角苦労したオレの「工作」も、数年間の恨みも総てが水の泡だ!
(『神童』にゃべっちといえど、今や『H小』の英雄ゴトー様の“月の前の星” に過ぎないという現実を、オーミヤその他や『B小』の連中どもの頭に、しっかりと焼き付けてやらねば!)
と、闘志を盛り上げていたね。
自分が勝つレースと、みなから祝福される姿、さらに惨敗してすごすごと引き下がる「神童」の惨めな姿を、散々イメージしながらね。
陸上部のイソガイからは、スタートダッシュとか200m走のコツを教わって、サッカー部の練習の合間もダッシュの練習を繰り返していたさ。そんな時に、にゃべのヤローがへらへら笑いながら、なにかとちょっかいを出してきやがったな。
「幾ら頑張ったところで、オレに勝てるかな?」
なんてことをぬかしておったが、あの時ほどヤツが煩く感じたことはなかった。
「オレを昔のオレと思うなよ・・・」
と精々凄みを利かして脅してやったが、ヤツはポカンとしてたな。後で気付いたがこれは無理もないことで、ヤツの中では「昔のゴトー」なんてものはハナから記憶にないんだから、それこそ「なんのこっちゃ?」ってとこだったろうからな ゲゲ (゜_゜;)
にゃべっちの場合
ゴトーの方では、やはり虐げられてきたものの常として、こちらの想像を遥かに上回るようなリベンジに賭ける特別な思いがあったらしく、部の活動の合い間を見てはダッシュの練習を黙々と繰り返していた。その表情は、普段のおふざけモードのゴトーとは別人のようで、ちょっかいを出そうものなら煩そうに
「オレを昔のオレと思うなよ・・・」
という、明らかに「リベンジ」を意識した言葉が返ってくるのである。あたかも、この勝負に全てを賭けているような怖いような真剣さで「たかが徒競走」という次元を超え、彼の並々ならぬ決意のようなものが伝わっては来ていた。そうした直向で貪欲な姿勢に、なにやら一抹の不気味さは感じながらも、長距離とは違い短距離には自信があったから、実のところ最初から勝利を確信していた。
そうして表面的には、あくまでそしらぬ振りを決め込みながら
(な~に、絶対に大丈夫だ。
人間には、それぞれの器ってモノがあるんだから、ヤツが幾ら頑張ろうと本番ではオレは、ヤツには負けないようになっているハズなのだ!)
という妙な確信に支えられて(暗示を掛けて?)、いよいよ運命の本番を迎えた。
ゴトーの場合
こっちが必死でダッシュを繰り返している時も、ノー天気に他の連中とバカばかりやっててね・・・相変わらず人を食ったような、何を考えてるのかサッパリ解らんヤツだった。普通なら、目の前でこれだけこっちが必死で取り組んでいる姿を見せたら、それだけでも相当に不気味なプレッシャーを感じるハズだろ。
ところがアイツには、一切そんな感情はないらしい。全然、平気な顔してたし。
思うにアイツは自分が負けるなどとは、爪の先ほども考えてもいなかったんだろう。
(オマエが幾ら足掻いたところで、オレ様に勝てるわけがない)
とでも決め付けているような。無論、戦略とかはなにもなく、単なるズボラな過信以外の何物でもなかったんだろうがね。いつだって、出たとこ勝負のズボラなヤローなんだ!
実際、アイツと同じようなことをやったり怠けていたりしていては、それこそ向こうのペースに嵌って、こっちは負けてしまうと思ったからね。こっちはとにかく、やれるだけの準備はしておくのだと。それで
(あれだけやったんだから、オレが負けるハズがない!)
というのを拠り所にしてたよ。
そうやって暗示を掛けながら、いよいよ運命の本番だ (≧Д≦)ノ オー!!
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