2004/01/26

鬼の誕生 ~ X氏への遺言(第二部)「承」(2)


こちらの唯一の味方であるべきはずのR氏が、相手に抱きこまれて「寝返った」のでは、この場で幾らこちらが責任追及だと息巻いたところで、しょせん蟷螂の斧に過ぎぬ。最早バカバカしくなって、何を言う気もおこらなかったが

「B君とかH氏は、なんで来なかったのですか?
当然、この場に来るべき人だと思ってましたが」

と皮肉をかますと

「Bは体調を壊して、入院してしまってね・・・Hは元々、この件には特に関わりがないから・・・」

と、T部長がニコニコと愛想よく言った。このタイミングで入院と言うのはどう考えても嘘臭かったが、こちらの目を晦ますための作戦なのか、あの「事件」以来、Bは二週間ほどに渡り休んでいた。

「Bの休みのせいで、にゃべっちさんには一層の負担が掛かっても申し訳ありませんが、これからもよろしくお願いしますよ」

と、M氏が愛想を振りまくと

「それは大変ですね・・・どこが悪いのでしょうか?」

と、身内の濡れ衣については一顧だに心配しなかったRが、さも心配そうに身を乗り出した・・・

 この世にも不毛な出来レースの会見が終わると、C社のT部長とM氏、M社のR氏は傍目には大事な商談が成立したかのように、ニコニコ顔で別れの挨拶を交わしている。実際にC社としては、人道に悖る犯罪的行為の握り潰しに成功したわけであるし、またM社にとっても責任追及の放棄に対しては、それ相当の「余禄」が齎されたハズだから「商談成立」には違いなかったのだろう。

現場リーダーのX氏は難しい立場を考えたか、実につまらなさそうな表情でしきりにタバコばかりを蒸し、遂に会見中ひと言も言葉を発することがなかった。確かにX氏は、今回の件には表向き関係がないように見える。が、現場でのリーダー経験が長いこのX氏に、T部長らC社の管理部門は全幅の信頼を寄せていたのから、このような泥沼に至ったことについて、こちらとしてはX氏には「リーダーとしての責任」を問わないわけにはいかない。

いずれにせよ「和解」が成立したと安易に考えた両社にとっては、これで総ての問題に片が付いたと信じていたようだが、もちろん、そんなハズがない。

(こんな腑の抜けた所属会社なんぞ、金輪際頼みにせんわ。絶対に、このままでは済まさんから憶えておけ!)

この穢い取引が「恐怖の鬼」を誕生させたのだ! Ψ(`∀´)Ψケケケ

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