2004/01/22

追及(スーパーオグリpart3)



●オグリの場合

それまでは、確かに



(神童にゃべっちをやっつけて、極楽トンボ連中に目にものを見せてやるわ!)



なんて思っていたが、段々と変なプレッシャーが掛かってきやがった。なんつーか『B小』学区の連中どもの、ヤツに寄せる期待はどうだ!



他学区の連中は知らんが、半数近くを占める『B小』の連中に限って、あれは間違いなくどれもがヤツの勝利を確信してる目だ。ああ、こんなにやり難い雰囲気になろうとは!



こういう場合は、いつものようにヤツが豪快に勝って



「やっぱ、にゃべはつえーな!」



という、マンガのようなハッピーエンドにしないといかんのかな?



こんな雰囲気でオレが勝っちゃったりしたら、メチャクチャにしらけちゃうんだろーな。いや、参った参った・・・しかも、ミグのバカ力に散々てこずらされたせいで、まだあちこち痛むし体も重い。勝算は半分くらいはあると思ってたが、これじゃあ勝負にもならんかもしれん。頼むから、本番では力が出てくれよ・・・

●にゃべっちの場合
ところが周囲のそんな期待感をよそに、軍配が還ると勝負の方はいとも呆気なく終わった。組んだ瞬間、強引に放った投げが鮮やかに決まり、拍子抜けがするほどに至極あっけない「秒殺」勝利に終わってしまったのである (; ̄ー ̄)...?

(これが、あのさっきまでの力強いヘラクレスか・・・?)

「やっぱ、にゃべは全然強えーな」

「にゃべにかかっては、さっきまであんなに強そうに見えたグリも、まるで歯がたたね〜し」

「やっぱ、格が違うか・・・赤子の手を捻るというヤツだ」

「なんだ、期待した割には、まったくつまらなかったね・・・」

と皆が納得と失望の溜息を漏らしながら、それでも興奮気味にぞろぞろと教室へと帰って行った。

 その輪とは離れた反対側に、オグリを引っ張って行く。

「オイ、待てよ!
オマエ・・・わざと負けたな?」

「いや、わざと負けたわけじゃねーよ・・・」

「ウソを吐くな、コイツ。
全然、力出してねーじゃん」

「出してねーんじゃなくて、出なかったんだ・・・まったく力が出んかった。  ミグの時で、全部使い果たして余力が残ってなかったんだって・・・」

と、相手は案外とサバサバとした表情だ。

(コイツめ・・・場の空気に遠慮して、手を抜きやがったか?
それとも、オレに委縮した?
どっちにしても、オレはガチンコ勝負ですっきり決めたかったのに、余計なことをしやがって!)

と、なんとも腹立たしい後味の悪さだけが残った (-_-)~┻━┻ガシャーン

●オグリの場合

決勝戦の、あの雰囲気。やっぱり、みんなヤツの優勝を期待してるのがミエミエだ。



『B小』学区連中の



「グリよ、ちゃんと空気読めよ!」



というような視線が、痛いほどに突き刺さったよ。そうはいっても負けるわけにはいかんが、困ったことにまったく力が入らん。本来の半分くらいがいいとこで、これで勝てるような甘い相手じゃねーよなと思ったが、案の定ヤツは思った以上に強く、まったく勝負にもならんかった・・・ああ、情けねー。



「やっぱ、にゃべは全然強えーな」



「にゃべにかかっては、さっきまであんなに強そうに見えたグリも、まるで歯がたたね〜し」



「やっぱ、格が違うか・・・赤子の手を捻るというヤツだ」



「なんだ、期待した割には、まったくつまらなかったね・・・」



と皆が納得と失望の溜息を漏らしながら、それでも興奮気味にぞろぞろと教室へと帰って行った。



(オイオイ、これは実力じゃねーんだってば!

オレは、力を使い果たしてたんだ・・・本来だったら・・・)



と、オレは声を大にしてみんなに叫びたいとこだった。が、引き上げていく連中の満足そうな顔を見ると



(しかし・・・まあ、これでよかったのかもな・・・)



なんて思えてきたりで、ガラにもなくちょっと弱気になってた。



ところがだ。折角、そのようにいい感じで丸く収まったと思ったら、ナント当の「神童サマ」が一番の大バカヤローだったとは!

 勝負を終えて引き上げていると、ヤツが血相変えて追ってきたではないか。  

「オイ、待てよ!
オマエ・・・わざと負けたな?」

「いや、わざと負けたわけじゃねーよ・・・」

「ウソを吐くな、コイツ。
全然、力出してねーじゃん」

「出してねーんじゃなくて、出なかったんだ・・・まったく力が出んかった。  ミグの時で、全部使い果たして余力が残ってなかったんだよ・・・」



オレは本当のことを言ったんだが、なぜかヤツは怒ったように顔を顰めて詰め寄って来る。あれは、まったくわけがわからんかった。こっちがインチキで勝ちを浚ったんならともかく、オレがインチキ(片八百長)でわざと負けただろうって怒るんだから



「どんだけ変わった男だ?」



って、ビックリしたよ。



(オマエは勝ったんだから、なにも文句はねーだろ!)



と言いたいとこだったが、どうもヤツは真剣勝負で勝たないと気が済まんらしい。ガキ大将のヒロなんかは、いつも



(オイ、わざと負けろよ!)



とか、インチキでも勝ちゃーいいんだってんで、平気で急所蹴りとかやってくる穢いヤローだったからな。ガキ大将とかお山の大将なんて、どいつもこいつもそんなもんだとずっと思ってた。どうもコイツばかりは、そういう単純なタイプじゃねーらしい。まあ、その意味では尊敬できる・・・かもしれん。それにしても女みたいな優しいツラして、普段はクールを絵に描いたようなアイツが、あんなに怖い顔して怒るんだから、こっちはビックリよ。

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