2004/01/16

誤解 ~ X氏への遺言(第一部)「転」


ここまで来て、いきなりこんな言い方をしてもなかなか信じて貰えそうもないでしょうが、公人としてのX氏、つまりリーダーとしてのX氏にはともかく、私人としてのXさんの人格に対しては、もとより何も含むところはありません。  これまで僅かなコミュニケーションの機会にて、自分の見解ばかりを声高に展開して来ましたし、その表現力の稚拙さから充分に意を尽くすこと叶わず、またXさんに対するワタクシの理解もまったく不充分と思えるままに終わってしまった事は、重々承知の上でございます。

それにしても、ワタクシはかねがね不思議に思っていました。日頃から、あれほど何事にも如才なく振舞っていたXさんが、なぜかことワタクシに対するに限って、常に表情が「ひきつって」いましたね?

愚かにも、あの理由がワタクシにはしばらく理解出来ませんでした。

(そうか・・・この人は随分と、ワタクシを持て余していたんだな・・・)

と、ようやく思い至ったのは随分後になってからの事で、それまでは今でもどうにも忘れ難いあの「ひきつった顔」は、ワタクシにとってはなんとも理解の外でありました。何故といって実はワタクシ自身はXさんに対し、他の誰よりもずっと心安さを感じていたのですからね。

「我に情理あれば、彼にも情理あり」と、独り勝手にフランクな心持ちで接していたワタクシとしては、当初からXさんにも同様のフランクさを、どれだけ期待していた事でしょうか。その期待は遂に叶うことのないまま、些かワタクシなりの心苦しさからある時点において、Xさんに対する気遣いを一切止めてしまおう、と心に決めたのでした。

が、これはどうやら生真面なXさんに接する方法としては、まったく逆効果だったようでございます。これにより、余計にXさんに気を遣わせてしまうという不本意な悪循環に陥ってしまった事は、まったくワタクシの意図に反するものとなってしまいましたが、最早その時点に至っては覆水を盆に還すような器用な芸当は、ワタクシのような不器用な者には不可能となっておりました。

この際ですから、もう本音を言ってしまいましょう。ワタクシとしてX氏に対しては、無責任なリーダー像を見出すのには針の爪ほどの疑いも差し挟んではいませんでした。

が、ある時からです。少し思うところもあり、色々なところを注意深く観察するようになったのは・・・そして日一日と、その表情に苦渋の跡が色濃く滲んでくるのを見るにつけ

(ひょっとして自分は、これまでトンデモナイ勘違いをしていたのではあるまいか?
会社という組織と、ワガママで扱いに手を焼く外部スタッフとの板挟みにもがきながら、どうにか穏便な形で軟着陸が出来る最善策の模索に、最も心を砕いていたのはこの人だったのではあるまいか・・・?)

などと、独り疑心暗鬼に陥りもしたものです(本当に!)

ともあれ遅まきながら最後の3月に入り、ようやくの事でワタクシなりにXさんの真価らしきもの(それは恐らくは、ほんの片鱗に過ぎない事でしょうが)に触れた思いがしなくもないのも、また事実なのでございます。その後のワタクシの振る舞いこそは、まさに断腸の至りとも言えるものでした(?)

おそらく信じられない事でしょうが、リーダーとしての「X氏」へ憤りと「Xさん」個人への情という相反するアンビバレントな心情によって、まるで空気のような手応えのないものに戦いを挑んでいるような、なんとも空虚な感じとでも申し上げましょうか・・・それは実のところ、愚かな自分自身との孤独な戦いであったのかも知れません。

思えば、転機に於けるちょっとしたボタンの掛け違いから、まったくおかしな成り行きとなってしまい、遂に胸襟を披いて語り合うといった機会もないまま、こうして最後の時を迎える事になってしまいましたことは、返す返すも残念でなりません。お互いが納得のうちにお別れというのが理想ではありましたが、本当に世の中というのはままならないものです。元々、ワタクシたちに縁が薄かったのかもしれませんが、いずれにせよ今となっては何を言ったとて総てはアフターカーニバルでしょうから、もうこれ以上余計な繰り言を申す事は止めにします。

さて最後になりましたが、社会人の先輩としてのXさんの一挙手一投足にいたる振る舞いを見るにつけ、言うも僭越ながらワタクシなんぞ若輩者には到底及びもつかぬ事は折りにふれつくづくと感じ入り、密やかに色々と勉強をさせていただきましたことも、申し添えておきます。また特に、K君が去っていった後の後半の半年間は、業務上で色々と教わって来たり陰に陽に助けられた事なども、ひとかたならずあった事など思い起こし、こうした恩讐を超えた指導には改めて敬意と謝意とを併せて、半年分の感謝の印を明記しておく所存にございます。

ともあれ、これで無事に「ガン」も取り除かれる事となり、貴社にとっては元の平和な環境が戻って来ることでしょう。Xさんもまた、窓際での退屈を養うには絶好の春のうららかな環境が戻ってくるであろう事はまことに悦ばしい限りでしょうし、蔭ながらワタクシ自身も喜ばしく思っております (´ー`)y─┛~~

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