2004/01/31

当日 ~ X氏への遺言(第二部)「結」



「最後の日は、出ないとまずいぞ・・・C社の連中も来るしさ・・・」

「じゃあ、しょうがないなー。最後の日だけは、なんとか出るようにしましょうかねー。27日から遡って12日連続で休みますので、土日と祝日を入れると実質的には9月前半までですねー、アハハハ」

まさか、そこまでの非常識はしないだろうという読みだけでなく、半月も休み続けては最後の日に出難くなるから、そこまで無茶な真似はしないだろうという希望的観測を裏切って、堂々と宣言通り9月前半から12日間の年休を使い果たし、最後の30日は何事もなかったかのように平然と、済ました顔をして出て来たのであった・・・

前夜
「もうわかったから、31日出ればいいんでしょうが!
これ以上、不毛な話をしたくないし、今後は一切電話もして来ないでくれ」

「申し訳ありません!
ご迷惑をかけますが、お願いします・・・」

相手の思うツボだったかも知れないが、会社の利益のためならクライアントの靴の裏でも喜んで舐めそうな相手との、こうした不毛な遣り取りにもすっかり疲れて来たのである。

しかし安請け合いしたのはいいが、考えてみれば既にX氏には例の《紙爆弾》を手渡してしまった後なので、今更どのツラ下げて氏と顔を合わせればいいのか、というところに初めて思いが至った ∑(〃゚ o ゚〃) ハッ!!

(ひょっとして、まだ読んでないかも知れんしな・・・まあ、どっちにしろ考えたところで、どうなるものでもないか・・・)

この期に及んでは、最早開き直るしかなかった。そうした波乱含みの中で、遂に最終日となる月曜日を迎える事になった。

当日
最終日。X氏がまだ、例の《紙爆弾》を読んでいない事に期待する気持ちと、逆に

(読んだ後の反応が、さぞかし見ものだわい)

という、複雑な興味が絡み合っていた事は否めない。元々、日頃からクールを絵に描いたようなところがあり、感情を滅多に表に出さないから、何を考えているのかよくわからない人物だけに

(案外、読んだとしてもなんとも感じないかも・・・それだと、あれだけ苦労したのにつまらんな・・・)

などとあれこれ考えていたが、いざ現場へ行ってみるとX氏の全身からは、一目でそれとわかるような異様なまでの地獄のオーラが発散されていた!

(あ・・・間違いない、読んだな・・・)

感想を訊いてみたいところだったが、さすがにそこまでは出来ないし、いつものように喫煙所で出くわす期待もあったが、この日ばかりはまったく姿を見せない。また、こちらには殊更に顔を背けているような全身の気配からも、明らかにこれまで見たことのないような、近付きがたい強い拒絶の姿勢が感じられた。

(あの様子では、思っていた以上に相当ショックを受けたみたいだな・・・ザマアミヤガレ。あれだけ苦労して書いたんだから、こっちとしてもそうでないと困るが・・・)

と満足し、あとは関わりあわずに終了を告げるまでの、時間の経過を待つばかりである。ところが間の悪い事に業務上の必要から、どうしてもX氏に接触しなければならない事態が発生した。

(どうせ今日で終わりなんだから、このままうっちゃっておくか・・・)

とも思ったが、やはり仕事は仕事だから気が進まないながらも

「Xさん・・・」

と平静を装って声を掛けたが、聞こえていないかのようにまったく反応がない。仕方なく、もう一度声を掛けると

「はぁ・・・」

と死人のような声色で、この日初めてこちらに向けた顔を見た時は、普段はあまりモノには驚かない事で定評のあるワタクシでさえ、心底ビックリ仰天した (;゚ロ゚)ヒイイイィィィィ

 (ウムムム・・・人間の目が、こんなに真っ赤になる事があるのか・・・)

と思わず我ながら腰が引けてしまうほど、ウサギのように真っ赤に腫れ上がった目が、完全に精気を失って死んでいた。あまりの屈辱に涙涸れるまで泣きはらしたか、はたまた眠れぬ週末の夜を悶々と過ごしてきたのか、僅か3日の間に生ける屍と化してしまったように、そこには3日前までとはまるで別人のように、憔悴しきった哀れな「X氏の残骸」のみが存在していたのである。

この時に改めて、普段のポーカーフェイスに隠した、X氏のデリケートな真の顔を垣間見た思いがし、当初の

(ザマアミロ)

という痛快な気持ちが蔭を潜め、形容しがたい苦い後味だけが残ってしまった (-ω-#)y-~~~~

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