2004/01/16

鮨と生魚の食文化



 「一番好きな食べ物はなんだ?」

と問われると迷ってしまうが、間違いなく候補としてエントリーされるのが刺身である。

元々、肉と同じくらいに魚も好きな方だが、特に刺身には目がない。


という事は、当然の事ながらも大好物である。 

今更言うまでもないが、魚を生で食べるのは世界中でも日本人くらいのもので「足があるものは机以外なんでも食う」と言われる悪食世界一(或いは料理自慢?)のチャイナですら、基本的に刺身は食べないらしい。

もっともチャイナでは、魚は生きたまま食べるのが正当らしいが、やはりあれだけ芸術的なまでに食欲をそそるように飾り立てる繊細な文化は、日本ならではのものであろう。

休日はほぼ欠かさず食べているが、基本的にスーパーで買うものだから安いものだ。

ところでスーパーによって、大体おいてある刺身の種類が決まっているようで、地元(愛知)に住んでいた頃はキハダマグロやトンボマグロ、或いはハマチというところが中心だったが、東京ではトンボマグロに代わって「メバチマグロ」である。

安いが薄味の「ビンチョウマグロ」は食べない。

マグロは、一度でもトロを食べてしまうと味の薄いトンボなどは食べ難くなる恨みはあるが、やはり本マグロのあのサッパリとした歯応えこそは 

「これぞ、刺身の本道!」 

という感じがする。

ブリ系では、脂の乗り切った大振りのブリか、サッパリ系のハマチが旨い。

ところで、かつて愛知に住んでいた頃は「ツバス」と呼ばれていたのを関東ではみかけなくなり、代わって「イナダ」というものをよく目にするようになった。

調べてみると、どうやら実体は同じで地域によって呼び名が変わるらしい。

 以下、出世魚早見表より引用

・東京近海 ⇒ ワカシ(ワカナゴ)→イナダ→ワラサ→ブリ
・関西圏  ⇒ モジャコ→ワカナ→ツバス→ハマチ→メジロ→ブリ
・紀州近海 ⇒ ワカナ→ツバス→イナダ→ハマチ→ブリ(オオウオ)
・瀬戸内海 ⇒ ツバス→ツカナ→ハマチ→メジロ→ブリ
・丹後地方 ⇒ マンリキ(イナダ)→マルゴ→ハマチ→ブリ

 刺身には「たまり醤油」が欠かせないワタクシとしては、東京のスーパーではないだろうと諦めていたこれに出くわし、思わず小躍りしたものであった。

回転寿司にも足を運んだが、やはり「初寿司」に慣れた舌には味がガタ落ちのうえに「安い」と看板を掲げている割りには、結局は普段なかなか口にする事の出来ない高価なところばかりを狙うので、結果的には普通の鮨屋と変わらないような金額となってしまうのである。

加えて、あの回転寿司の不味いインスタント緑茶には、我慢がならない。

ところで名古屋の料理というと、なんでもかんでもみそ味にしてしまうようなイメージがあるかもしれないが、さすがに鮨や刺身にまでみそをつけて食す事はない。

しょうゆで食す鮨はともかくとして、刺身は通常はドロっとした濃い味の「刺身溜まり」が主流で、かつてはワサビにも拘って11000円近くする本ワサビを卸して使っていた。


かなり昔に、まだたまにテレビを観ていたころのこと。

グルメ番組で築地の有名店を訪れたタレントが、鮨を手掴みで食べている光景を目の当たりにし

(ほほぉ・・噂に訊いていた通り、江戸っ子は鮨を手掴みで食うのか〜!)

などと妙に感慨を覚えたもだったが、この積年の疑問を晴らそうと先日、東京から引っ越してきていた友人のS氏に訊いてみた。 

「鮨を手掴みで食うかって?

そんなの当たりめーじゃん!

鮨食うのに、フツー箸なんて使わね〜だろ。

こっちの鮨屋へ行った時に、みんな箸で食ってるから驚いたよ」

と、即座に切り返された。

「箸を使って喰うのは、いないのか?」

「鮨喰うのに箸なんか使うのは、よっぽど上品なマダムとかじゃねーか?」

とか言っていたが、元来が怪しげな御仁だけに、あまり信用できない。

ところで、この人物に「刺身溜まり」の話をすると

「え?
たまり?
何それ?
訊いた事もねーよ・・・」

と言うから早速、居酒屋で刺身の盛り合わせをオーダーすると、当然の如くたまりが付いてくる。

「え?
何これ?
こんなの初めて見た・・・どんな味なの?」

「だから、まあ喰ってみろって!」

恐る恐るといった引き攣った顔で、たまりを付けたマグロを口に運んでいったS氏。

「なんか変な味だな・・・味噌といい、なんで名古屋ってこんなに強烈な味ばかりなのか?」

と、目を白黒とさせておりました (_;)
※「溜まり醤油」とは、大豆麹に塩水を混ぜ熟成させて造った濃厚な醤油のこと。愛知・岐阜を中心に生産され、主に関西で使用される

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