5月、中学生になって最初のテストが行われた。入学時に行われた「学力テスト」は国・数・社・理の4教科だったが、中学からは英語が加わったため、5教科では初めてのテストである。
『B中』では、テストが行われる度に各教科の点数及び偏差値、合計点とクラスでの順位、そして学年全体の順位がコンピューターによって弾き出され、印刷された紙を渡されるのが慣わしであった。初回のテストという事で、上位10人の名が発表された。
入学直後に行われた「学力テスト」では、学年500人中トップになったにゃべっちだったが、今回は2位に後退。トップのナカムラは『Y小』で生徒会長を務めた、ガリ勉と評判の絵に描いたような面白味のない真面目人間で、学力テストも3位の好成績だったらしい。
「学力テスト」トップによって『B中』でも、いち早くその名が知られることとなったにゃべっちに次ぐ3位には、ともに6組で級長を務める真紀が堂々名を連ねていた。続く4位には、ご存じ『B小』生徒会副会長の「もろこ」こと香が入り、にゃべっちの親友・ムラカミが5位。さらに8位に香里、10位には由布子と、まずまず順当なところである。6位の「ゴトー・カズマ」(『H小』)という名に、どうにも引っ掛かかりを感じながら・・・
「凄いね~!
真紀もにゃべも・・・学年で2位、3位って」
「オイ、にゃべ。オマエって、やっぱりすげーんだな。ま、ホントはトップかと思ったてたが・・・」
「何いってんのよー。2位なら、凄いし。にゃべは、やっぱり天才だったんだな」
と早速、オグリと千春から祝福(?)された。
「ホント、2人仲良く並んじゃって、羨ましいねー。それに香里とかムラカミも、さすがさすが」
「でも、にゃべの方が凄いよー。これでもまだ、前回(学力テスト)より落ちてんだもんね。私なんか、明らかに出来すぎだって」
と真紀は謙遜したが、その実力はやはり侮れない気がした。
「凄い凄いっていうけど、まだ上がいるんだぜ。天才だとか程遠いわ」
と言いながらも、にゃべっちの頭の中は
(ハテ?
6位の「ゴトー・カズマ」というのは、なんか訊いたような名だけどな・・・)
と漠然とは感じながらも、その時は思い出せずにそのまま忘れていた。
「ところで・・・オマエらは、どーだったんだ?」
「そうそう。人の事ばかり言ってるけど、アンタたちは一体何番だったのよ~?」
と、にゃべっちと真紀に突っ込まれた千春とオグリ。
と、にゃべっちと真紀に突っ込まれた千春とオグリ。
「そうだぞ、タカシマー。オマエは一体、何番なんだ?」
「そうそう、人の感心ばかりしてるオマエは自身は、何番だったんだって」
「アンタこそ、どうなのさー?」
「なーにが、アンタこそだ。ずるいやっちゃなー」
「グリよ・・・人のことより、オマエはどーなんだ?」
「オレか・・・オレはまあ、真ん中よりはちょいマシって程度だが・・・」
「じゃあ、私は幾らかはマシかな。真紀にだけは、後でこっそり教えるよ・・・」
と、調子よく逃げられた。後日、千春の成績が気になるにゃべっちは
「オイ、オ~ミヤ。タカシマの順位は訊いたかー?」
「うん、訊いた訊いた」
「で、何番だったって?」
「ダメダメ。誰にも言わないって、約束したもん」
「んなの、わかりゃしねーだろ。オレにだけ、こっそり教えろよ」
「やだよ。そんなに気になるなら、直接本人に聞けば?」
「じゃあグリは何番だったか、こっそり教えてやろうか?」
「ふーん、ちょっと興味あるけど、タカの順位は教えてあげられないから、私も訊かないでおくわ」
真紀の固い友情に阻まれ、結局千春の順位は最後までわからずじまいだった。
それからしばらくして、通路でバッタリ出くわしたマサに
「オイ!
オマエは、トップ10に入ってなかったじゃねーか!」
と冷やかすと
「オレか・・・実はオレ、11番だったんだよ。惜しいなー。ギャハハハ・・・」
などと、笑いに紛らわしていたが・・・
結局、この時チラッと脳裏を掠めた「ゴトー」という名への既視感をよそに、もっぱら
(それにしても、マサの名が見当たらんのは、どういうわけか・・・?)
と、もっぱらその事にばかりクビを捻っていたものだったが・・・
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