●にゃべっちの場合
(決勝の相手は、あのヘラクレスか?
力は強そうだが、しぶとい超人ミグでなくてよかった・・・)
相手の力強さは充分に警戒しながらも、最もやり難いミグでなかったことに胸を撫で下ろす。土俵を降りてきたミグと擦れ違ったが、擦れ違い際に
「アイツ、見た目より相当バカ力だぜ・・・」
と、ミグが呟いた。こちらに顔を向けて耳打ちするのではなく、正面を向いたままあくまで独り言を呟くように。言うまでもなく、ミグはにゃべっちにとっては「仇敵」だから、普段は喧嘩ばかりしていて仲が悪かっただけに、これには驚いて
(やはり、ヤツもオレの勝ちを願っているんだな・・・)
と、力を得た。
相対した相手は、ミグやシモッチのような迫力はない。それでも外から見ていた時は、ミグやシモッチにはない誰にも負けない強い気迫は感じていたが、実際に目の前の相手からそうしたオーラは見られなかったのは、やはりミグ戦の疲れだったか。
(こんな小さいのに、このオレが負けるはずはない・・・)
と、気合が篭る。
いよいよ、対決だ!
あれだけの熱戦の後だけに、ミグ戦のダメージを計ろうとしたが、相手は思ったほど息が上がっているようには見えなかった。
さあ運命の軍配が還ろうかという直前に終業のベルがなり、女子たちがぞろぞろと見物にやって来た。
「なに、あれ?
にゃべとオグリがやるの?
そんなん、にゃべが勝つに決ってるじゃん!」
と、確信したかのように口を揃えるのは「神童にゃべっち」が頭に刷り込まれている『B小』出身の女子たちだ。誰知らぬものとていない「神童にゃべっち」に対し、ヘラクレス少年はまったく知られた存在ではなかったから、これは無理もない。
一方、にゃべっちの神童ぶりを、これまで目の当たりにしたことのなかった他学区の女子たちは
「にゃべの方が背が高いし、動き早いから有利かな?
でもオグリのあの足を見てよ~、ちょっとぉ~。
なんか、すっごい鍛えてる感じ・・・」
「ホント、筋肉が浮き上がってて気持ち悪い・・・」
「にゃべの方が、筋肉はあんまりだけど、カモシカみたいにしなやかでセクシーかも・・・」
などと、無責任な予想を囃し立てる声が聞こえたから
(こりゃ益々、プライドにかけて意地でも負けられん・・・)
と、さらに一層の気合が篭る。
●オグリの場合
さあ運命の軍配が還ろうかという直前に終業のベルがなり、女どもがぞろぞろと見物にやって来やがった。
「なに、あれ?
にゃべとオグリがやるの?
そんなん、にゃべが勝つに決ってるじゃん!」
と、確信したかのように口を揃えるのは「神童にゃべっち」が頭に刷り込まれている『B小』出身の女子たちだ。
そりゃ、そうだろう。なんせ「神童にゃべっち」と言えば、誰一人知らぬ者はない超有名人だ。2年生の時、1度だけ同じクラスになったことしかないオレですら、嫌と言うほど散々に名前だけは聞かされてきたからな。それに引き換え、こっちはまったく無名の「その他大勢」だ。
「にゃべの方が背が高いし、動き早いから有利かな?
でもオグリのあの足を見てよ~、ちょっとぉ~。
なんか、すっごい鍛えてる感じ・・・」
「ホント、筋肉が浮き上がってて気持ち悪い・・・」
「にゃべの方が、筋肉はあんまりだけど、カモシカみたいにしなやかでセクシーかも・・・」
などと、無責任な予想を囃し立てる声が聞こえた。
「気持ち悪い」とはなんだ、ブタどもめ!
大きなお世話だ!
別に、テメーらブタどもに評価してもらいたかーねーよ。テメーらは、みんな「神童にゃべサマ」に勝って欲しいんだろーよ。いや「勝って欲しい」もだし、同時に「にゃべが勝つに決まってる」んだよな?
まあ、正直言って、オレが逆の立場だったとしても、そう思うだろうからな。
ところがどっこい、そうは問屋が卸してたまるかってんだ。事実は小説より奇なりだ。
さあ、よーく見てやがれ。
惨めに地べたに転がされるのは、神童サマの方さ!
愚かなブタどもよ、しっかり目を見開いて
「我らが神童が、このオグリ様の前に無様に這い蹲る歴史的瞬間」を絶対に見逃すんじゃねーぞ (*`▽´*) ウヒョヒョヒョ
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