2004/01/20

スーパー・オグリpart1(中学生図鑑Part2)


 体育の授業で、勝ち抜き相撲大会が行われた。

生まれついての抜群の反射神経と、サッカークラブで鍛えた強靭な下半身から、切れ味鋭くちぎっては投げちぎっては投げと破竹の快進撃を続けるにゃべっち当然の如くに、あれよあれよの間に決勝へとコマを進めた

 対するもう一方のブロックでは、中肉中背ながら

 (これが中学生の脚か?)

 と皆が眼を瞠るほど、大腿部からふくらはぎにかけての筋繊維が、保健室にある人体標本のようにくっきりと浮かび上がった一人の少年が、力強いパワーで勝ち上がっていた

 にゃべっちとの決勝を前に、この少年の前に立ちはだかったのが、ご存知「超人ミグ」だ。小学校放課後のドッジボールと「当てっこ」で、あの神懸りを連発するにゃべっち唯一のライバルであり、また前年の球技大会のサッカーでも活躍をみせるなど、誰もが認める『B小』随一のスポーツマンである。

勉強ではパッとしないミグだったが、にゃべっち以上の俊足というだけでなく、これまで見てきたようにスポーツは何をやらせても超一流であり、にゃべっちの「神童伝説」に無情にも幕を引いた男だ。その超人ミグ」と「謎のヘラクレス」の両雄が、にゃべっちとの決勝をかけてぶつかることに。

 (うむ・・・あのヘラクレスは確かにバカ強い!
 が、なんと言っても、相手が悪いだろう・・・)

 とミグの勝ちを予想しながらも、勝負の行方には俄然たる興味が湧いた

 そんな中、軍配が還る。小柄ながら筋肉隆々のヘラクレスが立会いから一気の寄りで、あっという間に長身のミグを土俵際に追い詰めた。

 (おー、すげー!)

 みな唖然と歓声を上げた。が、相手は超人ミグだ。土俵際に追い詰められながらも、柳のようにしなやかな長身をしならせて、簡単には土俵を割らない。相手に存分に攻めさせておいて、じっくりと料理をしていく「横綱相撲」が、ミグの得意のパターンだ。さしものヘラクレス少年と言えど、これまでのように一気に土俵の外に弾き飛ばすことは難しく、ミグの長身を生かしたうっちゃりであっという間に形勢が逆転した。

 (やっぱ、ミグは強い!!!)

 と思わず唸ったが、しかしヘラクレス少年も負けていない。ミグの厳しい責めにも土俵を割らずに、足を掛けてしぶとく食い下がって耐えていた。

 (おー、すげーな!
 ただの筋肉オバケじゃねーぞ、アイツも・・・これは、稀に見る好勝負だ・・・)

 みな、手に汗握って勝負の行方を見つめる中、しばらく膠着状態が続いた。 ミグが投げを仕掛けたタイミングを、待ってましたとばかりヘラクレス少年が投げを打ち返す。これが、実に見事なタイミングだった。ミグの体が大きく傾き、誰もが勝負あったと思ったところで、二枚越しのミグが立ち直りながら捨て身の返し業を仕掛け、両者もんどりうって派手に倒れた。

 「お、オグリの勝ち~」

行司の教師が、一瞬迷ってからオグリに軍配を上げると

「そ、そんなバカな・・・グリの方が先に落ちたぜ。
オレが勝ってた・・・」

と、ミグが抗議した。確かに、どちらに軍配が上がってもおかしくないような際どい勝負だったが、僅かにオグリの体が先に落ちたように見えた。が、ミグの体も割れていたから「死に体」とも言える微妙な状況だ。

「先に落ちたのはオグリだったが、オマエは死に体だったからな・・・」

と、ミグの抗議は教師に却下され

「チクショー」

と、ミグが叫んだ。

オグリの場合
相撲には密かに自信があったが、今日は特に調子が良くて全然負ける気がしなかったな。準決勝に残った顔ぶれは、にゃべ、シモッチ、ミグだ。オレ以外の3人は、誰が見ても順当過ぎるほど順当だが、唯一まったく無名だったこのオレが「4」の一角に残ったのは、みんなさぞかし驚いたろうて。しかし、驚くのはまだ早いってもんさ。この「大穴」のオレが優勝して、連中をあっと驚かせてやるのだ!

しかしミグのヤローは、想像以上に強かったな。さすがは小学校の時に、何人ものベルトを千切ったと言われただけのことはあるよ。あの強烈な引き付けには、すっかり腰が痺れたからな。これまでの相手とはまったく次元が違うし、あの細い体のどこからあのパワーが出るのか不思議だ。

あれは「負け」だと言われてもおかしくないような、まさに薄氷の勝利だったし、あれで取り直しなんて言われたって、正直体力が違うし勝つ自信はなかったぜ。ミグの「死に体」はわかってたが、あの(体育教師の)ジジーが「死に体」を理解してるかが心配だった。案外、ちゃんと見てくれてたじゃねーの。

みんな、ミグが勝つものと思ってたろうから呆気に取られてやがるが、本当に驚くのはこれからよ。

いいか、オマエら、よく見ていろ!
この無名のオグリ様が、オマエらの大好きな「神童にゃべっちサマ」を叩き潰してやるところをな! 

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