2004/01/24

ライバル(スーパーオグリpart5)


●にゃべっちの場合
今度は、誰一人見るもののない土俵で、白熱の名勝負が繰り広げられる事となったが、オグリの腕力は思った以上にバカ強く、確かに先の勝負とはまったく別人のような強さだ。

(あれは、決して「負け惜しみ」ではなかったのか?)

などと考えているうちに、次第に形勢不利に追い込まれていく。内心、少しの油断があったとはいえ、まったく互角の展開だ。壁のようにずっしりと重く、後ろには動かないと見てタイミングを計って投げに行ったところを、待ってましたとばかりに切り返された。

(しまった・・・ミグと同じ轍を踏んでしまった!)

完全にバランスを崩し、倒れかかりながらも執念の粘り腰で捨て身のうっちゃりを放ち、二人してもんどりうって倒れた。皮肉にも、まったく先のミグ戦のVTRを見ているような展開だ。

「同体か・・・?」

と確認したのはオグリだったが、僅かに自らの手が先に付いたのは、自分自身が最もよくわかっている。

「ううむ・・・やたらと腕力がバカ強いヤツだ・・・」

予期せぬ敗戦・・・神童にゃべっちにとって、まさかの不覚だ (゜◇゜)~ ガーン  
日頃から負けず嫌いではあったが、互いに持てる力と気力を振り絞った勝負の後だけに、悔しさ以上に案外と清々しい気分が残った。

●オグリの場合

今度は、誰一人見るもののない土俵で、白熱の名勝負が繰り広げられる事となったが、思った通りこっちは万全の状態だから互角の戦いだ。相手は少しの油断があったか、或いは実力的にこっちが勝っていたか徐々に有利な形勢となって、ジワジワと圧力を掛けると予想通り投げに来た。



(この投げを待っていたんだ!!!)



と、タイミングを見計らって切り返し。これが見事、鮮やかに決まった!

と思ったが、完全にバランスを崩しながらも、さすがにそう簡単に倒れてくれるヤツじゃない。勿論、あのミグのバカ力には到底及びはしないが、コイツのしぶとさはミグ以上で、あんな体勢から予想外の捨て身のうっちゃりが来て、思わずバランスを崩してしまった。



「同体か・・・?」



ヤツの手の方が僅かに先に突いたようにも見えたが、敢えて声に出して確認してみると

「ううむ・・・やたらと腕力がバカ強いヤツだ・・・」

と、ヤツは案外と潔く負けを認めた。



最初は憎たらしいヤツだと思ったが、やはりダテに「神童」と呼ばれてはいないということか。悔しさの中にも、勝敗を超えたスポーツマンらしい爽やかな、実にいい表情をしてるんだな。お互い持てる力と気力を振り絞った勝負の後だけに、こっちとしても勝った嬉しさだけでなく、なんというか実に清々しい気分が残る充実感を味わえたぜ。

 数日後の体育の授業。

この頃、毎回のように10人ほどが団子になって、200m走の計測が行われていた。

風を切って、トップで颯爽と走るにゃべっち。大きなカーブを曲がり、最後の直線コーナーからのラストスパートで2位以下を一気に引き離し、トップでゴールイン!

この日も脳理に描いたシナリオそのままの展開で、ゴールを目前にしたところだった。突如として背後から一陣の風とともに、猛烈なスピードで追い込んできた少年に、ゴール少し前でかわされてしまった (  ゜ ▽ ゜ ;)エッ!!

(一体誰だ?
ミグか?  確かミグは、もうひとつのグループだったはずだが・・・)

よく見れば、にゃべっち以上に長身のミグとは比較にならぬ中背で、虚しく見送ったその筋肉で盛り上がった広い背中と、人体標本人形のような筋肉隆々としたふくらはぎは、見紛うはずのないあのオグリ少年のものであった。

「チクショウ!

またしてもオマエか~!」

「ハッハッハッハ!

この勝負、どうやらオレの勝ちだな」

と、勝ち誇るオグリ少年。満面に気色を湛えたその表情は案外と子供っぽく、悪戯小僧のようなどうにも憎めないものだった。

「ちくしょう、明日はリベンジだ!」

 翌日も同じような展開で、後半追い込んでゴール前で交わして行くオグリ。が、そのさらに後方から、影のように迫ってきて一陣の風が吹いたかと思うと、オグリを交わしてミグのスマートな長身が颯爽とゴールを切っていた!

相撲では、あの「幻の対決」での敗戦以来何度も対戦を重ねたが、オグリの方は腕力にモノをいわせて力任せに押してくるばかりだったから、にゃべっちは直ぐにオグリの攻撃のパターンを読み尽くし、この頃には7割近い勝率で圧倒するまでになっていた。寧ろ苦手なのは長身で懐が深いミグの方で、天然の怪力としぶとさを併せ持ったこの相手に、互角以上の戦いは至難の業だ。

あの「世紀の一戦」は制したオグリも、体力に勝るミグには次第に勝てなくなっていた。一方、中学生の体力で駆け引きの余地はない200m走では、実力で勝る超人ミグを頂点ににゃべっち、オグリの3人による熾烈な争いがクラスの名物となっていった。

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