9世紀末の寛平年間(889年 - 897年)東寺の僧・峯延(ぶえん)が入寺したころから、鞍馬寺は真言宗寺院となるが、12世紀には天台宗に改宗し、以後の鞍馬寺は長く青蓮院の支配下にあった。寛治5年(1091年)には白河上皇が参詣、承徳3年(1099年)には関白藤原師通が参詣するなど、平安時代後期には広く信仰を集めていたようである。『枕草子』は「近うて遠きもの」の例として鞍馬寺の九十九(つづら)折りの参道を挙げている。
鞍馬寺は大治元年(1126年)の火災を始めとして、度々焼失している。江戸時代の文化9年(1812年)には一山炎上する大火災があり、近代に入って1945年(昭和20年)にも本殿などが焼失している。このため、堂宇はいずれも新しいものだが、仏像などの文化財は豊富に伝えられている。
昭和期の住職・信楽香雲(しがらきこううん)は、1947年に神智学の影響を受け鞍馬弘教を開宗。1949年には、天台宗から独立して鞍馬弘教総本山となっている。
京都の奥にある鞍馬山は山岳信仰、山伏による密教も盛んであった。そのため山の精霊である天狗も、また鞍馬に住むと言われる。鞍馬に住む大天狗は僧正坊と呼ばれる最高位のものであり、また鞍馬山は天狗にとって最高位の山のひとつであるとされる。
本尊
京都の北に位置する鞍馬寺は、もともと毘沙門天(四天王のうち北方を守護する)を本尊とする寺院であり、併せて千手観世音と護法魔王尊を祀った寺院であった。しかし、鞍馬弘教立教後の現在の鞍馬寺の信仰形態は独特のもので、本尊についても若干の説明を要する。
鞍馬弘教立教後の寺の説明によると、鞍馬寺本殿金堂(本堂)の本尊は「尊天」であるとされる。堂内には中央に毘沙門天、向かって右に千手観世音、左には護法魔王尊が安置され、これらの三身を一体として「尊天」と称している。「尊天」とは「すべての生命の生かし存在させる宇宙エネルギー」であるとする。また、毘沙門天を「光」の象徴にして「太陽の精霊」・千手観世音を「愛」の象徴にして「月輪の精霊」・魔王尊を「力」の象徴にして「大地(地球)の霊王」としている。
鞍馬寺とは、どこにでも存在する「尊天」のパワーが特に多い場所にして、そのパワーに包まれるための道場であるとしている。「尊天」のひとり「護法魔王尊」とは、650万年前(「650年」の間違いではない)、金星から地球に降り立ったもので、その体は通常の人間とは異なる元素から成り、その年齢は16歳のまま、年をとることのない永遠の存在であるという。
本殿金堂の毘沙門天・千手観世音・護法魔王尊はいずれも秘仏であるが、秘仏厨子の前に「お前立ち」と称する代わりの像が安置されている。お前立ちの魔王尊像は、背中に羽根をもち、長い髭をたくわえた仙人のような姿で、鼻が高い。光背は木の葉でできている。多宝塔に安置の護法魔王尊像も同じような姿をしている。このことから「鞍馬天狗」とは、もともと護法魔王尊であったと思われる。また、16歳とされているわりに、歳をとった姿をしている。
境内・伽藍
仁王門 -
1891年(明治24年)焼失し、1911年(明治44年)再建された。山門駅から多宝塔駅までのケーブルカーは、1957年(昭和32年)に開通している。
多宝塔 -
1959年(昭和34年)再建。
本殿金堂 -
1971年再建
寝殿 -
1924年(大正13年)の建築。
転法輪堂 -
1969年(昭和44年)再建。
奥の院魔王殿 - 本殿から西の貴船神社へ抜ける山道の途中、奇岩の上にある小堂。650万年前に、金星から地球に降り立ったという魔王尊を祀っている。現在の建物は1945年(昭和20年)の焼失後の再建。
霊宝殿 - 本殿裏にある。1階は鞍馬山自然博物苑で、鞍馬山の動植物に関する展示がある。2階は寺宝展示室と与謝野鉄幹・与謝野晶子の遺品等を展示した、与謝野記念室がある(鞍馬弘教を開宗した信楽香雲は、与謝野門下の歌人であった)。3階は仏像奉安室で、国宝の木造毘沙門天立像、木造吉祥天立像、木造善膩師童子(ぜんにしどうじ)立像の三尊像を始めとする文化財が展示されている。
鞍馬寺の本尊は、この毘沙門天の三尊像であったとする説や、同じく霊宝館に安置されている平安時代後期の重要文化財兜跋毘沙門天(とばつびしゃもんてん)の姿と近いものでなかったかとする説もある。平安時代中期以降の末法思想から生み出された、経塚遺跡からの発掘品も見ることができる。なお、霊宝殿前には、与謝野晶子の書斎「冬柏亭」が移築されている。
文化財
国宝
木造毘沙門天立像、木造吉祥天立像、木造善膩師童子(ぜんにしどうじ)立像
鞍馬寺経塚遺物一括
重要文化財
木造聖観音立像
木造兜跋毘沙門天立像
黒漆剣
剣(無銘)
銅燈篭
鞍馬寺文書
鞍馬の火祭(10月22日) - 仁王門近くにある由岐神社の祭礼。鞍馬寺主催ではない。
出典 Wikipedia
出典 Wikipedia
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