次にご紹介するのは小説ではなく、あるイエロージャーナリズムで偶然目にした怪しげな話である。
事実かどうかはまったくわからないが、いかにもありそうな話ではある・・・
《名伯楽といわれた女子マラソンの某コーチ(以下、Aコーチ)は、過去に手掛けた選手をオリンピックや世界選手権に送り出した華々しい実績を引っ提げ、幾つもの会社を渡り歩いて来たが、それはひとえに高額な契約金や、より好待遇を求めてのものらしい。口八丁のAコーチは、得意の雄弁で事ある毎に「総ては選手のため」を力説するが、実のところ選手を利用する事しか考えていないともっぱらだ。Aコーチにとって有力選手は「金のなる木」であり、ピークを越えた選手は一顧だにされない。その辺りは至ってシビアで、Aコーチの手腕を頼って門下に移籍して来た有力選手も、その実像に触れてすっかり失望してしまったという》
《その上、既にいい歳であるにもかかわらず、いまだ精力絶倫のAコーチは、また「セクハラオヤジ」としてその筋では知らぬもののない存在であった。Aコーチの名伯楽ぶりを頼って移籍して来た選手も多いが、逆にAコーチの移籍先となったチームからは、決まって有力選手が櫛の歯が欠けるように度々ヨソのチームに移籍したり、或いは失踪や謎の引退などといった不可解なケースが、しばしばマスコミを賑わせるのは何故だろう・・・その原因は、ひとえにAコーチの「セクハラ癖」にあると、もっぱらである・・・》
Aコーチが移籍したチームには、かつて何度も優勝経験があり、次のオリンピックでの活躍が期待されたB子選手がいた。Aコーチは、ことある度に
「B子には素晴らしい才能があるよ・・・素質から言ったら大きな大会で好成績を上げたC子よりは、B子の方が遥かに上だな。これからオレがみっちりと仕込んだら、今度は金メダルは最有力だね・・・」
などと吹聴していた。
ところが、これだけAコーチから期待されたB子選手だったが、僅か数ヶ月も経たぬうちに何故か突如として、自発的に別のチームへと移籍してしまったのである。関係者は「B子はAコーチのセクハラに激怒して移籍した・・・」と口を揃えていた。
「マラソンは、ただ練習で走れば良いというものではない」というのが、Aコーチの持論である。合宿では共同生活を送るが、その際に食事の管理から私生活まで総てを、Aコーチの管理下に置かれる。やはり将来を嘱望されたD子選手は美人ンランナーとして人気があり、マラソンランナーとしては珍しい肉感的な色白の女性らしい身体つきで男性ファンが多かった。
通常、合宿と言うと有名企業が抱えているような大所帯を想像するが、Aコーチが移籍した先は名の知れぬ零細企業であり、マラソンランナーもAコーチが移籍時に引っ張って行ったD子選手以外に、これといっためぼしい選手はいなかった。それだけに「合宿に名を借りた同棲ではないか?」という見方も出来るような境遇とも言えた。そのD子選手は、Aコーチが移籍してしばらくすると謎の失踪を遂げ、数ヵ月後に姿を現すや週刊誌に衝撃告白をした・・・
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