「ところでさ・・・オマエたち『愛知』の下見なんだろ?
なんで、たったの3人しかいねーの? 他の連中は、別々に来るのかよ?」
『愛知高校』は高校定員50人の『東海高校』とは違い、定員600名を超えるようなマンモス校だった。
「3人っていうか『愛知高』を受けるのは、こっちの2人だけなんだけどな。 コイツらのクラスで『愛知』を受けるヤツは、他にいねーからさ」(にゃべ)
「えっ?
クラスで、たった1人って・・・なんでそんなに、少ねーの?」
「なんでったって、そりゃまあ・・・『愛知』っていやー、一応は『A高』の滑り止めだかし・・・」(ナオキ)
「えっ、何だって?
『A高』? なに、それ? 訊いた事ねーし。それに『愛知』が、トップクラス1人しか受けられないって、嘘だろ」
(*`▽´*) ウヒョヒョヒョ
と、一同大爆笑。
「えっ、なんだよ?
オマエら、なにがおかしいんだよー」
と、うろたえるナオキ。
「なんでって、オメーらこそ・・・『愛知』なんて、オレたちの学校(名古屋の中学)じゃあ、クラスでフツーに5~6人は受験するからなー」
「それだと『名城大附』(『A東高』の滑り止め校)くらいじゃねーのか?」(ムラカミ)
「『名城大附』なんか、半分くらいは受けるぜ」
「ウチは、半分って言ったら『S』とか『T』辺りだけどな」(ナオキ)
「はぁ? 『S高』? 『T高』?
あんなの、よっぽどのアホでなければ受けねーだろ。フツーは」
と大ウケの彼ら。
「ところで、コイツ1人はクラスが違うとか言ってたが・・・」
「ああ、コイツが一人じゃ心細いって言うんでな。オレたちは、付き添いみてーなもんだな」(ムラカミ)
「なに? 付き添いだって?
オイ、『愛知』受験に付き添いだとよ。こりゃ笑えるぜ。うひょひょひょひょひょ」
どうやら、相手は名古屋のパリパリの中学生らしく、こちらの3人はすっかり「田舎の山猿」扱いである。
「ところで、後の2人のオマエらは?」
「コイツも『愛知』だが・・・オレは『東海』だけど」
「えっ? 『東海』だと?
ウソつけー、オイ!」
すっかり見下された後では、地区最高峰の『東海』受験は最早、まったく信用してもらえなかった。彼らがこちらより都会の学生であることは間違いなかったろうが、後で考えてみると彼らの話はこちらが田舎者だと見下した上で、かなりの誇張が含まれていたと思われる。
(う~ん・・・『B中』の神童とか天才とかいっても、所詮は『井の中の蛙 大海を知らず』ってヤツか・・・名古屋の連中から見たら、精々が田舎の山猿くらいなモンなのか?)
「チッ、胸糞わりーな。オイ、ナオキ!
オマエの付き添いなんかしたせいで、こんな目に合うとはな (ノ-o-)ノ ┫オリャ」
「ムムム・・・すまん。しかしさ・・・おかげで、名古屋のレベルの高さがわかったじゃないか・・・」
と無理をしてフザケテいたものの、帰りの電車では次第に無口になっていく3人・・・
(あのようなレベルの高い都会の連中の中に混ざって、果たして『東海』に合格できるのだろうか・・・?
『A高』推薦とはいえ、他の連中はみな愛知に合格してくる中で、たとえ『東海』であろうと不合格の烙印を押されるのは、みんなの手前やっぱ恥かも。やはりムラカミの言ってたことが、案外的を射てたか?)
などと認識を新たにしていると、横からムラカミが
「ウムム・・・やはり、こりゃあ思った以上にレベルが高そうだな『東海』ってのは。しかし、あの連中は、こっちが田舎者だと見て、ハッタリかましてる部分もあったろうがな。まあオマエなら、連中に混ざっても大丈夫だとオレは踏んでいるが・・・万一、ダメでも『A高』がある限り中学浪人の心配はないから安心しろ・・・」
「オイオイ・・・それじゃあ全然、フォローになってねーだろ」
「心配ない。『神童』と言われたオマエが落ちるなんて、絶対に有り得ねーってば」(ナオキ)
すっかり意気消沈のこちらを元気付けようとする2人だったが、その実、彼らにもショックはありありだった。こうして希望に燃えた往路とは立場が逆となり、ただただ疲れきっての帰途となってしまった (゜◇゜)~ ガーン
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