C国人団体（東京劇場・第2章）part10

　ウィークリーマンションの4階の部屋へと移って喜んだのも束の間、またしても思いもよらぬ問題が発生した。実は前の2階の部屋にいた1週間くらい前から、ネットの接続が時々切れるという障害が出始めた。フロントの女性の話では

『誰かが大きなファイルなどを転送したりすると、ルータに再起動が掛かる仕組みになっているためです』

という返答であり、要は構内LANの帯域の問題だという事だったが・・・

一度、深夜0時半過ぎから1時間以上まったく繋がらない事があり、この時はメールのチェックも出来ない事に業を煮やし、翌日サポートを請け負っている会社にクレームを入れてからは、まあまあ安定していたのだったが・・・

元々この物件では、他の滞在客とはあまり顔を合わせるような機会はなかったが、時折エレベーターやランドリーコーナーなどで見かけるのは、どういうわけか外人がやたらと多かった。Ｃ国人の滞在客がやたらと目に付き始めたのも、ちょうどこの頃からである。

思えば突然のこのLANの不調も、建物全体がＣ国人滞在客に「占拠」されるような形になったのと、ちょうど軌を一にしていたといえるかもしれない。

そんな状況を経て、4階に移ってまもなくの事であった。この時は、すでに自宅待機の身となっていた事で朝からネットに繋ぎっ放しという状況だったが、これまでなかったくらいに調子が悪く、日中から頻繁に接続が切れるのである。　日中でさえそんな状態だから、当然の如くに夜の時間帯は尚更ダメで殆どまったくといっていいくらい繋がらない状態が続き、遂に怒りが爆発した。

サポート請負会社に電話をするが

「明日、明後日（土・日）はお休みですので、月曜日に調査をします」

という、なんとも悠長な返事である。

「あのなー・・・んじゃ今日、明日は使えなくても我慢してくれって事なんか・・・？」

「まあ、そういう事になりますが・・・」

「アホ抜かせ！　こっちは常時接続という契約をしてるんだ・・・これじゃ、サギみたいなもんじゃないのか？」

「そう言われましてもねー・・・契約を結ばれてるのは、ウィークリーさんのところですから・・・」

「そのウィークリーからサポートを一任されてるのが、アンタんとこの会社なんじゃねーのかい？　責任を持って、直ぐに直しに来るのが当然じゃないのか？」

「ですから月曜日に・・・」

「もう、アホは相手になれん・・・」

こんな無責任なバカモノを相手にしていても埒があかぬ。仕方がないから、物件の管理部へ直接電話をすることにした。

　「と言うわけで、こっちは常時接続という名目で契約してるんだし、仕事上の必要があってわざわざ割高の物件に入ってるわけなんだからさ。無論、常時接続とはいってもADSLの話だから、たまに5分や10分くらい使えないケースがあるくらいの事で文句は言わないが、今のようにまったく使えないというのは、どう考えてもLANの構成や設定がおかしいとしか思えないしね。正直、これって詐欺みたいな話じゃないか」

と不満をぶちまけると

「まことに仰る通りで、申し訳ないです」

と平身低頭の管理者からは、一旦空いている部屋で試して繋がるようならば、ネットの接続はそっちでやってくれという事になった。指定された空き部屋は、元居たあの2階の同じ部屋であった。部屋にあるＬＡＮ機器の故障かもしれないからと、試してみる事にした。

電話機そのものから、モジュラージャックかケーブルの障害も可能性としては考えられたが、どれを試しても結果はやはり同じなのである。元々、最初にネットワークコマンドでループバックアドレス、デフォルト・ゲートウェイと順に試していくと、DNSの名前解決のところで設定がおかしくなっていたから殆ど無駄な足掻きとも思えたが、サポート会社が

（現時点では、調査してみないと原因がわからない・・・）

などと寝惚けた事を言っているからには、こちらで打つ手はこれくらいしかないわけだ。

「やっぱりダメだね・・・1週間くらい前までは普通に使えてたのに、なんで急にこんな事になったんだろう・・・」

という問いに

「実は・・・最近、Ｃ国人の団体客が研修でやって来まして・・・彼らが本国とメールで大量のデータを遣り取りしているらしいんですよ・・・それでその間は、回線がパンク状態になってしまうらしい・・・」

そんなものは負荷分散装置（ロード・バランサー）を導入するか、帯域を広げる事で簡単に対処できるはずだが、素人にそんなことを言っても話が通じるわけがない。

「それは前にも訊いたけど・・・しかし前みたいに深夜だけでなく、最近は朝や昼間からおかしいからなー・・・LANそのものがおかしいとしか思えんが・・・」

「いや・・・彼らが結構、朝からバンバンと遣り取りをしているんですよ・・・」

「そうなのか・・・というか、そんな経緯はともかくとして、先にも言ったようにこちらは常時接続という約束で契約をしているわけだから、Ｃ国人が何をしようがまったく無関係な話なのだ。ともかく、何とかしてもらわないと困るんだよね」

「勿論、仰るとおりです・・・そして今日は日曜だから無理ですが、明日になれば必ず改善出来ます・・・」

と管理者は、何故か自信たっぷりに言い放った・・・(;￣ー￣)...ン?