2004/07/26

ウィークリーマンション滞在記(東京劇場・第2章)part8

 地方者の自分としては「東京なら、どんな外れでも便利は悪くないだろうから・・・」という先入観を、根強く持っていた。それというのも昨年、富士通某の面接で蒲田のホテルに滞在した時も周りには、食べ物やなどには事欠かなかったからで、東京から名古屋に来ており「東京の事なら、オレに訊いてくれ」  と、大見得を切っていた友人に電話をすると

「どこにいるのー? え? 
カマタ・・・?  カマタねぇ・・・訊いた事ねーな・・・東京に、そんなのあったっけ・・・?」

「なんだ、そりゃ。東京の事は、オレに訊けといったくせに・・・」

「オレが知らねーくらいだから、よっぽど外れの方なんじゃないか・・・」

その蒲田にしてワタクシには、随分と便利に感じたものだったくらいなのだ。

続いて6月に滞在していた西葛西も、立地的には千葉との県境という外れに位置していただけに

「二週間近くの滞在で、住むのに不自由はないだろうか・・・」

と当初は危ぶんだものだったが、駅までの5分間の距離間にコンビニは6-7件あったし、オリジン弁当などの弁当屋やマルエツというスーパー、さらには100均などの雑貨店も幾つもあり「これが東京か・・・」と安堵のため息と同時に、やはり感心せずにはいられなかったのである。

そんなだったから、二度目の滞在となったウィークリーマンションのある千駄木というのが、どんなところかは知らなかったものの、地図で見れば蒲田や西葛西よりは遥かに中心部寄りであったし、また実際に中心部の大手町までは僅か4駅で10分と掛からないという、好立地に思えたものだった。ところが案に相違して、この千駄木というところが実になにもないような、独身でグータラなワタクシからすれば、不便極まりない土地なのである。

求職活動での足回りの良さは確かに感じたものの、なにせ近所には「xx銀座」という昔ながらの下町商店街のショボイ個人の店が並んでおり、利用出来そうなのはコンビ二といくつかの飲食チェーンくらいで、スーパーも100均もないのには参った。地区の定番ともいえるオリジン弁当までは、往復で20-30分も掛かるしSHOP99もあるにはあったが品揃えが少なく、必要なものを揃えるには到底及ばない。なにより、スーパーやドラッグストアの大型店がないのが致命的である。

(なんじゃ、こりゃ。東京でも、こんなイナカがあるとは・・・しかも中心部なのに・・・)

と、思わずため息をつくハメに・・・

 さて、滞在中のウィークリーマンションである。当初描いていたスケジュールが延び延びになっていったのに伴い、ウィークリーマンションの方も延長更新をしながら居座っていた。部屋は2階の角部屋である。2階といっても、建物の構造で1階が半地下のようになっていたから、2階は通常の建物の1階半のような高さである。

部屋の奥の窓側にテーブルがあり、そこにノートPCを置いていた。が、困った事に窓が商店街に面していたため、PCをしている時などに窓を開けると外を歩いている人々が丸見えであり、また外からも部屋の中が幾らか見えるだろう事は、想像が出来るのである。加えて外での人の話し声や運送屋や業者のトラックが目の前に停まるから、その音が煩くて仕方がないおまけに向かい側の魚屋の放つ生臭い匂いや、周囲の商店街の様々な異臭の交じり合ったような、なんともいえない匂いと空気の悪さがいかにも不快であった。

日常は締め切りで、換気扇もこれ以上は小さく作れないだろうと思えるくらいに、オモチャのような申し訳程度のものが一つついているだけだから、空気には煩いデリケートなワタクシとしては、居る時は出来る限り換気をしたいのである。

色々と考えた挙句、窓を開けるときは外からは死角になるベッドに移動して、PCをやりながら空気を入れ替えるという窮余の一策を思いついた。そんな経緯から、何度かの契約更新手続きの都度、フロントの女性担当者に

「上の階は空いてないかな? 上に移りたいんだけど」と、繰り返しリクエストを出してきたものの

「生憎、上の階は総て満室なのです・・・というか下の方も、殆ど一杯なんですが・・・」とその都度、撥ね付けられて来た。

そうこうしているうちにも、1ヶ月以上の時が経過し8月末に何度目かの更新手続きをしていた。

「途中で変更も有り得るけど、面倒だから1ヶ月契約にしてお金を入れておくよ・・・」と、手続きを済ませると

「あの・・・9月の始めに3階の部屋が空く予定になってますけど・・・もしかしたら延長の可能性もあるという事ですが、空いた場合はどうされますか?」

「ああ、勿論移りたいねー」と申し入れた。後は3階の部屋の主が予定通り、延長なしに数日後にチェックアウトすると信じながら・・・

 目の前にある商店街の喧騒と、そぞろ歩く人々の気配を意識しながらもどうにか過ごして来た、およそ1ヶ月半。

(明日は、いよいよ3階に移れる? 前のヤツが延長なしに、予定通りチェックアウトしてくれれば良いが・・・)

と心待ちにしていると、フロントの女性から連絡があり

4階の部屋が空きましたので、よろしければ移っていただけますが・・・どうなさいますか?」という思わぬ提案が。

「え? 4階? 空くのは3階じゃなかったんだっけ?」

「この前にお話した3階とは別に、急遽4階の部屋が空きましたので・・・」

4階というのは、この建物の最上階である。無論、3階よりはより地上から離れた4階の方が環境的には申し分ないから二つ返事でOKすると、早速夜のうちに荷物を運び出して4階の部屋へ移った。今までの2階と同じセミダブルの部屋で、やはり商店街側に面した角部屋である。かつてのレオパレスの時もそうだったが、どうも角部屋に縁があるらしい。勿論、両側を挟まれた部屋よりは、角部屋の方が望ましい事は言うまでもない。

そして翌朝・・・さっそく窓を全開にすると、ひんやりとした実に清清しい風が入ってくるではないか。いくつか高層マンションはあるものの、下町特有の古い平屋建ての民家が中心だから、視界を遮るものも少なく下界を見下ろすようないい気分である。これで窓側のテーブルに置いてあるPCや財布を盗られる用心をして、トイレに行く度に窓を閉める必要がなくなった外を歩く人々の視線を意識する必要もなくなったPCをベッドに持ち込む面倒もなくなった。

環境の悪さに限界を感じ、暇を見つけてはネットでマンスリー物件を検索していたが、このウィークリーの他の拠点のあった池袋、御茶ノ水、秋葉原などはどれも満室で空きあったのは、便のあまり良くない葛飾のみであった。そんなタイミングで、ようやくの部屋移動。この先、どれだけここにいるかはまだ流動的ではあるが、ともかくホッと一息というところだ。

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